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視覚障害をお持ちの方にも情報を届けるためのデジタル技術の活用促進~江戸川区×東京都~

 皆さん、はじめまして。東京都デジタルサービス局の猪ノ口です。今回は東京都と区市町村が連携して進めている”デジタルデバイドの是正”に向けた自治体モデル事業について、令和3年度のモデル自治体の一つである江戸川区の皆さんとコラボレーションして取り組んだ、視覚障害者向け行政情報の円滑な入手及びデジタルツール利用促進の取組についてご紹介します!
 お読みいただいた方が、「自分も視覚障害をお持ちの方にもっと情報を届けたい!」、「作成されたマニュアル・テキストを参考にしたい!」と思っていただけたら嬉しいと思い投稿させていただきます。最後までお付き合いいただけますと嬉しいです。よろしくお願いします。

江戸川区での取組概要

実施の背景

 江戸川区では、障害のある方を対象としたサービスや制度、相談窓口などの情報をまとめた「障害者福祉のしおり」を作成し、区内在住の障害者の方へ配布しています。しかし、視覚障害をお持ちの方にとっては、点字の無い紙のしおりでは必要な情報を取得することができません。そこで、デジタル技術の力を活用することで、視覚障害をお持ちの方に対しても必要な情報を届けていくためにこの取組を行うことにしました。

視覚障害者のデジタル技術を活用するメリット

 スマートフォンには、視覚障害をお持ちの方に向けた機能やアプリがたくさんあります。音声読み上げ機能はもちろん、画面表示のない状態でも音声と画面のタッチセンサーでの入力による操作やSiriなどのアシスタント機能を活用すれば、会話をする感覚で必要な情報を得られたり、スマートフォンの機能を活用したりすることができます。また、スマートフォンのカメラをかざすと写した物や文字を音声で教えてくれるアプリや、QRコードの読み取りを音声で支援するアプリなど、視覚障害をお持ちの方でもデジタル技術の力を活用して生活をサポートできる環境は整いつつあります。現に、江戸川区にお住いの視覚障害をお持ちの方にもこうした機能を活用して、スマートフォンを使いこなしている方もいらっしゃいます。
 視覚障害をお持ちの方に、必要な行政情報を届ける手段としてデジタル技術の活用はとても有効な手段です。手間をかけずに多くの情報を得ることができますし、何より自ら必要な情報を取得しにいけるため、視覚障害をお持ちの方の自立にもつながります。

今回の取組~「スマートフォン相談会」と「ユーザーテスト」~

スマートフォン相談会実施の様子

デジタル技術の力を活用することで、視覚障害をお持ちの方に江戸川区の行政情報を的確に届けていくため、①視覚障害をお持ちの方のスマートフォンスキルの向上、②視覚障害をお持ちの方の声を生かした江戸川区HPの改善に向けた取組を行いました。具体的には、スマートフォン相談会とユーザーテストを実施しました。

①スマートフォン相談会

 スマートフォン相談会は、3月に計4回行いました。利用者のスキルに合わせて、初心者向けと中級者向けにクラスを分け、それぞれ2回ずつ実施しました。スマートフォンにほとんど触ったことのない方もいらっしゃいましたので、タップやスワイプといったスマートフォンの基本的な操作をはじめ、QRコード、便利なアプリの体験も加えつつ、スマートフォンの利用に関する相談を通じ、スマートフォンスキルの向上を図りました。中級者の方には、自身の単なるスマートフォンのスキル向上だけではなく、周囲への利用普及を促すエバンジェリストを担ってほしいという理想を念頭において相談会を実施しました。

②ユーザーテスト

 ユーザーテストは、江戸川区HPの3回目のワクチン接種の情報や障害者福祉のしおりの電子版のページに実際にアクセスしていただき、ユーザーの視点から行政のHPへの改善に向けた生の声をいただきました。いただいた声を分析し、今後の区の情報発信のあり方検討に活かしていきます。

取組からの気付き

 今回の相談会やユーザーテストを通じて、当事者からの生の声をお聞きすることによって、視覚障害をお持ちの方がスマートフォンを利用する際に直面する課題や、江戸川区HPの改善すべき点についてわかってきました。

  • 参加者の多くが高齢かつ視覚障害がある初心者向けのクラスで、スマートフォンの操作を習得することは非常にハードルが高いと痛感しました。中級者の方にとっては、スマートフォンの使い方を改めて学ぶことができたものの、初心者へ教えることができるレベルに到達することも大変で、2回だけの相談会では難しいことも分かりました。

  • 視覚障害者は物を確認するときに両手で触る習慣があるため、スマートフォンを両手で触ってしまい、誤動作が多かったことがあり、まずは繰り返し触れてみる時間が欠かせないと感じました。また、QRコードの読み取りや、アプリで物の識別を行う際に読み取れるようにカメラを向けなければなりませんが、向ける方向や距離感をつかむにはトレーニングが必要で、継続して練習できるように、動機付けを作ることが必要だと感じました。

  • QRコードを読み取るにあたり、画面の操作がなくても利用が可能な使いやすいアプリなどを紹介しましたが、このような使いやすいアプリを紹介することが非常に有用であることを実感しました。

  • デジタル機器に触れる機会がない方を対象者とする場合、大人数への講義形式よりも個別相談会のような機会を提供することが有効であることがわかりました。

利用者の声を聞く重要性

 デジタル技術の進展により、視覚障害をお持ちの方に対してこれまでできなかった方法での情報発信が可能になっています。行政としては、デジタル技術を活用できる方を増やしていくことや、当事者の方の生の声を聞き、改善に生かしていくことがデジタルデバイドの解消につながりますし、障害をお持ちの方に対する行政サービスの向上につながると思います。
 今回の取組で得られた知見をもとに、視覚障害をお持ちの方に向けたデジタル技術を活かした情報発信の方法を江戸川区にて改善するとともに、同様の課題を抱えている都内他自治体での活用、更なる事例の創出など今後の施策に活かしていきたいと思います!

(敬称略)
江戸川区福祉部障害者福祉課
河本 豊美
高橋 真人
濱田 真由美

東京都デジタルサービス局戦略部
松野 友雄
寿 一則 
猪ノ口 渉


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