noy 2nd e.p ディスクレビュー：第10弾 Message from xtakashix (Otus / Inside / It’s For Life Booking / Loyal to the Grave / Hollow Suns)

2023年7月31日 19:15

　生活とともに絞り出した時間の中で、創り上げた標石から鳴る音は真実味を増す

　noyの2nd e.p. “(We had squeezed out) The time that build milepost” はその生々しい音像、荒々しい演奏の中に光る儚さと美しさがまるで初台Wallのスピーカーから鳴らされているような迫力と共に脳と心にダイレクトに響く快作である。

　Endzweck, nervous light of sunday, Enslaveなどのおそらく彼らが音楽的に多大な影響を受け、ステージを共にし、人柄や精神性についてもその背中を見て成長してきたであろう東京のバンド達からの影響を色濃く感じさせる音色は、今回のepにおいて更に一歩飛躍した位置に存在するように見受けられた。

　今回のepに収録されている楽曲は彼らの15年に及ぶバンドの歴史の中で、それぞれの関係性や役割を変化させながらアップダウンを繰り返し、少しずつその形を形成してきたとも言えるnoyの音楽が、現時点で最高の状態として、所謂「完成系」とも異なる、これからの変貌の余地を残した美しくも儚い不安定さを兼ね備えた楽曲達によって眼前でまざまざと見せつけられるようなリアルさを持って表現されている。

　Vo ダイスケの歌詞からヒリヒリするほど伝わってくる日常の生活における焦燥感、怒りの感情は周囲に向けられたものでもあり、己に向けられたものでもあるように受け取ることができ、その葛藤が込められた声とそれに呼応するようなバンドの演奏によって真実味を増している。

　また、M-3 “遠い座標” ではLoma Prieta, , Touché Amoré感のある deathwish然としたドラマティックな展開を見せ、バンドの音楽性の拡張を垣間見ることができる。そこからさらにM-5 “The rights should be guaranteed”のように、数々の苦難や葛藤を乗り越えた先に、妥協や諦念も全て飲み込み受け入れた者だけが獲得する未来を音像と言葉で創り上げた至高のショートチューンで締められており、各楽曲の個性が光りながらもnoyというバンド、それぞれのメンバーが持つ個性がギリギリのバランスの中ではち切れんばかりに内包されている圧倒的なepだと言えるだろう。

　冒頭に「初台Wallのスピーカーから鳴らされているような」と書いたが、8/5(土)に初台Wallで行われるnoyの自主企画 ”Future View vol. 6.5”では、彼らが切磋琢磨してきたバンド達とともに、結成15年の厚みとリアルさを情熱で昇華した楽曲達がそのスピーカーを通ってあなたの脳と心にダイレクトに直撃するだろう。
　その瞬間はもうきっと二度と来ない。ぜひ体感してほしい。

xtakashix (Otus / Inside / It’s For Life Booking / Loyal to the Grave / Hollow Suns)