エッセイ【尊厳を、考える。】

先日、友人二人と遊びに行く機会があった。
大学時代からの友人で、趣味も合い、社会人になってもずっと交流のある面子である。

この日もいつもと同じように楽しい時間を過ごしていたのだが、帰り道の電車で一人が、胃下垂で膨れた私の下腹部を触り「妊娠してるみたいだね」と揶揄った。

無遠慮な物言いだな、と苦笑いは浮かべたもののそこまで頓着することはなく、その場は有り体に言えば『流した』のだが、一日明けて、そういえば私も昔同じ事を他人に言ったことがあるなとふと思った。

自身が年長さんの頃、当時大好きだった従姉と叔母と私で一緒にお風呂に入った折に、私は少しふくよかな体型をした従姉を指して「妊婦さんみたい!」と宣った。その時の従姉の顔はよく覚えていない。だが、すぐさま叔母が私を厳しく叱った事は、印象深く覚えていた。

叔母は従姉の心を守ったのだ。

そう考えてはじめて、昨日の私の『流し』は果たして正解だったのかと、私の胸のもやもやが姿を見せ始めた。

果たして、私は私の心を守れているのだろうか。

怒った方がよかったのではないだろうか。

正直、社会人になってからというもの、自分の気持ちをないがしろにしている側面がある。
自尊心はもちろんすり減っていた。
本当の気持ちに蓋をすることが大人であるといい聞かせて来た顛末。それがここにあるような気がした。


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