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理想の東京に挫けても

上京したばかりの時は前向きな感情が多かった。
住む場所を大きく変えるのはやはり人生の中で大きな出来事なので、みんな「すごい!」と言ってくれるし、自分自身でもそう思う。
だからこそそれが出来た自分が誇らしかったし、新しいものに触れる時はワクワクした。
新しい家、住む街、電車、仕事。
先が見えないからこそ、この先何にでもなれる気がしたし5年後、10年後の自分は輝いているという漠然としたイメージがあった。
だから上京したばかりの頃の私は、「誇らしさ」「期待」「自信」など、前向きな感情に包まれて過ごしていた。

ザ・東京というようなビルだらけの景色の中で働く

感情の変化

だが上京を2度経験し、住んでいる期間も長くなってくると、気づいた時には前向きな感情よりも後ろ向きな感情の方が多くなっていた。
上京を後悔しているわけではないし、もう地元に戻りたい気持ちも強くない。

けれど、どうしてもネガティブな感情がぐるぐるする時があった。私には出来ないと夢見ていた上京は想像よりも簡単に出来てしまって、新しい環境にも慣れた。
だからこそ、上京したての頃よりも「自分すごい」という感覚が薄れる。
新しい仕事も慣れるのに必死になっていると、周りが見えなくなって仕事の事しか考えられなくなり、辛い気持ちを抱えることが増えた。そんなわけで、「自信」や「期待」を取り戻すために、久々に地元へ帰省してみる事にした。仲のいい友達はみんな地元にいるし、久々に地元を味わう事でまた気持ちをリセットできると思ったのだ。

東京はちょっとした道でもキラキラしていて、人で溢れている

久々の帰省

帰省は2年半ぶりになる。昔帰省した際は、地元がとても懐かしく、寂しい気持ちと嬉しい気持ちを同時に感じた。
だが今回の帰省では昔ほどの懐かしさを感じなく、家に帰ってきたというよりも一つの拠点に立ち寄った気分の方が近かった。
ああ、私の中でもう地元は「離れてしまった場所」ではなくて、私が存在した一つの街でしかないのだと少し悲しいがそう感じた。

昼間でも人は1人もいない道。雪の眩しさが懐かしい
哀愁漂う商店街。昔から何度も訪れている。

私はずっと「地元を離れて東京で頑張っている」そんな状況に自分がいると考えていたが、知らぬ間にもう東京の方が居場所に近い感覚に変わっていたのだ。
それに気づけた事が今回の帰省でとても大きな収穫だった。

東京のイメージを変える

東京で暮らしながらも、自分の居場所じゃないような気がして孤独を感じる時もあった。どこへ行っても明かりがついていて、人も多く、そこに埋もれる自分が、何者か分からなくなってしまっていた。きっとどこかで、自分の居場所はまだ地元にあると感じていたのかもしれない。だが帰省する事で、昔とは変わって地元に未練のない自分に気づく事ができた。

どうしても私の中の上京は、夢を叶える手段というイメージが大きかった。上京したての頃は色んな人に「なんで東京に来たの?」と聞かれることも多かった。私には上京する理由があったが、その理由を意識しすぎると、1人で戦っているような気持ちになって挫けてしまう事もあった。
だが今では、ただなんとなく、住む場所を変えてみただけ。そんな気軽な考えでもいいのではないかと思うようになった。

長い人生の中で、自分に合った場所や新しい経験を探すために居住を変えるのなんて、思ったほど大した事ではないのかもしれない。勿論大きなイベントである事に違いはないのだが、高い壁だと思い込んでしまう必要もないのではないか。
今回の帰省でそんなことを思い、これからはあまり気張らずに東京で過ごしてみようかなと思えるようになった。

Written by HINA

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