エッセイ【社会人4年目】

始発の特急。
冷え込む早朝、誤って乗り込んだ車内で揺られ、ふとこの電車はまるで私ではないかと気付く。
社会人になってからの私の人生というのは、まるで意図せず乗ってしまった冬の末明の特急電車のようだ。
知らない土地で、宛の知れないスピーディーな電車に揺られ、これはどこに行くのだろう、どこで降りればいいのだろうと、慌てて必死に手元のスマホでGoogleの窓を叩くも、乗り換えに失敗したらどうしよう、この電車の行く先よりもっとよく分からないところに向かってしまったら?
と、きりもみするばかりで動けない。
流れて行く駅をガラス越しに見ては、どうしようもない不安に駆られる。ここで降りるべきだったか?先程の駅が正しかったのか?
と、また焦る。
そのうちに、寒空の下、本来乗りたかった電車を探すより、このまま暖房の効いた車内に乗っていた方がよいのではないかと居直りはじめるのだ。
本当にまるで自分の人生のようだった。
あてもない旅を楽しむくらいの余裕が欲しい。
遠くにキラキラと輝く街が見えて、空腹感のある腹の底が余計にきゅうと萎んだ気がした。

今年で26歳になる。
電車の行く先は、まだ見えない。


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