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【エッセイ】:坊主頭の覚悟

昨年夏。
うつ病診断を受ける直前の
お盆休みのことです。


父の初盆ということもあり
実家に帰省しました。

帰省して必ず行くのが散髪。

床屋のマスターとは
自分が高校時代
床屋開店当時からの付き合い。
つまり床屋にとって
最古参の客になります。

マスターは話し上手で
何でも相談できる
兄貴分的な存在です。

そんな訳で散髪は帰省の楽しみの
ひとつなのです。

駅の商店街の中にある床屋には
マスター自慢の数千冊のマンガと
数百体の懐かしいフィギュアが
所蔵されています。

社会人になり
北の大地を離れて16年。
商店街も随分様変わりしてきました。

ちょっと寂しくなったかな。


今回
散髪に当たり
心に決めていたことが
ありました。

幼稚園以来
35年ぶりに坊主頭にすること。

この頃
片頭痛などの体調不良で
かなり病んでおり
先の見えない状況でした。

何か流れを変えたい。
といってもできることは限られます。

そこで思い立ちました。

坊主頭にしよう。

それで気分が変われば
いい方向に向かうかも
しれない。

「今日もいつもの髪型でいいかい?」

「いえ 丸坊主でお願いします」

「え 坊主!?」

マスターもびっくりです。
25年の付き合いで初めての注文ですから。

「さすがに剃るような坊主にすると
後で後悔するかもよ」

普段使わないという
長めのアタッチメントをバリカンにつけて
長めに頭を丸めてもらいました。

この作業中
今の状況を吐露する自分。
黙って聞いてくれた後
マスターから一言。

「帰っておいでよ」

この言葉 胸に沁みました。
嬉しかったです。
帰れるものなら すぐにでも帰りたい。

でも 今の自分には
奥さんがいます。
娘がいます。

どちらも北の大地に暮らした経験を持ちません。
(娘は「雪遊びしたい!を連呼しますが」)

冬の北海道は想像以上に大変です。

そして何より
生まれ育った環境から
二人を引き離すことになります。

それはやっぱりできない。

そうすると
今の環境で頑張るしかない。

迷いが刈られた髪となって
落ちていきました。

後頭部に円形脱毛があったのは
誤算でしたが
気持ちはスッキリしました。

おまけにマスターから
「楽させてもらったから」
と値引きまで。

元々常連価格で値引いてもらってるのに。
感謝しっぱなしでした。

帰省する場所は実家。
というよりこの街なんだ。
改めて思いました。


これで心機一転 もう少し頑張ろう。
その覚悟で臨んだ連休明け。

結果としてそれは甘い考えで
こころのエネルギーは
すでに尽きていました。

連休明けすぐからまた
体調不良を繰り返し
うつ病診断で休職となったのです。

ただ
坊主頭にしたことは
後悔していません。

むしろ
機会を見て
またやってみたいと思います。

今度は もっと前向きな理由で。


本記事を読んでいただき感謝申し上げます。

とことこてー




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