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国立ハンセン病資料館見学

先日国立ハンセン病資料館へ見学に行ってきました。
大人の社会科見学です。
予約は必要なくいつでも見れる施設です。

場所は東京都清瀬市にあります。
元々ハンセン病患者の療養所があった場所で、その跡地を利用して建てられたのだそうです。

そもそもハンセン病とはどういった病気なのか。
らい菌が主に皮膚と神経を犯す慢性の感染症です。らい菌の増殖速度は非常に遅く、潜伏期間は約5年ですが、20年もかかって症状が進む場合もあります。最初の兆候は皮膚にできる斑点で、患部の感覚喪失を伴います。なので以前はらい病と呼ばれていました。

感染経路もまだはっきりとはわかっておらず、治療を受けていない患者との頻繁な接触により、鼻や口からの飛沫を介し感染するものと考えられているそうですが、ハンセン病の感染力は弱くほとんどの人は自然の免疫があるのでハンセン病は「最も感染力の弱い感染病」とも言われているのだそうです。

ハンセン病は、らい菌が発見された1873年(明治6)以降にようやく本格的な研究・治療の対象となりましたが、治療法が確立されたのは1981年(昭和56)。以前は発病したら完治しない不治の病でしたが、現在では治療を受ければ治るのだそうです。

資料館は2階建ての建物で2階の3室を使用して常設展が行われていました。部屋はそれなりに広く順路案内もあるので順序通りに回っていきました。
パネルや写真、以前に療養所にいた人のインタビュー映像などが主です。
また小さいながらも図書館もありハンセン病に関する書籍を中心に置かれていました。
図書館なので閲覧や借りる事も可能ですが近隣でにでも住んでいないと返却ができませんね。

療養所は以前は日本各地にあったそうで、清瀬市にあったのもその中の1つです。「療養所」と言いつつも資料を読むと実質は強制隔離施設です。建設当時は都市から離れた辺鄙な場所を選んで建てられたそうですが、現在では最寄り駅の清瀬駅は池袋から電車で20分程度の場所です。

療養所の周囲は外から中が見えないように2m以上の高さの壁で囲われていたり、入所時には現金を全て没収され療養所内でしか使用できない通貨と交換させられたのだそうです。これは脱走を未然に防ぐためだったそうです。

治療法も確立されていない不治の病とされていたのですから、死ぬまで出られないのは明白です。それどころか死後も遺骨の引き取りを遺族に拒否されるケースもあり、死んでも出られなかったのだそうです。そのため療養所の敷地内には納骨堂もありました。

敷地内に残る納骨堂。

細菌による感染病と分かる以前は日本では遺伝的な病気とも考えられていたそうで、ハンセン病の発症が分かると家族までもが差別的な扱いを受け、住んでいる所にいられないほどだったそうです。
発症がわかると患者は強制的に療養所に送られたそうですが、発見のほとんどは周辺住民からの密告だったそうです。
こう言ったことから療養所に入所時に偽名を使う人もいて、偽名のため死後遺族を探せないケースも多かったのだそうです。

このような差別的な事が行われたのは発症による外見が大きかったのでしょう。発症初期には皮膚に白や赤褐色の斑紋が表れ、病状が進むと関節が曲がらなくなるなったり失明などしたそうです。

治療法が確立されていない時代は欧米などでも隔離政策が行われていたそうですが、欧米の隔離は緩いものであり病院への入院や自宅療養程度だったそうです。それに対して日本の場合は完全隔離で人権まで奪うという相当の差がありました。

ゆっくりと死が近づく完全隔離の中で入所者が少しでも気を紛らわす事ができたのは季節ごとのイベントや創作活動しかなかったのだそうです。
コロナ禍で閉塞感が高まる中エンタメなどは必要ないと言われることもありましたが、本来はそんなときにこそ必要なものだったのは身をもって感じました。

この不当な扱いを受けハンセン病患者が国を訴え裁判を起こし勝訴をしたのが2001年(平成13)、最高裁判所が謝罪を表明したのが2016年(平成28)首相が元患者にお詫びを表明したのは2019年(令和元)。それ以前にも何度も各所に訴えながらも一応の終結になったのは元号が令和に変わってからの事なので決して過去の事ではないのです。
らい予防法違憲国家賠償訴訟 - Wikipedia

法的には一旦の解決が図られましたが、かつての患者は親族からも差別的に扱われ行くあてもない元患者も多く、以前療養所だった施設に住み続ける人の高齢化も問題となっているのだそうです。

感情的なものによる臭いものには蓋的な差別と言うのは、悪い事に現在でもなくなる事はありません。これはコロナ禍で体験したので分かるかと思います。
仮にコロナの発症率がもっと低いものであったら、隔離や差別的な事はもっと酷い事になっていたのでしょう。

こうした施設はもっと知られるべきと思いますが館内は撮影禁止でした。
資料館なので分からなくはないのですが、少しでも広めるためには撮影可にした方がいいと思いました。
とにかく内容が重く、消化して書くまでに数日かかってしまうほどあれこれと考えさせられる施設でした。

余談ですが「はるかリセット」と言う漫画の8巻61話で1話まるまる使い国立ハンセン病資料館を詳しく紹介していますので、興味のある人はこちらを読むのもありです。
はるかリセットは作家である主人公の「天野はるか」が息抜きのためにあちこちに出かけると言う内容の漫画です。
息抜きなので楽しむことが主なのですが、この国立ハンセン病資料館を扱った回は本作の中でもかなりの異色回となっています。

ピッコマなら現在無料で読むことができます。
はるかリセット|無料漫画(まんが)ならピッコマ|野上武志 (piccoma.com)

あとブラックジャックの「えらばれたマスク」と言う回でハンセン病のことを扱った回もあります。

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