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徳島市政の課題をまとめました

この記事では,2020年の徳島市長選の争点となった事項選挙公約新聞等に書かれていた内容をもとに,現在の徳島市が抱えている主要な政治課題を一気にまとめます

今,徳島の政治は熱い!と個人的に思います。

1.新ホールを巡る県市協議停止

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旧徳島市文化センターの写真(photo by 663highland wikipedia)

まずは新ホールについて。新町西地区市街地再開発事業の白紙撤回から続く問題であり,遠藤彰良前市長を在任期間終始大きく悩ませた問題だったのではないでしょうか。

新ホールとは,徳島市が新しく整備を予定している多目的ホール(演劇やコンサートなど様々な公演やイベントに使用される建築物)です。徳島市文化センター(1963年開館~2015年閉館)に代わって,「市民の芸術文化の創造拠点」となることが期待されています。

昨年2019年秋に徳島市から新ホールの建設事業者(優先交渉権者)を選定したことが公表されました。旧文化センター跡地に,東京五輪オリンピックの主会場となる新国立競技場を手がけた隈研吾氏によるデザインによる新ホールが,2023年度中の開館に向けて整備されるとのことでした。しかし,現在この新ホール整備事業は停止しています。

その原因は,建設予定地としている文化センター跡地の3分の1を所有する徳島県が「土地交換合意を得る前に市が業者を選定したことが市議会の付帯決議に反している」として交換協議を無期限停止にしたことにあります。

2020年の徳島市長選挙において,この新ホールの整備事業が停滞している原因は県との対話がなされていないからとして 「優先交渉権者の白紙撤回」を公約に掲げて内藤佐和子氏は当選しました。

内藤市長は,就任後6月4日の市議会の委員会にて「県の求めに応じて優先交渉権者の選定を撤回する」ことを正式に表明されました。今後は,整備事業再開に向けた協議を行いたいとのことです。

2.新町西地区市街地再開発事業

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新町西地区市街地再開発事業とは,上述した新ホールを整備することに加えて,老朽化が進む市街地をまとめて再開発することを目指していた事業です。

近年,郊外への大型ショッピングモールの進出などにより,中心市街地の空洞化が進行しているため,当該地区の再開発と文化センターに替わる新ホール(前述)を一体整備することを目的として,再開発事業が進められてきました。再開発事業の主体は,新町西地区市街地再開発組合であり(2011年設立),特定業務代行者に竹中工務店を選定し,徳島市は当該再開発事業を支援しておりました。

市は,当該地区の地権者等で構成される組合が再開発事業の中で建設した新ホールを徳島市が買い取ること及び補助金の拠出を計画しており,合わせて総事業費の約80%を市が負担する計画となっておりました。

しかし,総事業費が当初計画より増えたことで市の負担が当初111億円から181.2億円に増大することとなり ,税金の無駄遣いではないかとの反対意見も多く出てきました。

前回2016年の徳島市長選ではこの再開発事業が一番の争点となりました。結果,再開発事業の白紙撤回を公約に掲げた遠藤彰良氏が当選し,再開発とホールの一体整備を進めてきた前市長の原秀樹氏が敗れることとなりました。

公約通り,徳島市は,新ホールは買い取らないこと,及び現事業計画からは撤退する方針としたことで,予算が確保されないため,着工前の最終段階まで進んでいた事業は事実上ストップすることになりました。

それを受けて,2016年8月,同組合は,市による権利変換計画の不認可処分は違法として,市を相手取って不認可処分取り消しと計画認可の義務付けを求めて訴訟を起こしましたが,最高裁判所は2019年2月に上告を受理せず,組合側の敗訴が確定しました。

その結果を受けて,2019年3月,同組合は,市の事業撤退により経済的・精神的損害を被ったとして,市に対して6億5448万円の損害賠償を求めた訴訟を起こしました。その裁判の判決が2020年5月20日に徳島地裁で言い渡され,遠藤彰良前市長による事業からの撤退を「信頼に反する違法な行為」と認定し,組合の主張をほぼ認め,市に3億5878万円の支払いを命じられました。それを受けて,市は地裁判決を不服として高松高裁に控訴する方針を決めています。

3.そごう閉店後のアミコビル利用

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そごう徳島店の写真(photo by 663highland wikipedia)

そごう徳島店は, 1983年10月にアミコビル内の核となるテナントとして開業し,「県内唯一の百貨店」として多くの人に利用されてきましたが, 2020年8月末に閉店することが予定されています。

