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贈る人も受ける人も満たされる支援|谷口マリエさんがユニセフのフレンドネーションを選んだ理由

いくら寄付をすればいいのかな?
10円では意味がないかな?
私にできることってあるのかな?
世界の困っている人を助けたい、でも……。

答えのない自問自答を繰り返しながらも、なかなか行動できずにいる。きっと多くの心優しい人がこう思っているはず。

今回お話を聞いたのは、親子のタッチケア(※)セラピストで自己肯定感講師の谷口マリエさん。(※心と体のふれあいを大切に、親子の絆を深めることを目指すベビーマッサージ)

寄付に対するハードルを下げるにはどうすればいいのか。自分の行動が「役に立っている」と実感できる支援の方法はあるのか。

この問いに対して彼女が出した答えは、「ユニセフのフレンドネーション」でした。プロジェクトを始めたきっかけや支援に対する想いを伺いました。

谷口マリエさん
金沢出身、三児の母。Heartfulness Touch Care 代表。
親子のタッチケアセラピスト、自己肯定感講師。
夫の海外赴任に伴い2023年7月よりインドネシアでの生活をスタート。
2023年12月現在も、インドネシアから子育てや生き方についての発信を続けている。
Instagram:https://www.instagram.com/marie.taniguchi__/
note:https://note.com/marie_taniguchi/

フレンドネーションとは?
ユニセフの新しい支援のかたち。誰もが簡単に支援プロジェクトを立ち上げることができる。SNSで寄付を呼び掛け、集まった募金はユニセフを通して世界の子どもたちへの支援に役立てられる。

公益財団法人 日本ユニセフ協会公式HPより

伝えられる立場にいる。きっかけはインドネシアでの暮らし

———マリエさんはユニセフのフレンドネーションに参加し、「クリスマスドネーション」というプロジェクトを立ち上げられたのですね。

そうなんです。クリスマスドネーションは、みなさんから500円の寄付を集めるプロジェクトです。「寄付はしたいけれど、何から始めればいいのかわからない」という方の、一歩踏み出すきっかけになればいいなと。

一杯のコーヒー、コンビニスイーツ、なんなら私へのクリスマスプレゼントだと思っていただいてもいいので(笑)。まずは軽やかな気持ちで支援の和に入ってもらえると嬉しいです。2023年12月25日までに10万円を目指しています。

クリスマスドネーションの概要↓

———クリスマスドネーションを立ち上げたきっかけは何ですか?

きっかけはインドネシアでの暮らしです。

東南アジアの貧困問題についてはもちろん日本にいたときから知っていました。歴史で学ぶし、ニュースでも見るし。

ただ、わかってはいたけれど、実際に貧困に苦しむ子どもたちを目の前にしたときにすごく感情が揺れました。

一流ホテルのすぐ横には貧しい子どもたちが住んでいる。貧富の差って本当に隣同士なんです。インドネシアでの暮らしを通じて、日本で見て見ぬふりをしてきたことや、普通に生活することのありがたさに気がつきました。

小さな力かもしれないけれど、私が行動することで変わるものもあるのではないか。日本にいたときに言い出せなかった言葉を、今なら言えると感じたんです。

———マリエさんが実際に見てきたことを、日本にいる方々に生の言葉で伝えられると。

そうそう!そうなんです!私が支援を呼びかけることで、日本にいるみなさんにとっても意味のあることにつながるのではないかと思いました。

「1人ではできない理想の支援」をユニセフで実現する

———支援にもいろいろな種類がありますよね。

そうですね。募金やボランティア活動など、さまざまなかたちがあります。現地で必要とされているものも支援先によって異なりますし。

最初にやりたかったことは、実は募金ではなかったんです。私はタッチケアセラピストをしているので、タッチの力、つまり「人同士がふれあうこと」を通じて、インドネシアの子どもたちの役に立ちたいと考えていました。

具体的には、今後の5年間で、学校に通えない子や病気の子に会いに行って本を読んだり、一緒に遊んだりしながら、人とのつながりや安心感を得てもらいたいと思っていて。

でも、実際に支援活動をしている方に話を聞いてみたところ、それは私の理想であって、インドネシアの人たちにとっては心地良いことではないということに気づかされました。

たしかに、急にやって来た日本人から「タッチケアが支援につながると思うので、やらせてください」みたいに言われても、私だったら100%嬉しい気持ちでは受け取れないって。

では、どんなかたちであれば喜んでもらえるのか——。

現地で支援している人に聞いてみると、やっぱり「お金」だったんです。
オムツやミルクなどの支援物資ももちろん大切ですが、現地の状況によって必要な物や数は変わります。必要なときに必要なものが手に入るのが、支援の理想のかたち。今回のインドネシアの場合は、それが募金なんだって腹落ちしたんです。

———募金活動をする団体の中からユニセフを選んだのはなぜですか?

