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旅の言葉 7. 「話すこと」と「書くこと」

中学生のころ、
エドガー•アラン•ポーの小説を読んで、
文章がうまいなと思った
ポーではなくて、中野好夫の翻訳がうまいなと思った
原文を呼んだわけじゃないのに、
子ども心にそう感じた
じっさい日本一翻訳がうまいといわれ
ある女性の翻訳者は、原文とかれの訳を見ながら修業したそうだ

でも娘さんによると、
読み書きはできても英会話が不得意だったそうです
またランボーやアランのフランス語の翻訳で
有名な小林秀雄も
フランス語会話では心もとなかったといわれている

作家が文章をうまく書けるから、
うまくしゃべれるわけもなく
アナウンサーがうまくしゃべれるから、
うまく文章を書けるわけでもない
味わい深くしゃべれたり、書けていたらいいでしょう


そんなふうに聞き話し、
読み書きできれば最高だろう
でもそう、うまくいかない

テレビでわかりやすい人気解説者が
いくらわかりやすい文章を書いたからって
読者にうまく受けいれられるとは限らない
人の人との空間の間合いとか、
印刷された文章の行間とはやはりどこか
味わいがちがっているような

同じテレビ局でも
アナウンサーと記者とはちがうだろう
文章をうまく読んで話すことと、
事件現場をじぶんの言葉でまとめて
話すこととはちがうだろう
あるアナウンサーの人が大学生のとき、
ひたすらアクセント辞典を見て
勉強していましたといっていたように
重点の置きかたがちがうようだ

じっさい学生のころ、
英語が堪能であったにもかかわらず、
知識がまったくなかった女性に驚いたことがあった
ナポレオンぐらいは知っていたけど、
中学生でも知っているようなことを知らない
ほんとうに大学受験はもうすっかり忘れたのかな
あまりの無知にビックリしちゃった

でも彼女のために弁解させてもらうけど、
無理ない話しだった
他の女性もそうだったけど、
英会話クラブでは鳥のオウムみたいに
毎日毎日、英語の同じ発音や同じ英文を
繰りかえし繰りかえし、やっていたそうだ
他の人が本を一冊読んでいるあいだ
繰りかえし繰りかえし、同じことをやっていたそうだ

あるときテレビで、
タレントの出川哲朗が怒っていた
英語ができる帰国子女のモデルタレントが、
あまりに何も知らないのに怒って、

ほんと何も知らない、芸能界イチ、アホやな
ねっ、ほんとにアホやろ



プロスポーツ選手になろうとする人が
受験生が
毎日毎日、同じことをやっていたら、
他は手薄になりますよ
ひとつのことに集中して競っているあいだはしようがないもの
ある程度一芸に達したら、手薄なものをぼちぼちと


だからどうしたいのか
語学を学ぶとき、
会話したいのか、原書を読みたいのか
じぶんがどうありたいのか、狙いさだめて
学者や作家になりたいなら、
商社マンやマスコミに行きたいなら、
おのずとコースは決まってくる
哲学書や文学の本を縦横無尽に読めるようなら
困らない程度に会話もしゃべれればいいし
外国語会話が不便なくしゃべれたら
雑誌、新聞ぐらいは読めてたほうがいいだろう

また同じように
十種競技選手はからだ運動の万能選手で
高級官僚はテストが解ける頭の万能選手

でも一種目で、
日本一とか世界一の記録保持者はほとんどいない
文化勲章やノーベル賞受賞者もたぶんいない
彼らは競技試験が、テスト試験が
人並みすぐれているけど
その内容が人並み以上優れているわけでもない

やっていることは同じでも
やっていれば
じぶんの得意分野と
めざす目標が、おのずとわかり見えてきます


たとえば
語学が得意だったニーチェは、
数学が、人並み以上に不得意だった
なぜか数学では自慢だったアインシュタインは、
歴史や文学はほとんど落ちこぼれ生徒だった
ただ読んでおぼえるだけじゃないといわれても、頭が石になるのだった

だからといって、ご存じのように
ふたりが頭が悪いわけではなかった


コンサート会場の照明はひかえめにして
美術館では、静かにするのは理にかなっている






















































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