この閉店により,徳島は全国で唯一百貨店のない都道府県となります。アミコビルはJR徳島駅前に位置し,市中心部のまちづくり政策の核となる施設であるため,そごう徳島店の閉店は,深刻な徳島市中心市街地の空洞化が益々加速することが予測されます。

アミコビル(正式名は徳島駅前再開発ビル)は ,徳島駅前西地区における市街地再開発事業として整備された商業ビルであり,テナントとして徳島そごう,アミコ専門店街,徳島東急イン,徳島市立図書館,集合住宅等が入っています。そもそもは,徳島駅前西地区市街地再開発組合(当該地区の地権者等で構成)によって整備されました。それを,徳島市が共同出資して1979年に設立した第三セクターの徳島都市開発株式会社がビルの保留床を取得し,そごう・専門店・ホテル等(一部権利床を含む)に賃貸すると共に,ビル全体の管理者となっています。つまり,徳島市は当該会社の株式を大多数保有している大株主となっています。

徳島都市開発は,そごう徳島店に対して約30億円の債務も抱えていることが知られており(債務内訳:そごうがアミコビルに入居した際の敷金約18億円と保証金約12億円),都市開発はこの債務を返済する十分な資金を保有しておらず、一括返済を求められれば倒産する可能性があると報じられています。

2020年6月10日において臨時株主総会と取締役会が開かれ,代表取締役社長に元徳島市第2副市長の鈴江祥宏氏が選ばれましたが,徳島店の後継テナントについて「具体的な交渉に進んでいるが、公表できる段階ではない。」とのことです。

4.阿波おどり騒動

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徳島市政の課題の中で全国的に一番有名な問題がこれです。

阿波おどり騒動とは,主催する徳島市観光協会の多額の累積赤字問題をきっかけとして,2017年に徳島市と徳島市観光協会とがその運営方法などを巡って対立したことにより,引き起こされた様々な騒動のことです。

結論としては,赤字解消の目途が立たないことから,徳島市から地方裁判所へ破産申し立てを行い,徳島市観光協会は破産することとなりました。2018年からは,市と徳島新聞社などで構成する実行委員会が主催しており,2019年からは運営を民間委託しています。なお,2020年の阿波おどりは新型コロナウイルスによる影響から開催中止が決定されました。

これまで,阿波おどりは観光協会と徳島新聞社により共催されてきました。1971年に観光協会が設立され,1972年から徳島新聞社が運営に加わり,会計などの主要な業務は観光協会が担い,演舞場の運営業務全般を徳島新聞社が担う形での共催体制が続いていました。毎年8月12日から15日の4日間で120万人以上が訪れるイベントであったものの,悪天候時の有料演舞場のチケット払い戻しや演舞場の修繕費用などが重なり,2017年には累積赤字が4億3600万円に膨らんでいました。徳島市は直接運営には関与していないものの,観光協会が運営費を金融機関から借り入れる際の債務保証をしており(つまり徳島市は借入者である観光協会の保証人),さらに補助金や阿波おどり会館並びに眉山ロープウェイの管理費を観光協会に毎年支払っていました。

2016年の市長就任後,この多額の累積赤字があることを知った遠藤彰良氏が,累積赤字解消に向けて,2017年9月に徳島市と観光協会と徳島新聞社の3者による協議会の設置を決めました。しかし,観光協会との協議が一向に進まなかったので,徳島市は,地方自治法に基づき観光協会の会計監査を実施しました。その監査の結果,観光協会が累積赤字を解消しつつ阿波おどり事業を継続することは困難と判断し,徳島市から債権者として地方裁判所へ観光協会の破産申し行い,その申し立てが認められて破産に至りました。

なお,4億3600万円もの累積赤字は,観光協会が保有していた預貯金および資産と,阿波踊りの発展や安定的な運営のために徳島新聞社から寄付された3億円を活用して,解消されたとのことです。

2018年からは,市と徳島新聞社などで構成する実行委員会が主催しています。2018年の阿波おどりでは,収益向上を目的として,これまで1つの演舞場で行っていた総踊りを4つの演舞場に分散した形で実施するとの決定に対して,総踊りを実施する阿波踊り振興協会がこの決定に反発して,演舞場外で独自に総踊りを実施したことが大きな話題となりました。2019年からはキョードー東京共同事業体に運営を委託することとなりました。2020年は,選挙公約で掲げていた通り,内藤佐和子市長が阿波おどり実行委員長への就任が決まっています。

5.保育施設整備事業の見直し

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現時点(2020年6月)で一番徳島市を騒がせている問題がこれです。