ユニセフなら、日本ユニセフ協会を通して簡単に日本円での寄付ができるからです。

そして、インドネシアが最優先であればインドネシアに、ロシアが最優先であればロシアに、というように世界情勢を見て支援をしてくれる。これは私個人にはできないことなので。

実は個人でもインドネシアに寄付しているのですが、インドネシアルピアで寄付をしています。困っている方たちは、現地通貨を必要としているんですよね。

ところが、国境を越えて支援をすることはとてもハードルが高いんです。
日本から日本円をインドネシアルピアに替えて寄付したいとき、個人や小さな組織ではそもそも換金ができないし、できたとしても東南アジアのどこかの国のドルを通して……とすごくややこしくなってしまう。

そういった方法では、実際にいくらの寄付になるのかもわかりにくく、参加を呼びかけるのは現実的ではないなと感じて。

そこで、「未来を担う子どもたちの力になりたい」「目の前の貧困問題を解決したい」という私の想いと組織のビジョンが一致しているユニセフを選びました。

「どうぞ」「ありがとう」友人どうしでプレゼントを贈りあうような軽やかさで

———たくさんの方がクリスマスドネーションに参加されて、すでに7万円の寄付が集まっていますね。(2023年12月1日取材当時)

そうなんです!本当にありがたい!

———その一方で、まだ寄付が身近ではない人も多くいます。募金のハードルが高い理由は何だと思いますか?

日本にいたとき、私の中にもブロックがあって。「いくらだったら役に立ったと言えるんだろう?」と考えてしまって行動できずにいたんです。

でも本当はたとえ10円だっていい。少額でも集まれば大きな力になるのに、多くの人がなぜか「ちゃんと寄付をした」って自分に言えずにいるというか……。

多分どれだけ払っても、人の役に立ったと思える瞬間ってこないんですよね。1人の小さな力だけでは、いくら寄付をしても足りないことはわかっている。だからこそ、クリスマスドネーションは「500円でいい!」と決めたんです。「いくらでもいい」という言葉で迷わせたくなかった。寄付に対するハードルをできるだけ下げたかった。

「1000円はちょっと高いな」「2000円くらいは入れないといけないのかな」と思っている人が、「500円なら私にもできる」と思ってもらえたら本望です。

「500円の寄付をしてくれたら、私からありがとうを伝えるよ」って。

———私もクリスマスドネーションに参加したのですが、マリエさんからのありがとうの言葉で、「私も役に立てたんだ!」と思えました。この実感があるからこそ、みなさんの500円が集まって大きな支援になろうとしているのですね。

嬉しいです。寄付をして、その資金が無駄に使われないことはわかっているのに、なぜかみんな行動に移せない。その原因は、やっぱりちゃんと「ありがとう」の言葉を受け取れていないからなのかなと思ったんです。

ユニセフに寄付をすれば、「この度はありがとうございます」とお手紙が送られてきます。でもこれは、その先に人はいるけれどよく見えない“実感を伴わない”お礼。だからといって、現地の子どもたちから直接お礼を言われたいのかというと、そういうことでもない。

きっとみんな、自分が役に立ちたいと思う“身近な誰か”に「ありがとう」と言われることで満たされるのではないかと感じたんです。

今回はその対象が私であればいいなと思っていて。参加してくださった方が、「寄付が最終的に誰に届くのかはわからないけれど、マリエさんのことは知っている」状態であったとしても、結果として届くべき人に届くのであればそれでいいと思っています。

だから、私にプレゼントを贈るような感覚で寄付していただけたら、私がその方にありがとうを伝えます。そうすることで参加してくださった方も、私も嬉しくて、現地にも役立つ支援ができると思うから。

———想像力は誰にでも平等にあるものではありませんし、「遠くの誰かのために支援をしたい」とすべての人が思えるわけではないですよね。

なかなかそんなふうには思えないですよね。家族みたいに大切な人が困っていないかぎり、海外の人々を本気で支援しようとは思えない。

でも人って、すごくお世話になった人や大切な人には1000円のプレゼントだって安いと感じるじゃないですか。

お歳暮を贈ったり、クリスマスプレゼントを選んだりするときって3000円くらいは使いたくなりませんか?この気持ちのままに寄付できたら、うん、すごいことだなと。

モヤモヤした感情は蓋をせずに感じきる

———ここまでお話を聞いて「身近な人の役に立っているという実感」は、自己肯定感につながると感じました。自己肯定感講師として、モヤモヤした感情に出会ったときはどのようなことが大切だと考えますか?

自分はどうしたいのかを“聞く耳を持つ”ことが大切だと思っています。今の状態に対して違和感がないか、どう感じているのか、心地よくないのであればどうしたいのか、自分で自分を感じること。

そして、人は辛い感情を感じきることで次に進めるので、「悲しみきる」「落ち込みきる」というのも成長への大事なステップなんです。

辛さを密閉容器に入れて、蓋を閉めて、地下倉庫に置かないようにしたいですね。みなさんにはいつも「思いっきり感じきろう、一緒に」とお伝えしています。

———マリエさん自身も「支援が必要だとわかっているけど行動できない」というモヤモヤに蓋をせずに感じきったからこそ、今回インドネシアで行動に移されたのでしょうか?

たしかに、自己肯定感を軸に「心の育み」を勉強していたからこそ勇気を持てたのかもしれません。

必要な人に必要なものを届けたい。ただそれだけの純粋な気持ちだけを大切に行動する。

他者からの評価と自分の意志を区切って考える力があったからこそ行動できました。

インドネシアに来たことで、自分に対して違和感なくクリスマスドネーションを始められました。自分のしたかったことや学びが、こうして今につながっているのだなと感じています。

♢♢♢

マリエさんの立ち上げたクリスマスドネーションは2023年12月25日まで受付中。お一人様、何回でも参加できます。ぜひあなたからも世界の子どもたちに、支援のクリスマスプレゼントを。

〈取材・文=徳山チカ(@tokutenna)〉


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