もうひとつのラブストーリー(43)「すっぽかし事件」
今回は、ある土曜日の朝のお話です。
前日の金曜日は、職場の飲み会があり、帰宅するのが遅くなりました。
というか、正確に言うと帰宅した記憶がなかったのですが⋯。
「「トクちゃん」、起きて!」と「ちえ」に揺り動かされました。
「う~ん、まだ眠い⋯」
「もう!起きてって言ってるでしょ!」
「う~ん⋯。うん?なんで「ちえ」がいるの?」
「なんでじゃないわよ。今日は9時に迎えに来てくれる約束だったでしょ」
「何度も電話したんだけど出てくれないから心配になって来てみたんだけど⋯」
「まさか寝てるとは思わなかったわ」
「「トクちゃん」、約束忘れてたでしょう?」
「あ、そうだっけ!今何時?やばい、もう10時過ぎてるじゃん」
「私との約束忘れて寝てたわけ?」
「昨夜はさあ、職場の飲み会があったんだよ」
「3次会まで行って、最後にラーメン食べて⋯」
「うん?それからどうしたんだっけ⋯」
「あれ?記憶がないんだけど⋯」
「あ、俺まだネクタイしてるじゃん、ということは、そのまま寝ちゃったんだ⋯。誰かが送ってくれたのかなあ?」
「それとも自分でタクシーで帰ってきたのかなあ⋯」
「もう、約束破った罰にこうしてやるー」と言ってほっぺたを思いっ切りつねられました。
「痛い、痛いよ「ちえ」」
「ヤバ、頭がガンガンする⋯。二日酔いだ」
「そんなになるまで飲んだの?」
「いや、そんなに量は飲んでないと思うんだけどな⋯。俺、酒そんなに強くないから⋯」
「約束破ってゴメン」
「いくら職場の付き合いだからって、記憶がなくなるまで飲んじゃダメだよ⋯」
「そうだよな⋯、ホントにゴメンな」
「あ~、頭がガンガンする、気持ち悪い⋯」
「もう!二日酔いじゃあ看病してあげないからね」
「まだ臭うわよ」
「あ、今オナラしたの分かった?」
「そうじゃなくてお酒臭いってこと!」
「ゴメン、ゴメン、お昼過ぎに出かけようか?」
「出かけようかって、「トクちゃん」、そんな状態で出かけられるの?」
「う~ん、分かんない⋯」
「もう!分かんないじゃないわよ⋯」
「もう一度、こうしてやるー」と言って、今度は耳を思いっ切り引っ張られました。
「痛ってえなあ」
「痛いじゃないわよ⋯」
「約束すっぽかされた私の身にもなってよね」
「「トクちゃん」、また、この前みたいに頭が痛くて唸ってるかもって心配しちゃったんだから⋯」
「確かに頭が痛いんだけど⋯」
「それは二日酔いでしょ!」
「はい、そうです⋯」
「もう、しょうがないわね⋯」
「お水飲む?」
「うん、飲みたい」
「はい、お水」
「ありがとう。やっぱ「ちえ」は優しいよな⋯」
「今回は許してあげるけど、今度、飲み過ぎて約束破ったらタダじゃおかないわよ」
「はい、分かりました」
「もう少し横になってても良い?」
「うん」
「「ちえ」も横に来るか?」
「⋯」
「もう、仕方ないわね⋯」と言って一緒に横になってくれました。
「「トクちゃん」、二日酔いで良かったよ。ホントに心配したんだからね」
「ゴメンな⋯」
「ギューってして良い?」
「うん」
ギュー
「キスしても良い?」
「うん」
チュ
「お酒臭~い」
「もう絶対約束破らないからな」
「「ちえ」は、優しくてホントに良い子だな」
「ちょっと子供扱いしないでくれる」
頭を撫でながら「よしよし、可愛いなあ」
「もう⋯、「トクちゃん」。そんなこと言われたら怒れなくなっちゃうじゃん⋯」
「良い子、良い子、大好きだよ「ちえ」」
「もう⋯。誤魔化そうとしてるな?」
「そんなことしなくても、「ちえ」は優しいから大丈夫だよな?」
「もう⋯」
つづく
PS。
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