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一生の友だちは東京に

「今週の土曜日ランチ行かない?」

ピコンとケータイの通知が鳴った。画面に映る、気心知れたA子からのデートのお誘い。どうやら表参道にある、20代女子に人気の“ふわふわあま~いフレンチトースト”を、食べてみたいらしい。
彼女が目を輝かせて、口いっぱいにフレンチトーストを頬張る姿が想像できる。

「いいよ」

ふたつ返事でA子からの誘いを快諾、返事こそそっけないけれども、ココロのなかはウッキウキ!

東京に来てはやいものでもう10年。振り返るとA子とは職場で出会い、今でも交流があるのだから、人との出会いやつながりの深さをしみじみと感じる。

ベストフレンド大作戦

いまでこそ、フレンチトーストをシェアする友人もいるけれど、上京してきた頃は友達ゼロ。
家の近くある、有名なホルモン屋が賑わっているのを横目に見ながら、家と職場を慌ただしく往復する日々を送っていた。
もともと積極的に交流する方ではなかったけれども、わずらわしいと思っていた母親や、ケンカが絶えない妹とも、いざ離れてしまうと、ひとり静まり返った部屋のなかで寂しさを感じるように。

あまり信じたくなかった。

でも、これがホームシックかもしれない初期症状がではじめたので、このままではいけない!と思い、その時好きだった歌のタイトルにちなみ、”ベストフレンド”をつくろう作戦を計画した。

思い立ったが吉日。

さっそく、職場のB子に作戦決行!みなとみらいの遊園地に誘ってみた。キラキラと輝く観覧車を背景に2人で写真を撮り「#ベストフレンド」と書いてSNSに密かに投稿した。

しばらくして、画面の向こうの送られてくる、いいねの数に口もとをゆるませて、高揚感とシテヤッタという不思議な気持ちから目が離せなかった。

B子とはその後も、お泊り会や消防士との合コン、ハロウィーンパーティや群馬の旅館でおそろいの浴衣を着て、レモンサワー片手に乾杯もした。

そう、十分にベストフレンドの"ような関係"は築けていた。

でも時折わたしのココロの中で、じゃりっとした違和感を感じることも増えていった。自分でもわからない、この感情はなんだろう?

答えも出ないまま、しばらくたった頃、転職をキッカケにB子との予定は次第に無くなっていた。

いま振り返ると、B子と過ごしていた時のわたしは"だれか”を演じていたのだと、合点がいった。
一緒にいられる安心感と引き換えに、自分じゃない“だれか”になるのは、かなりのカロリーを消費する。

10年も経つと精神的にもオトナになり、“ベストフレンド作戦”がなくても、自然とA子のような友人ができるようになった。(元々、作戦はうまくいかなかったけど)

海の向こうからきた女の子

同じシェアハウスに暮らすチャンも自然と仲良くなった友人の1人。いつもベトナム料理をもってきてくれる。コンコンとわたしの部屋をノックして「コレ、タベテミテネ」と渡すと部屋に帰っていく。
彼女の味付けセンスはピカイチで、口にするとお腹もココロもジワっと満たされる。

たまにケンカもするけど、仲がいい。誕生日のときは24時ピッタリにお互いの部屋に行き、ロウソクの刺さったケーキとバースデイソングを歌いながらお祝いするカンケイ。

そんなチャンが、来月引っ越すことになった。

ひとり暮らしをしてみたいという。
1年間同じ屋根の下で生活してきたから、寂しさもあるけどチャンの門出をしっかりお祝いしようと思う。

4,682日

上京してから10年、いくつもの出会いと別れを繰り返すなかで思い通りにいかないことも多く、何度も地元に帰りたいと悩んだこともあった。
でも、東京に来て良かったと思っている。

何もかもが新しい刺激と出会いに溢れる、巨大な東京でたまに溺れそうになりながらも、わたしはこの街と生きていくんだと感じた。

written by みんちゃん


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