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第13話「月見蕎麦を食べるうさぎ」

タイタニックに登場した氷山の全貌をまだ僕らは知らない

東京の大学に通う学生ならではのブルースに、正面から向き合って行くこの連載。第13話は、あなたのお話。

俺はあなたを知らない。同様、あなたも俺を知らない。ほんとは一人称が俺ではないことも。でもあなたも知らない。ほんとは好きな人がいるってことも。
だからこそ知る。知りたくなる。きっかけは本当に些細なことである。同じ授業を受けていた、ただそれだけである。

その授業に興味もない僕らは退屈し眠る。たったそれだけで交わらなかったであろう点と点は線となり繋がる。

誰だって相手知りたくなる生き物だ。そして理解し、認め合う事をする。でもいつの間にか自分の価値観によってこの人はこうなのだと決めつける。23年生きたうちの儚くわずかな1秒を顕微鏡で拡大してあたかもわかったかのように話し始める。

そしていつしか人は慣れていく。あなたにも私にも。とても時間がかかることだ、でもあなただからその時間を嫌じゃない。受け入れられる部分もあれば、どこかで妥協している部分も少なからずあるのだろう。

それでも人はきっとどこかで線を結び、結ばれる。それは儚くも散りさる日が来ることもあるだろう。
だけど僕は信じたい。その輪はどこかで切れたとしても紡ぐ。

うさぎの目には僕らの赤いい糸が見えている。だが自分の赤い糸だけは見えない。死ぬまで一生。でもそれでいいのだ。自分には見えずとも誰かと結ばれるその時まで、あなたに私の糸が見えるまで、僕はその意図を絶やさぬよう。また1本の細い線を紡ぐ。

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