見出し画像

ハワイの恋が終わり苦しみの先に悟りへの道が開けた 8



Nuuanu Avenue 領事館は左

第二章 6クリス牧師が辞めさせられる!

りさは、前の恋人龍一と別れたり戻ったりを繰り返しながら、この年の2月14日は龍一とは別れている最中で、5年ぶりの恋人のいない、バレンタインズデーだった。

シルバーエイジの合唱グループを教える日だったので、教会へ行き、オフィスのクリス牧師に挨拶をするために覗くと、牧師のことが好きな、医者の妻で、二人の子供がいる教会メンバーの、佐和子さんが手伝っていた。最近いつも彼女はオフィスにいる。フルートの曲をオフィスで流していて、そのフルート奏者の話をしていた。クリス牧を好きなのだなと思った。私がオフィスの中に入ると、佐和子さんが言った。

「あらりささん、何かいい事がありましたか?」

私は答えた。

「彼と別れたばっかりで、良い事なんかありませんよ」と。

クリス牧師は、にこにこ聞いていた。

「では、また」

私は、2階のピアノのあるホールへと向かった。

そのような日々が続いて、教会の大きなイベントがあった。イースターだ。キリスト教徒にとって、イースターはクリスマスと同じくらい大切な行事だ。クリスマスは、キリストの生誕を祝い、イースターは、イスラエルのゴルゴダの丘で、十字架につるされて槍で突かれて一回死んだキリストが、埋葬した場所で生き返った、復活したという日のお祭り。因みに、一回目に亡くなった日はブラックフライデーと言って、イースターサンデーの直前の金曜日には、特別礼拝が行われる。

復活祭には、近所の子供たちが教会の礼拝後に行われる、エッグハントに集まり、クリス牧師がフルートを演奏するというので、私は伴奏に呼ばれた。通常の教会メンバーだけでは無く、エッグハント狙いの、普段は教会には来ないたくさんの親子が来る。

教会メンバーの佐和子さんは、かいがいしく写真を撮ったり、ゲストのお世話をしたり、奥さんのいないクリス牧師にとって、奥さんの役割を果たしていた。  

クリス牧師は、彼女が好意を持っていることを、もちろんわかっているだろう。うまく彼女を使いこなしているな、と思った。しばらくして事件が起こった。

佐和子さんの友人が、教会のピアノを貸してほしいと頼みに来て、練習をするようになった。なんと、佐和子さんのライバルになったのだ。少しきれいだったせいか、クリス牧師は次の人妻、裕子さんと仲良くなったらしいのだ。

私は、ケアホームに行く車中20分の間で、クリス牧師から話を聞いた。佐和子さんが騒ぎ立てて、同じ宗派の教会の牧師先生に、抗議を申し立てたというのだ。

「クリス牧師は裕子さんという人妻と付き合っている。そんな牧師はいらない」と

私は彼に聞いた。

「付き合ってなかったの?」

クリスは答えた。

「付き合ってないですよ」

「でも、キスしたの?」りさ

「キスはしていませんよ」クリス

「手はつないだの?」りさ

「手はつなぎましたけど」クリス

「手は繋いだんだ、じゃあ付き合い始め、みたいな感じゃない?」りさ

たまたま、そこで佐和子さんが騒ぎ立てたからストップしたものの、ほっておけばどうなっていたか。りさは思った。

クリス牧師は、相当プレイボーイだな。

フランス人と日本人のハーフだから、人によっては、すごくハンサムだと言われていた。

りさをお姉さんみたいに思ったのか、又は気を引くためか、何でも正直に答える。16歳も上のりさのことも、彼の恋人ターゲット内だと言っていたな、と思いだした。

彼は、誰にでも気を持たせるタイプだ。

この事件はクリス牧師にとって、教会に残れるかどうかの、深刻な問題になったようで、相当心配し、がっかりしていた。でも、なんとか騒ぎは収まり、クリス牧師は、教会に引き続き居られることになった。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?