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#3 マナーとしてのプロトコル

ナレッジワークHRでは、週次定例の冒頭5分程度で「Leader's memo」という小噺をしています。社内外にも少し自己開示の範囲を広げてみようと思い、ライトにnoteにも収めていきます。

#3は『マナーとしてのプロトコル』というテーマです。


船に乗れなかったときの話

僕は過去に自分自身がオンボーディングに完全に失敗したことがあります。
新しい環境への適応が上手くいかないという体験は今思い出してもなかなか苦々しいものです。

具体的には、営業職から人事職へのジョブチェンジをしたタイミングでした。

能力不足や人間関係など様々な要因が絡み合って複雑骨折していたのですが、「やる気がない」「想いが足りない」と言われることがとても苦しかった。働く時間の長さでしか意志を表現する術がなく、ずいぶんと生産性の低い時間を過ごしたように思います。

人事として少しキャリアを積み、様々な人の環境適応を支援し、受け入れる立場を経験する中で、当時の自身のことを何度も顧みています。

振り返ると、意思決定のプロトコル(規格)を把握しておらず、チームのワークプロセスに自分を取り込めなかったことが大きな敗因の一つでした。

仕事のプロセスが事業・文化・職種・上司によって全く異なることを理解していなかったです。恐らく当時の僕は、周囲からすると"マナー違反"を犯す扱いづらい人だったと思います。

意思決定のプロトコルとは何か

意思決定のプロトコルとは何か。僕は4つの要素で捉えています。
この4つを捉えるとワークプロセスに自身を組み込むことができると実感しています。

1.情報素材

判断根拠となる情報素材について、求められる性質・量・比率がチームによって異なります。

僕が経験してきたチームでも、
・「極めて精緻な定量的データ」が求められる(データドリブン)
・「他社のベストプラクティス」が求められる(プラクティスドリブン)
・「定性的なインタビュー情報」が求められる(ストーリードリブン)

と様々なパターンが観測できました。

意思決定における情報素材を見誤ると「要らない情報を集めた非生産的な人」とみなされてつらい思いをします。

2.論理構造

情報素材を正しく捉えても、その組み立て方にも絶対にチームごとの特徴があります。

まず、1.ゼロベース思考・2.フレームワーク思考の2つに大きく別れます。正確には、1.ゼロベース思考を求める組織は「既存にない新しいフレームワーク」を都度発明することを求めます。

そして、フレームワーク思考の派閥にも、古典派とモダン派が存在します。

いずれにしても、過去の意思決定の論理の中にどんなフレームワークや構造が埋め込まれてきたかの傾向を捉えられると良いです。

3.出力形式

スライドなのかテキストなのか、それはどれぐらいのボリュームと粒度なのか、アウトプットの形式を捉える必要があります。

・ビジュアル VS テキスト
・複雑化 VS 単純化
・一方向 VS 双方向

出力形式が規格と異なると当然入力されません。
内容の良し悪し以前に、伝わらないリスクが大きいです。

4.合意経路

アウトプットを組み立てた上で、どこでどのように合意していくか、組織によって異なります。

・公式 VS 非公式
・トップダウン VS ボトムアップ
・前工程 VS 後工程

手順を誤ると受理されなかったり手戻りして大きなコストを伴います。

意思決定者を観察する

プロトコルの習得は多くの方が苦労しています。

それまで息を吸うように進められていたことが進まない状況は非常にストレスが大きいです。アンラーンせよと言われますが、それは知見をそっと仕舞うことではなく、体の使い方から呼吸の仕方まで変えることだからとても苦しいのです。

「こんなはずじゃなかった。DeNAでは・・・」
「こんなはずじゃなかった。リクルートでは・・・」
「こんなはずじゃなかった。メルカリでは・・・」

異動や転職をした際には、何度もこんな恨み節が頭をよぎります。

そこで少しでもプロトコルの習得が早い方にアドバイスをもらってきた結果、ハイパフォーマーは「意思決定者を観察すること」に時間を割いていると気づきました。

1.インプット

意思決定者が収集している情報に必ずアクセスをします。
薦められた本をすぐに購入して読む習慣がついてから、随分意思決定者との認識ズレがなくなりました。

2.ドラフト

意思決定者が作成しているアウトプットの途中段階、ドラフトをよく観察します。作成途中は建築物の骨組みのように重要な論理構造が荒々しくもシンプルに表現されていることが多いからです。

3.プレゼンテーション

意思決定者の過去作成資料とプレゼンテーションを観察します。漫然とインプットするのではなく、自身のアウトプットであればどのような出力をするのか想像しながら吸収します。

4.フィードバック

意思決定者が他者にフィードバックしているときはチャンスです。自分のプロトコルエラーを一個未然に解消することができます。

この4つを観察すると物事の意思決定のパターンが掴めるようになります。

理解してから、理解される

幸い、ナレッジワークは形式知化が異次元に進んでいます。

部門戦略の提出頻度・プロセス・フォーマットが既定されているし、意思決定・修正の会議体形式も明瞭です。また、マネジメントやドキュメンテーションなど属人化しやすいスキルについてハンドブックが用意されている。創業から積み重ねてきたアセットが競争力といえる水準にもなりつつあります。

それでも、新たな環境で泳ぎ方を覚えるのには、皆が四苦八苦しています。

「ナレッジワークは多様性を受け入れる力が弱いのではないか」

とある日、シニアマネージャーと飲みにいったときに耳にした言葉です。

マネジメントサイドの視点では、十分に受け留めなければいけない言葉と思います。無用な固定観念で多様性を蔑ろにしてしまうシーンは、どれほど上手く組織運営をしていても、存在する。

一方で、チャレンジャーサイドの視点では、「その多様性を既定のプロトコルで表現してみれば良いのでは」と考えます。

合理的に考えて会社は成長を志向しているし、あなたの知見・経験を最大限に活かしたほうが利になります。それがなされていないのであれば、ワークプロセスにエラーが起きています。

「理解してから、理解される」

プロトコルを習得して、あなたの多様性が存分に活かされることを心から応援しています。

スライド資料


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