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芸術での匿名の魅力とは?

みなさん、アートに触れる機会はありますか?国内で展示会も多く催され、国内問わず海外でもアートが好きな方は多くいらっしゃるでしょう。そこで、そのアートの中でも匿名が多く注目を浴びています。日本であれば、大好評につき3回目開催中の「匿名希望展」。アーティストでいえば、匿名の芸術家「バンクシー」は世界中で人気です。なぜ、アートのなかで匿名が流通してきているのか。今回はその人気の秘訣を探ります。


匿名希望展とは?

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匿名希望展」を耳にしたことはあるでしょうか。わたしは正直知りませんでした。静岡県浜松市に本社を構える有限会社春華堂は、多くの人々にアートを楽しんでもらうために、2021年10月30日(土)から11月28日まで「匿名希望展 IN HAMAMATSU」で開催されているチャリティアートイベントです。この展示会の目的は、浜松市に住む人だけでなく、子どもにアートに触れる機会を創出する、隠れた才能を発掘する、未来に夢や希望を描けるような人を増やしたい、このような考えがあります。

参加者は有名なアーティスト、ファッションデザイナー、タレント、シェフ、美術学校の学生、地元の小さな子どもたち、馴染みのある有名人ではロンドンブーツ1号2号の田村淳さん、歌舞伎役者の中村獅童さんが参加しています。彼らは全て同じテーマ、『ドリーム』を基に絵を書きました。

そして、「匿名希望展」の最大の魅力なのは、購入者は絵を購入するとき誰が書いたか分からないこと。完全匿名なのです。展示も、一切名前を公表していません。作者を匿名にすることで先入観なくアートを購入できるからです。実際にアートの作者を知ることができるのは、展示終了後購入いただいた方へ作品をお届けとともに、そこではじめて作者を知ることができます。この仕組みは斬新なのではないでしょうか。

また作品購入代金は、支援が必要な子どもたちに、絵具、筆記用具、無地のキャンパスやクレヨンに換えてお届けし、ドネーションに。アートに触れる機会を広げていくプロジェクトです。
実際に第1回の2020年にあった「匿名希望展」は、購入代金を全て画材に変えてフィリピン・セブ島の子どもたちに贈ろうとしていました。しかし新型コロナウイルスの影響から、寄付金を画材・支援金に分けて送ることになりました。また、この画材を使って現地の子どもたちに絵を描いてもらい、次回の匿名希望展での販売も決定しているようです。

このような背景で「匿名希望展」は開催されていました。今後定期的に開催される予定なので、気になった方は是非足を運んでみてください。

では、匿名のアートから連想し、あなたはなにを思い浮かべますか。世界的に有名な芸術家、バンクシーも匿名で活躍しています。

バンクシーの正体とは


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バンクシーは英国を拠点とする匿名アーティストです。誰も彼の正体を知りません。彼の政治および社会批判の作品は世界各地のストリート、壁、都市の橋梁に残されています。過去に東京・港区の防潮扉にも現れ、当時は話題になりました。正体が分からないなか、なぜ人気があるのでしょう。その人気の秘密に迫ります。

バンクシーが匿名で活動を続ける理由とは


バンクシーは過去に一度自身の匿名性に言及したことがあります。その内容は、
ストリートアートの違法性
情報社会の危うさに対する懸念

この二つです。

まず、ストリートアートの違法性について。

そもそも、ストリートアーティストが公共の壁に絵を描くのは禁止されており、過去にはロサンゼルスで逮捕された例もあります。ストリートアーティストは違法と分かっていながらもスリルを味わうながら活動しているのです。バンクシーも違法性を自覚しながら活動しているなかのひとりでしょう。

バンクシーが逮捕されないのは、本人が正体を明かしていないからだと世間的に言われています。そもそもバンクシーが書いたとされる証拠も残っていないこと、、バンクシーはグループかもしれないこと、これらの原因から簡単に捕まえることができないのです。

バンクシーだけがストリートアーティストで特別扱いされるのは、作品を残した地域の壁のアートがバンクシー効果で成長し、影響があるためです。黙認されるだけであって、バンクシーが罪人とみなされる場合もあります。匿名であるからこそ活躍しやすい、これが理由のひとつです。

次に、バンクシーは情報の危うさに対する懸念

バンクシーを名乗る詐欺の増加・被害者が出るSNSへの危惧、監視社会への危惧です。バンクシーはSNSで自分の情報を公開することにメリットはないと話しています。Instagramを利用しているものの、新作を通知するための最低限ツールとして活用しているのでしょう。

また、彼の作品は監視社会に対する危惧を風刺した作品が多く、例えば防犯カメラの映る先に「何、見てるんだよ。」と描かれた作品があります。同じく壁に「ONE NATION UNDER CCTV(防犯カメラの下にある国家)」を描いた作品も話題を呼びました。これはストリートアーティストにとって天敵である防犯カメラの元におかれた現代の国家を風刺しています。生きにくくなった世の中を彼は作品にしたのでしょうか。

芸術家が匿名性を保つメリット

芸術家が匿名性を持つメリットはあるのでしょうか。ある利点とすれば、表現の自由、スリルを味わうことができる、鑑賞者の想像力が膨らむ・話題を呼ぶ、作品自体が評価される、この4つと考えられます。

特に鑑賞者に対して匿名性で活動することは、話題に持ち上がり、マーケティング手法にもなります。バンクシーの社会への風刺作品だからこそ、匿名がポジティブの方向へ向き、話題に上がったのでしょう。

匿名性を持つことのデメリット

しかし匿名として活動し、顔を隠すことは、自ら行動範囲を狭めていると行っても過言ではありません。匿名性のメリットもあれば、デメリットもあります。
匿名であることは、名前も何もかも分からないため広告手段が少なく、宣伝ができません。作品を後世に語り継ぐなら、作者と作品を結びつけて残していく必要があるのです。

匿名である以上、広告手段が制限され、アーティストとして行動範囲が狭くなります。美術館に展示することもできません。
これだけ提示すると、匿名性であることのデメリットがあると思われがちですが、バンクシーはそのデメリットも、メリットとしてブランディングに成功し、自身の声で広告も行っています。匿名を生かして活動しているのでした。

匿名で芸術家として活動することとは

「匿名希望展」、バンクシーの例を参考にさまざまなメリットがある分、アーティスト・芸術家が匿名性を持つことは行動範囲が制限されることも多くなります。
しかし、どちらとも匿名の良い点をうまく利用しできているビジネスでした。匿名希望展とは、匿名を使い先入観を無くして、自分の良いと思ったものを購入する。その購入金が寄付金として世界の子供たちに画材としてプレゼントされる、匿名から生まれた良いプロジェクトであることに違いありません。

バンクシーのように、全てのアーティストにとって匿名が有効であるとは考えられません。彼が風刺画を描いているからこそ、人物像に興味が持てるのであって、作者と作品が結びついているケースでは匿名の力を発揮しません。バンクシーならではの才能と匿名性が結びついたことで、大きな効果が生まれたのでしょう。

このようにアートの世界でも匿名が、良いイメージとして普及しているのでした。

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