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地域コミュニティはデジタルで活性化できるか?~豊島区と東京都のチャレンジ~

 今回は、東京都と区市町村が連携して進めている”デジタルデバイドの是正”に向けた自治体モデル事業について、モデル自治体の一つである豊島区の皆さんとコラボレーションして取り組んでいる”地域コミュニティ活性化支援”について、途中経過をご紹介いたします。

地域コミュニティの現実

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区政連絡会の様子

 豊島区には129の町会があります。さらに各町会は区域ごとに12の地区に分けられています。各地区では、月1回、区政に対する区民の理解を深めてもらうとともに、区民の意見を区政に反映させるため、区政連絡会を開催しています。区政連絡会では、区政に対する区民の意見や要望などについて話し合うほか、区からの情報提供やチラシなどの配布物の受領を行っており、区と地域をつなぐ重要な場となっています。

 ただ、区政連絡会委員は高齢化が進んでいます。打ち合わせはこれまで対面で行ってきましたが、コロナ禍ではそれもままならず、活動やコミュニティの希薄化が進んでしまいました。コロナの状況が落ち着いている今は対面の打ち合わせを再開しつつありますが、またいつ対面が難しくなるかわかりません。

 さらに、区政連絡会委員には「町の若い人に、情報を届けたい」という思いもありました。行政からの情報提供は災害時の避難に関すること、生活に関すること、地域の皆さんにとって重要な情報です。しかし町の掲示板への張り出しや紙の回覧版では、特に若い人には見てもらえていないのではないか、そんな危機感がありました。

いろいろな事例

 まず私たちは他の町会の事例を調べました。すると、区との会議をZoomで実現している事例がありました。

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総務省 自治体DX推進手順書参考事例集【第1.0版】 P45
https://www.soumu.go.jp/main_content/000759086.pdf

 また、地域の皆さんとのコミュニケーションにSNSを活用し効率化している事例が多数ありました。

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豊島区と東京都のチャレンジ

 事例を参考に、東京都の「令和3年度高齢者・障害者等情報格差是正モデル事業」を活用し豊島区と東京都がタッグを組んで、デジタルを活用した地域コミュニティ活性化に取り組むこととしました。

 上記にあたり、キックオフとして区政連絡会委員に率直なご意見をヒアリングしたところ、以下のようなご意見をもらいました。

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キックオフの様子

・(デジタル化は)急いでやるべきことなのか。今使えてない人を使えるようにするのは非常に困難。自然に世代交代するのでは。

・町会でもデジタル活用は話題にあがる。HPなどの情報が集約できると便利。しかし高齢者には反発があった。

デジタル化すると高齢者はとり残されてしまう。申し込み方法がインターネットやメールだといわれると困ってしまう。

FAXが現役

・一度みんなで集まってやってみて、こんなに簡単なんだとわかれば進むのでは。

・使える人は使えばよい。アナログとデジタルを並行で少しずつ切り替えたい。来月から全員デジタル、は無理。

 デジタル化による利便性や効果は一定理解いただいており、積極的な委員もいるものの、やはり急激に変えることに抵抗感がある委員が多いことがわかりました。よって、なるべくハードルは低くし抵抗感なくデジタルに触れてもらうところから始めることにしました。

①区政連絡会をオンラインでやってみよう

 まずは区政連絡会のオンライン化にチャレンジしました。11月の区政連絡会では最初の一歩として、豊島区職員は職場の自席からZoomに入り、区政連絡会委員は集会室にあつまって、職場と集会室の間をオンラインでつなぐこととしました。

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 結果、プロジェクターとスピーカーで音がハウリングしてしまったり、通信状況が悪く画像が乱れるなどの改善点がありましたが、豊島区職員からの共有事項をオンライン経由で聞くことができました。オンライン会議については課題を改善しつつ、12 月、1月にさらにオンライン参加する人を増やしてチャレンジを続ける予定です。

②SNSを活用してみよう

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 もう1つは地域の皆さんとのコミュニケーション活性化のためのSNS活用です。初回の11月はTwitter講座を開催し、アカウントを開設して豊島区のツイートをリツイートするなどの操作を一緒に実施しました。
 区政連絡会委員からは、「(アカウント登録時に)電話番号を登録してしまうのは怖い。公開されてしまうことはないのか。」「操作中、SMSのワンタイムパスワードを確認後、もとの画面に戻れなくなってしまった。」等、一人でやっているとその場で行き詰ってしまうような状況が多々ありましたが、豊島区や東京都の職員がサポートし無事一通りアカウント登録まで完了できました。
 次回はLINEの活用術講座を実施予定です。

今後の取組

 まずは出来るところからやってみよう、楽しく学んでみようというスタンスで始まった取組ですが、来年度以降、継続していくためには、なにより区政連絡会委員の皆さんがデジタルツールの効果を実感することが重要です。今後区政連絡会委員へ継続してヒアリングをし、また、各町会に属している住民の皆様にもアンケートをとり現状の課題やデジタルツールで改善できそうなことなどをお伺いし、チャレンジに活かしていきたいと考えています。
 
 豊島区でチャレンジした経緯や実績、ここで作ったマニュアルが、そのまま他の地域で活用できるものになり、皆様の地域コミュニティ活性化に少しでも役立つことが私たちの目指すゴールです。

豊島区 区民部 区民活動推進課
星野 浩昭
五十嵐 理奈
石川 克範
豊島区町会連合会
大戸 国昭
東京都デジタルサービス局戦略部
小松崎 秀行
宮部 麻里子

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