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「ちえ」③「初デート」②

初デートで映画を見る予定が、急遽動物園に目的地を変更しました。

動物園に到着して入場券を買っていると「ちえ」が「私の分は自分で出すから」

「良いよ、俺が無理矢理誘ったんだし、今日は俺に出させて」

「じゃあ、お昼は私が奢るよ」

「ホント?俺メチャクチャお腹空いてるからいっぱい食べちゃうけど良い?」

「うん、お腹いっぱい食べて(笑)」

動物園内を一周してレッサーパンダを見た時に

「Kさん、Yって覚えてる?」

「うん、覚えてるよ」

「アイツがさあ、レッサーパンダのことをずっとラッサーパンダって言ってたんだよな、それでみんなで大笑いしたんだよ」

「へえー、そうなんだ」

「あのさあ、Yで思い出したんだけど⋯。KさんYに告白されたの覚えてる?」

「うん、覚えてるけど⋯。なんで、そのことT君が知ってるの?」

「あの時さあ、Yが恥ずかしくてKさんに声をかけられないからお前が声かけてってる頼まれたんだよな⋯」

「あれ確か、放課後の掃除の時だったよな」

「うん、T君よく覚えてるね」
 
「あの後、結局どうなったの?」

「うん、もう受験も近かったから「勉強で精一杯だから」って断っちゃった」

「ふ~ん、そうだったんだ。アイツ、その後のこと聞いてもなんにも言わなかったから、ダメだったとは思ってたんだけどね」

お昼には「ちえ」の奢りでサンドイッチを食べました。

「このサンドイッチ上手いな。俺、タマゴサンドが大好きなんだよな」

「ねえ、もう一個食べても良い?」

「うん、良いよ、私が買って来ようか?」

「アハハ、冗談だよ。Kさんに、これ以上お金使わせたくないから」

お昼の後にブラブラしていると爬虫類館の看板を見つけました。  

爬虫類館は少し高い所にあり、リフトで登って行くようになっていました。

「高校の時に、こんなのあったっけ?」

「私も全然覚えてないから、無かったんじゃないかなあ⋯」

「どうする?」

「せっかく来たんだから、見てこうよ」

「う~ん⋯」

「T君もしかして爬虫類とか苦手?」

「イヤ、爬虫類は、なんとか大丈夫なんだけどさあ⋯」

「俺、高い所が苦手なんだよな⋯。だからリフト乗るのが怖いんだよね⋯」

「へえー、そうなんだ」

「Kさんの手を握ってても良いなら我慢して乗るけど⋯」

「アハハ、良いよ」

「ちえ」の手は、とても小さくて華奢で強く握ると壊れてしまいそうでした。

「俺、目をつぶってるから着いたら教えて」

「アハハ、T君って面白いね」

なんとか爬虫類館にたどり着き、中を一周してから近くのベンチに座って、お互いの家族構成等を話しました。

その時に、次のデートの約束を取りつけようと思い「来週の土日って空いてる?」と聞いてみました。

「う~ん、土曜日は用事があるけど日曜日なら大丈夫かな⋯」

「じゃあ、日曜日に、また会ってくれる?」

「良いけど⋯」

「俺、Kさんと行ってみたい所があるんだよね」

「へえー、それってどんなとこ?」

「ラブホ」

「⋯」

「って言うのは冗談だけど、この後、ちょっと下見に行っても良い?」

「うん、良いよ」

                                                                       つづく


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