教育・保育施設等整備費補助事業とは,徳島市が待機児童の解消策として,私立認定こども園・保育園の施設整備を行う計画であり,2020年度当初予算に組み込み,8ヶ所の私立こども園・保育園が整備され,2021年度に定員を496人増加させるものでした。

遠藤前市長の在任時に市議会で予算は承認されており,内藤新市長による予算執行の判断を待つばかりでありましたが,徳島市の財政状況の悪化や,定員の過剰な確保になる等を理由に,同事業を見直すことが発表されました。

この事業には市から16億円超の予算が計上されていましたが,国や県からの補助金が交付されることになっていたため,市の負担は5億円程度となる計画でした。さらに2020年4月に国からの補助金が増額したことを受けて,市の負担は2億円程度となる予定でした。

この事業見直しの決定に対して,事業の実施者および市民からは疑問の声が上がっており,6月11日の徳島市議会の開会日において,6人の市議が連名で,当該補助事業の即時執行を求める決議案が提出され、閉会日の25日に本会議で採決される予定です。

市民からも同事業の見直しの撤回と即時開始を求めること(請願)が計画されており,賛同者を呼び掛ける署名活動が行われており,注目度の高い課題となっています。

6.広域ごみ処理施設計画

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徳島市および近隣の関係市町にとって最も緊急かつ重要な課題がこれです。

広域ごみ処理施設計画とは,徳島市が小松島市,石井町,勝浦町,松茂町,北島町と進める広域ごみ処理施設整備事業のことです。徳島市が5市町から事務委託を受け整備と管理運営に当たり, 2027年度の稼働を目指しています。総事業費は約450億円

ごみ焼却施設の一般的な耐用年数は20~25年とされるのに対して,各市町が保有する施設は,耐用年数を超過して稼働しています。また,老朽化が進んでいることから,修繕・維持費が毎年多く掛かっています

徳島市の例を挙げると,東部環境事業所(論田町)は稼働から約40年西部環境事業所(国府町)は約30年経っており,年間3億~5億円もの修繕費が発生しています。

現在のようにそれぞれの市や町でごみ処理施設を保有する場合に比べて,広域整備ならば1市町当たりの建設費や維持費用が安く済むため,徳島市を含む関係市町が合同で整備することが計画されています。

市民の生活に必要不可欠なものを関係市町と協力して安価に整備するという計画自体に反対する人はいないと思いますが,それをどこに作るかについては反対する意見が出てきます。

2016年11月,徳島市飯谷町枇杷ノ久保の民間採石場を建設候補地に選びましたが,ごみ収集車の往来や焼却炉の排煙が周辺環境に悪影響を及ぼすとして,候補地周辺地域で反対の声が上がっています。

この候補地は,徳島市内6カ所と小松島市内1カ所の中から選ばれました。仮に断念すれば残り6カ所からの選定が考えられますが,新しい候補地を選んでも反対の声が上がることが予測されることから,市は候補地の地元住民から合意が得られるよう調整を進めていました。

一方,2020年の徳島市長選において,内藤佐和子氏は,同計画のスケジュール凍結と,市長自らが候補地に出向いて,現計画に関するあらゆる情報を開示し対話をして解決策を図ることを公約として掲げて当選を果たしました。

これまで述べてきた通り,広域ごみ処理施設計画は関係市町を巻き込む喫緊の課題であるため,今後の動向が気になります。

まとめ

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以上,徳島市政が抱える課題を6点概説しました。結論としては非常に興味深い。ここでは書き切れないことも多いため,別途書きたいと思います。

もちろん大きな課題の一つに新型コロナウイルスの問題もありますが,それは全国的というか世界的な問題なので省略しています。

ただ,まとめてみると,市長が交代する度に費用の問題等で停滞している事業が多くあるように思います。市長には,部下たちが議論に議論を重ねて決められなかった「右か左か分からない」という案件には「割り箸役」になって決めるという仕事も求められると思います(引用:橋本徹「実行力 結果を出す「仕組み」の作りかた(PHP新書))。

もちろん議論が出尽くしていない段階での拙速な判断一方的に「右」と思い込んでの判断は避けていただきたく思いますが,市長には結果を出す「仕組み」を作って実行力を発揮いただければと思います。

また,事業の立案・実施・撤退・再考といった過程に時間を掛ければ掛けるほど,そこに関わる市の職員の人件費(市長含めて)は相当な金額となります。釈迦に説法かもしれませんが,その点もご考慮いただければ。

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