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統合失調症の新しい治療法の確立のために

記事の見出し画像はみんなのフォトギャラリーから使用させていただきました。


幻覚や妄想がある統合失調症は、以前にも以下の記事でも解説したように、「症状の急性期は脳が部分的に睡眠中と同じ状態になっている」という説が最近は色々な脳科学者や精神科医達が提唱しだしています。

人はレム睡眠中に夢を見るのですが、この夢を見ている時は

・色々な幻覚を体験する(映像や音声)
・思考が支離滅裂になる

という、統合失調症の急性期の症状とまったく同じ状態になっています。

夢を見ている状態では脳は思考を司る前頭葉が一部しか活動的になっていないのが睡眠中の脳の各所の測定(脳波や部位ごとの血流測定)でも確認されています。
睡眠中は思考を司る前頭葉の多くの部分の活動が低下しているからこそ、夢を見ている時は思考が支離滅裂になってしまうのです。
夢自体もなんかつながりなく変化していきますよね。

その一方でレム睡眠中にも視覚や聴覚に関わる脳の部分は起きている時同様に活動的なままで、このためレム睡眠中には色々な映像だったり音を体験するわけです。
レム睡眠中と違ってノンレム睡眠中(深い眠りの状態)では脳の視覚や聴覚に関わる部分の活動も低下するため、ノンレム睡眠中は映像や音声は体験しません。

手術などで全身麻酔を行った後に、一部の人が覚醒してからしばらくは『せん妄』の状態に陥るのも、麻酔が綺麗に脳から抜けきらず、脳が一部しか活動的になってなくて「脳が部分的に夢を見ているのと同じ状態になる」からこそと言えます。

突発的な睡眠状態に陥ってしまうナルコプレシーという病気も、統合失調症と似た幻覚や妄想が時々発生する事がよく知られています。
これもやはり「脳が部分的に睡眠中とかなり似た感じになってしまう(脳の一部の活動が何らかの理由で突然低下してしまう)」というのがあるからです。

<統合失調症の新しい治療法の確立のために>

今現在の統合失調症の治療薬としては

・「ドーパミンの分泌量が過剰かもしれない」という説を元にしたドーパミンの量を調整する薬
・「心を落ち着かせるセロトニンの分泌量が不足しているかもしれない」という説を元にしたセロトニンの量を調整する薬

をメインに処方している事が多いと思います。
その他にも色々な薬が処方されているとは思いますが、「急性期には脳が部分的に睡眠状態に近い状態になっているから、脳が覚醒時と似た状態に戻るようにする」というタイプの薬は処方されていません。

「興奮している患者に、興奮させる薬を処方する?馬鹿言うな」と怒る人もいるかもしれません。
覚醒を促す薬』というのは「脳の一部の活動が低下しているので、その部分の活動量を回復させる」という作用の薬であって、「興奮をより強くする」という作用の物ではありませんので、その点はお間違いないようお願いします。

今後は

・色々な人の覚醒時や睡眠中の脳の状態をより詳しく測定観察する
・統合失調症急性期の脳の状態をより詳しく測定観察する
・それらの脳の状態の比較により、症状の急性期に脳のどの部分で不自然な活動量低下が起きているかを洗い出す
・その活動が低下している脳の部分の活動量を戻す薬の発見や開発、臨床試験や安全性検査を行う

という手順を踏んで、統合失調症の新しい薬(脳の一部の活動量が低下しているのを回復させる薬)が登場してくるのではと思います。

原理的にはナルコプレシーの治療や、全身麻酔後のせん妄の予防薬としても使われるようになるでしょう。

この『覚醒作用薬』という新しいタイプの統合失調症治療薬が今後登場して治療の主流薬になっていくのではと思います。

<何故脳の一部の活動が低下してしまうのか?>

統合失調症や麻酔後のせん妄状態、ナルコプレシーなどでは脳の一部の活動量が低下して部分的に睡眠時に近い脳の状態になってしまうと思われますが、そもそも何故脳がそのような状態に時々陥ってしまうのでしょうか?

その原因としては色々考えられます。

・脳の一部の血管が時々詰まる事でそこで血流量の低下が起き、その部分の脳の活動が強制的に低下してしまう

脳というのは常に血液中の酸素をよく取り込んで活動しているわけですが、部分的に血流が低下すると酸素が不足しだして脳のその箇所がきちんと機能しなくなります。

日常的なストレスは脳内で活性酸素を増加させ、その増えた活性酸素は脳の血管などをどんどん破壊して血栓を増やす事がわかっています。
この増えた血栓は細い脳血管を時々詰まらせたり、詰まるまで至らなくても血流量をずいぶんと低下させてしまいます。


また、ストレス以外にも甘い物などが原因となる事もあります。

甘い物をよく飲食すると血液中の血糖の量が多くなり、これも細い血管が詰まったり、毛細血管の血流量が低下するという事もわかっています。

脂肪分の取り過ぎも高脂血症状態となり、血液がドロっとして血流を悪化させます。

・ストレス
・甘い物の飲食しすぎ
・脂肪分の取り過ぎ

はいずれも脳の細い血管をつまらせたり、血流量を低下させる要因になっています。

脳の血流量低下は統合失調症だけでなく鬱病や双極性障害、パニック障害や自律神経失調症やその他の脳由来の色々な心や体の不調の要因ともなりますので、いずれかの病気にかかっている人は上記の三点には特に気を付けた方が良いでしょう。

脳にきちんと血液が提供され続けるよう、「ストレス」「高血糖」「脂肪の取り過ぎ」には今後注意してください。


その他にも、遺伝的な要因で脳の一部の血管が正常に成長や修復されずに細くなったり一部の血管がつながっていない状態になる、みたいな事でも脳の血流障害は発生するでしょう。

また脳腫瘍の成長によっても血管の一部の阻害が起きてしまい、脳の一部の機能低下を引き起こすと考えられます。

血圧も脳の血流に関わっています。

血液は適度な圧力で流されている時は一番血流量が良くなりますが、高血圧や低血圧などの場合は血流量の悪化も起きてしまいます。
塩分の取りすぎは高血圧を誘発しますし、塩分以外にもストレスや疲労、睡眠不足などは高血圧の要因になります。

最近は「塩分は血圧とは関係なかった!!」とか言って注目を集めようという医者もいますが、「塩分以外にも高血圧を起こす原因はある(ストレスや疲労、睡眠不足)」というならともかく、「塩分取り過ぎでも高血圧にならない」はデマでしかありませんので注意しましょう。

野菜とかを良く食べる人は同じ塩分量でも高血圧になりにくいというのはあります。
また負荷が軽い適度な運動も血圧改善につながります。