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理学療法士が介護職と協働する上での心構え

僕は今、特別養護老人ホームで勤務しています。
生活がメインのこの施設では、
介護(排泄・食事・入浴)が主役になります。
特養は介護度が高い方が多いのでケアも難しいです。

そんな中、めちゃくちゃ大事なツイートを
ゆみっぺさんがしてくださいました。

みなさんはどう思いますか??


理学療法士としてちゃんとできているのか?
本当にリハビリ職がすることなのか?

いつも葛藤しながら仕事をしています。

そんな特養で理学療法士として、
私がどのようなことを意識しながら仕事をしているか
まとめてみようと思います。

【目次】
・特養で理学療法士が雇われる意味
・特養で行う他職種との関わり
→「他職種にはないスキルを明確にするということ」
→「信念の対立は起きるということを前提に」
→「レスポンスと対応策は速く!!」
・最後に

・特養で理学療法士が雇われる意味

病院の理学療法士のように単位ごとに
保険点数による収益はありません。

個別機能訓練加算というものがありますが、
1人につき12点/日です。
特養には29名入所されているので、
約360点/日の介護報酬が入ってきます。

しかし、これだけでは到底、
理学療法士の給料を賄うことはできません。

ではどうすれば良いのか? 
答えは簡単!
施設にとって「価値ある存在」になれば良いのです。
答えはわかっているのですが、
自分自身もまだできているとは到底思えません。

具体的に今、行っている業務は

【リハビリ業務】
①個別機能訓練の書類整理
②褥瘡の予防で入院率の軽減(施設コストにダイレクトに反映)
③ケアの方法を共有
④転倒対策等の課題解決
⑤個別機能訓練(いわゆる個別リハビリ)
⑥デイサービスとショートステイのリハビリ(たまに)

【+α業務】
①算定できるのに算定できていない加算の見直し
②介護業務
③各種委員会
④送迎業務(ショートステイ、通院)
⑤掃除
⑥現場とケアマネジャーさんとの連携

ざっとこんな感じでしょうか?

どれも大事なことです。
そして、他職種との関わりが非常に重要です。


宮本さんからこのようなメッセージを頂いたので、
他職種との関わりで大事にしていること。
実際に行っていることをまとめていきます。

・特養で行う他職種との関わり

実は就職をしてすぐの頃に僕はリハビリとしてではなく
介護職員として3ヶ月勤務させて頂きました。
本当に介護職員さんの業務の難しさ、大変さを
実感することができました。今でも良い経験になっています。

そういった経験から
僕が特に大事にしていることが、
連携ではなく協働です。

【連携】
互いに連絡をとり、協力して物事を行う
【協働】
同じ目的のために、対等の立場で協力して共に働くこと

「他職種にはないスキルを明確にするということ」

協働するにも連携するにしても、何が強みなのか?
をしっかり理解していないと何も頼まれませんし、
力になることもできません。

僕の場合であれば、
姿勢・体位変換・ポジショニング・食事・評価

ここを他職種には負けてはならない部分と自覚しているので
重点的に介入を行います。
入職当時は僕には何ができるのかわかりません。

だから、介入する前に、
「姿勢の評価しますね〜」
「体位変換しますね〜」
「ポジショニングに枕作ってきました」

などと自分の強みになる部分はさりげなく
口にして伝えるようにしていました。

今では、褥瘡、姿勢、ポジショニングの話になると
声がかかるようになりました。
しかし、それができるようになるまでにも半年はかかっています。


実際に他職種協働による褥瘡ケアの学会発表も先日行いました。

介入したことは2点。
体位変換表の作成とポジショニングの変更です。

体位変換のタイミングとパット交換の時間を合わせるなど
介護職員の無駄な訪室を減らしたり、
ポジショニング枕の数を減らすことで
介護職員さんの作業負担の軽減を図りました。
その過程で、何に困っているのかなど、
ヒヤリングを何回も実施しました。

また、提案をした後もそのままにせずに
「どうだったか」「何か不都合がなかったか」など
再評価も実施しました。
その中で出た課題を修正して最終的なものを作成しました。 

これを作る過程が非常に大事で、
一緒にやっているという感覚を持ってもらいやすく、
自分ごととして取り組んでもらえるようになります。 

一見、遠回りに見えますが、実は大事な過程です。

提案するのは簡単ですが、それを継続して頂くのは
本当に難しいことです。
相手に寄り添いながら、何が妨げる要因になっているのか
考えながら、負担が軽減するようにデザインをする必要があります。

