電気機器メーカー社員と人材開発企業二代目社長。二足のわらじを履いて目指す「いきいきと働ける組織づくり」
今回お話を聞いたのは、人材開発を専門に行う「戸が笑う」の2代目社長・佐藤潤さん。創業者・佐藤良さん亡きあと「従業員がいきいきと働ける組織を作る」という理念を受け継ぎました。
電気機器メーカーという全く畑違いの業界から、人材開発の道を歩み始めて1年。創業者の想いを受け継いだ理由と今後のビジョンについてお聞きしました。
電機メーカーの社員が人材開発業界で2代目社長に就任。理由は「続けてほしい!」の声。
———全く畑の違う業界からの社長就任。会社を引き継ぐと決めたきっかけは何ですか?
最初は引き継ぐという感覚はありませんでした。父が亡くなったとき、取引中のクライアントさんが何社かいらっしゃって。そのクライアントさんとのお仕事だけはやり遂げなければという思いで社長に就任しました。
———お父様から引き継いだ仕事が終わったあと、社長を続けると決心した理由を教えてください。
父の周りにいた方々から、会社を存続して欲しいという声をもらったからです。
「お父さんにたくさん助けられた。」「一番苦しかったときにアドバイスをもらったおかげで、なんとかやっている。」「できることは手を貸すから会社を続けてほしい。」そういった方々の想いが原動力になりました。
父の仕事の内容は知っていましたが、こんなにも多くの方に影響を与えていたとは知りませんでした。ああ、これはやる価値があるなと思いましたね。
よい組織は戸が笑う。創業時から変わらない会社の強み。
———ユニークな社名に込められた創業者の想いを教えてください。
「みんなが笑っていられる組織を作りたい」という想いが込められています。
「戸が笑う」の文字通り、社員が笑顔でいきいきしている組織は建物の入り口も笑っていて、良い人や良い運気を運んでくる。そんな組織を作りたいと父は言っていました。
———「戸が笑う」の強みは何ですか?
会社を引き継いでからの1年(2023年11月取材当時)で感じた当社の強みは「人間の内面にフォーカスした人材育成」です。
多くのコンサルティング会社では、KPIや売り上げといったアウトプットに注力することが多いようです。人それぞれの認識の違いを追求するなど、目に見えないところにはあまり重点を置きません。
当社は、人間の内面からしっかりと変えていこうという想いが強いです。もちろんアウトプットも大切ですが、そのためのベースづくりに重点を置いているのは強みですね。
今講師をお願いしているのは、父と面識のあった人材だけです。組織の中で一番重要なのは、従業員がどれだけ満足して働けるか。良い組織は従業員がいきいきしている。その想いに共感してくれている講師たちです。
良い組織作りに役立つ研修を提供したいですね。父もずっとそうやってきましたから。
———人間の内面を掘り下げる研修、興味深いです。具体的にはどのような内容でしょうか?
ベーシックとアドバンス、2種類のプログラムがあります。
ベーシックでは組織内の縦のつながりをつくり、共通認識を育てます。組織内でのありたい姿をみんなで作り上げていくんです。
アドバンスは管理職向けのプログラムです。管理職同士の横のつながりをつくり、そのなかでどうありたいかを考えていきます。
企業のビジョンを構築し、それに向かってどうアクションするかという戦略にも触れます。
———研修を終えた方からはどのような声をもらいましたか?
研修では人は誰しも違う考え方を持っていると伝えています。
「研修を受けるまでは、相手の考えが理解できずモヤモヤしていた。自分と相手は大事にしているものが違うとわかり、気持ちが軽くなった。」「相手に合わせたアプローチができるようになった。」などの声をいただきました。
どのような人間関係を築きながらビジョンに向かえば良いのかがわかると、みなさんスッキリするようです。
何もわからず飛び込んだ人材開発の世界でしたが、やってみると意外と楽しいです。
———潤さんのいきいきとした笑顔からやりがいが伝わってきます!どのようなところが楽しいですか?
組織が変わっていくのを肌で感じられるところです。
組織の成果が上がっていくのはもちろん、組織内のコミュニケーションが活発になり、チーム力が上がっていくのが目に見えてわかるんです!お会いするたびに、みなさんの雰囲気が変わるのが嬉しいですね。
「マネジメントで重要なのは従業員の満足度。」創業者のルーツは会社員時代の経験。
———創業者の佐藤良さんはどのような人でしたか?写真の中のがらかな笑顔が印象的です。
ずっと勉強しているイメージでしたね。仕事仲間からは、働きやすい職場作りのために日々がんばっていたと聞いています。
困っている人がいれば違う部署でもしっかり相談に乗り、役職者という立場を感じさせない立ち居振る舞いだったそうです。
会社を引き継いで初めて、父の人望の厚さを知りました。慕われるような仕事をしていたんだなって。大きな人脈を残してくれたことは、自分にとってすごくプラスになっています。
———創業者の良さんは、もともと(株)デンソーで開発に携わっていたそうですね。そこから人材開発業界に仕事の舞台を変えたきっかけは何だったのでしょうか?
父は(株)デンソー時代に部署異動を経験しました。役職者とはいえ、部署が変わると仕事のノウハウがわからなかったそうです。
どのようにチームをまとめていくか悩んだ末「マネジメントに一番大事なのは、社員が自由にいきいきと働ける組織を作ることだ!」と父は気づきました。そこから「戸が笑う」の立ち上げに向かったようです。
当時、組織マネジメントについて父に教えてくれたのは、現在も当社で講師を務める望月広愛さんです。
社長就任から1年、今後の展望。「若い世代のコミュニティをつくりたい。」
———2023年、会社を引き継いで丸一年です。どのような1年でしたか?
経営の難しさと楽しさを感じましたね。いろいろな人や知らなかったことに出会えました。
人材開発に関わることで、自分が会社員として研修を受けたとき、内容をより深く理解できるようになりました。
———「戸が笑う」の社長として、今後も変わらず守り続けたいものは何ですか?
理念です。お客様目線はもちろん大切ですが、まずは従業員が一番大事という考えをしっかり受け継ぎ、より良い組織づくりに貢献したいですね。
———最後に、人材業界で新しくチャレンジしたいことを教えてください。
20〜40代といった若い世代向けのコミュニティをつくりたいと考えています。働き方について意見交換をしたり、困っていることがあればそれを解消したりできる場です。
実際に当社の研修を受けているのは、50代以上の世代が多いんです。若い世代は研修に参加する時間を取れないことが多くて。
若者がゆるく参加できるイベントなどを開催して、人材開発の活動の幅を広げていきたいですね。
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「人材開発なんて何もわからずスタートしました。」と笑顔で話してくれた潤さん。創業者である父の信念を守りながらも、新しい時代の人材開発を模索する姿勢にこちらも背筋が伸びました。若い世代も巻き込みながら、働く環境を整えていく。今後の「戸が笑う」に注目です。
〈取材・文=徳山チカ(@tokutenna)〉
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