都民の皆さんの声をうかがいました・後編

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5.予備調査結果その2:新型コロナに対する意識

この予備調査では、都民のみなさんが新型コロナに対してどのような考えを持っているかについてもたずねています。

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【これらの結果からわかったこと】
1.自分は新型コロナウイルスには感染しない、感染しても自分は重症化しないと思っているひとが2割強の割合でいることが見て取れます。その割合を詳しく見ると、20代、30代で多くなっていました。
2.コロナウイルスに感染したかなと思っても受診しない、周囲に感染者が出ても検査は受けたくない、保健所の調査(積極的疫学調査)には協力したくない、季節性インフルエンザと新型コロナとの同時流行を「騒ぎすぎだ」とする回答も1割程度見られます。
3.この予備調査の結果からは、毎日の新規陽性者数が気になっているとする回答が半数以上、また、周りのひと達に「気の緩み」が出てきていると心配するひとが7割弱いることが分かります。この傾向は、年代が高まるにつれて大きくなっており、若者と高齢者の意識のギャップがうかがえます。

【今後の課題】
リスクの受け止めの差がどのような理由で生じているのかは、この予備調査ではわかりませんでした。この点も含めて、今後の調査等でさらに明らかにしていく必要があります。
最近、「コロナ疲れ」「コロナ慣れ」という表現が用いられるようになりました。
新型コロナ感染流行がはじまってから9ヶ月以上たち、この間、ずっと同じ緊張感でコロナに向かい合うのはしんどいことです。一方、感染対策の個人差に対して不安を持つ人もいるようです。
強い不安はそれ自体が生活の質を下げることにつながります。こうした不安は、具体的な感染対策をひとつひとつ行い、その効果を確認することで少しずつ減らしていくことができると考えます。不安の解消が、決して、いわゆる「自粛警察」や、偏見・差別といった感情・行為によって行われることのないよう、気をつけていかなければなりません。
若い世代は、そもそも活発です。経済活動が本格的に再開され、また大学も再開されるなか、人と会ったり様々なイベントに参加したりすることも増えてきています。そういった行動をただちにやめることができないとき、その行動にともなうリスクをできるかぎり少なくするという考え方(ハームリダクション)が大切になってきます。

<コラム:リスクを小さくとらえる心の仕組み>
ひとには、「これはたいしたことないんだ」、「自分には○○は起こらないだろう」等と考えてリスクを小さくとらえる心理メカニズムが働くことがあります(正常性バイアス、楽観主義バイアス)。このような認知バイアスは自然災害のリスクに対してもよく指摘されるのですが、新型コロナウイルスについても同様にあてはまります。しかし、どのような災害や病気についてもゼロリスクはあり得ず、みんなが、感染や重症化の可能性をじぶんごととして考えていくことが大切です。

6.予備調査結果その3:モニタリング分析の知名度

東京都では、2020年7月以来、東京都内における毎日の新型コロナウイルス感染症の感染状況、医療提供体制を分析し、その結果を毎週木曜日に発表してきました。「この活動について、あなたはご存じでしたか」との問に対する回答が、下のグラフです。

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【これらの結果からわかったこと】
1.ホームページやニュースなどから活動を知っており、活動を継続してほしいと思っている人は、5割程度となりました。
2.活動を知らなかった人は約4割でした。

【今後の課題】
モニタリング分析を都知事に報告する会議の様子は、都のホームページから動画で発信されています。また、関連資料も公開されています。今後さらに多くのひとに見てもらえるよう、工夫を重ねながら情報発信が継続されることが大切です。
<最新のモニタリング分析の結果は、こちらよりご確認ください>

7.予備調査結果その4:冬に向けてほしい情報

今回のアンケート調査では、次のようなこともたずねました。「この冬、新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの同時流行が心配されており、医療の受け方も変わります。体調変化に備えて、あなたがほしい情報をいくつでも選んで下さい。」

この問についての答えは、以下のグラフのようになりました。

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【これらの結果からわかること】
1.新型コロナ検査の受け方、医療機関にかかる方法、医療費に関する情報は関心が高くなっています。体調を相談できる窓口、療養する場所がどこになるのかについての情報も、1/3程度のひとが「ほしい」と回答しています。
2.いっぽう、年末年始の帰省や忘年会・新年会での注意事項の情報には関心が低くなっています。ほしい情報を選択している回答者の数はそれほど多くないようです。
3.ただし、そもそも、最も求められている「新型コロナ検査の受け方」の情報であっても、求めている方は、全回答者の半数に満たない数字でした。そこで、「とくにほしい情報はない」と「答えたくない」をのぞく10項目について、そのうちいくつに「ほしい」と回答したかをカウントしたところ、最小値はゼロ、最大値は9でした。そのうち、「ほしい」として選択した項目の数が1つであるひとの割合が多く2割強で、2つ、3つがそれぞれ2割弱でこれに続いています。

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【今後の課題】
今回の予備調査では、ほしいと回答する情報項目がそれほど多くないという結果になりました。これは、回答者の方が求める情報を選択肢に設けられなかったのかもしれません。この点は、今後の調査の検討課題です。
新型コロナの医療提供体制は、対策の進展にともなって変化しています。また、季節や流行状況によって注意する点も変化してきます。その時点で正確な情報を受け取って頂けるような情報発信が重要です。

8.予備調査結果その5:新型コロナに関して抱えている問題や不安

アンケート調査では、「新型コロナに関連して、あなたが直面している問題や不安があれば教えてください」として、都民のみなさんに自由に回答してもらいました。
記載があったのは回答者の3割程度でした。年齢が上昇するほど、書き込む人が増える傾向にあります。
その回答を概観すると、新型コロナに関して、都民のみなさんの抱えている問題や不安は、さまざまであることが見て取れます。
自由記述回答は、「新型コロナウイルスと感染症への不安」、「家族・知人への心配」、「くらしむき、仕事、学業への心配」、「社会的・精神的ストレス」、「他者への評価(不満)」、「目下の対策への懸念」、「情報の欠如等への不安・不満」、「将来の見通しのなさ」といったカテゴリーに分類されました。
そのなかでも、「コロナ感染の原因が未だよくわからない」、「自分が本当に感染していないのか?無症状感染者なのか?周囲の人は本当に感染していないのか?周りの人が無症状感染者ではないのか?」、「無症状の人々からの感染がどうしたら防げるのかがとても不安で仕方がありません」といったような、ウイルスおよび感染症そのものに対する不安(未知性、不可視性)に関する意見は多く見られました。それから、「収束時期が分からず日々不安です」、「いつおさまるのか、元の生活に戻れるのか、先が見えない不安」等、漠然とした先行き不安について述べる意見が多いことも特徴的です。
 
自由記述回答については、さらに詳細に分析を行い、機会をとらえて発信する予定です。今回書いていただいた意見も参考にしながら、今後のコミュニケーションにいかしていきたいと思っています。

9.最後に

ここまで、コロナ対策に際しての都民の皆さんへの予備的調査の結果を述べてきました。何度も繰り返してきたように、これはあくまで予備的なものですので、直接読み取れることがら以上の解釈を深めることには向いていないことから、あえて冗長な記述に留めましたことをご容赦ください。
東京iCDCでは、こうしたアンケート調査に限らず、医療従事者や市民へのインタビュー調査、メディアとの意見交換などを繰り返し、より良いリスクコミュニケーションと、それを踏まえた施策の実現に今後も取り組んでいきます。

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