何かを+αでして貰うならば、今の業務の何かを軽減させる
提案も同時にしないと受け入れて頂くことは難しいです。

そういった積み重ねが、頼られる人になってきます。

僕がいつも意識していることです。

「リハビリ→介護職」

このように一方通行にだけはならないように
気をつけています。
相互にコミュニケーションをとりながら、

「入居者さん・介護職・リハビリ」の最適解を見つけていきます。


「信念の対立は起きるということを前提に」

学会発表後にこんな質問をされました。

「介護職さんや看護師さんにもうちょっとポジショニングをしてもらいたいのですが、自分(セラピスト)のやり方とは違うところがあると思います。どうされているのか?」

確かに、人によって変わってきます。

ここで大事だと思うのが、ポジショニングで何をしたいのか?
だと思います。

仙骨からの体圧分散をさせたいのであれば、
ポジショニングの形はどうあれ、クリアできていれば
僕は良いのではないかと思っています。

そもそも、介護職はポジショニングが専門ではありません。
そして、ポジショニング以外にもたくさんの業務があります。 

僕たち、セラピストはどちらかというと
ポジショニングが主な仕事の一つです。

つまり、お互いに大事していることが違うのです。

思いのズレが生じるのは前提において介入を
していく必要があると思っています。

そこで、福祉用具をうまく使うことが大事です。 

僕だけが上手に100点を出しても仕方ありません。
福祉用具の力をかりて、
誰がやっても70点ぐらいの成績は残せるように
環境を設定していくことが非常に重要だと感じます。


「レスポンスと対応策は速く!!」

仕事をしていると・・・
「この人のポジショニングどうなんですか?」
「椅子の姿勢を見てくれませんか?」
「転倒したのですが対策どうしましょうか?」
などと相談がきます。

そんな時にいつ対応するかが肝になります。 
直ぐに行けるなら直ぐにいった方が良いです。

仮に行くことが出来なくても
「〇分後にいきます。」と正確な時間を伝えることを
いつも意識しています。

また、何かの対策だった場合
例えば、大腿骨骨折して入院。
その後、退院してくるという入居者がいると思います。

その対応策やどのようなことに気をつけないといけないのか。
などといった情報は早ければ早いほど
価値が高まると思います。
同じ情報ならば、速度で価値がグッと高まります!

その積み重ねで、あの人に相談したら、
何かあったらアクションを起こしてくれるという印象を
与えることが出来ます。
そうすると、些細な相談事もしていただけるように
なってくると思います。

・最後に

特養ではあまり個別でリハビリをする機会はありません。
生活の場であるので、リハビリよりも優先させるべきことが
たくさんあります。
冒頭には書いていますが、
「食事・排泄・入浴」ここが本当に生活の中では大切です。

食事介助も毎日します。
排泄介助も毎日します。
入浴はたまにします。

自分も食事介助をしながら、
座位保持は○分が限界だな。
テーブルと椅子の高さが合っていないな。
スプーンは違う方が良いのでは? 

普通の椅子に座れる力があるのに車椅子の人。
フットレストに足が乗ったままの人。

細かいですが、気になることは多々あります。

しかし、
「どのタイミングで、どの言葉で、どの人に」 
ここを意識して伝えています。

先日、
「食事を食べる時にベッドで食べた方が良く食べることができるんです。」
という意見を頂きました。 

確かに、座位保持時間も少なくなってきており、
以前より食事量も落ちてきています。

ですが、いきなりベッド?? 
疑問に思いました。

食べることだけ考えれば、正解かもしれない。

しかし、ベッドで食事をしてしまうと
きっと椅子に座る機会がなくなる。
職員が多い時はその人に部屋にこもって
介助をすることが出来ますが、
1人しか職員がいないときは、難しい時もあります。

僕が提案したのは、
いきなり全部の食事をベッドでするには早すぎる。
もしするとしても、
職員の人員が豊富で、一番カロリー数が多い昼食だけに
するのはどうでしょうか?とお伝えさせて頂きました。

ここには、職員のことや入居者に対して配慮しながらも、
食事を利用して、立つ・移乗を含んだ離床の機会を
保つことにも繋がっています。

病院で働いている時は
基本的には症状や機能が右肩上がりに向上していく段階で
訓練や調整をしていきます。

しかし、特養では右肩下がりの状態に合わせて調整をしていきます。
これが本当に難しい。

能力が落ちた時にベッドで臥床するのは簡単でいつでも出来ます。
能力を評価しながら、
今の現状(職場の対応が可能かどうか)に合わせて、
環境を整えることが大事だと思います。

色々と書いてきましたが、
本当に日々葛藤しながら仕事しています。

まだ勤務して1年も経っていないので
偉そうなことを言えませんが、
楽しく、学びながら働かせてもらっています。

特養で働く療法士は少ないと思います。
皆さんはどのようなイメージをお持ちですか?


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