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ノンタイトル


わたしの、この清くも正しくもない夏のことを綴っているノートをまとめて、マガジンというのを作った。マガジンのアイコンのようになっている画像は、彼と吉祥寺デートをしたときにムーミンカフェに立ち寄りタピオカの飲み物を飲んだ時にストローにおまけとしてくっついていたものである。

タピオカは、そこでは「ニョロニョロのたね」と呼ばれていた。普段ファンタジーやかわいいものに目もくれない彼が何故か選んだムーミンカフェ。そのファンシーな店内で彼は「ニョロニョロのたね」をもぐもぐ咀嚼しながらすこし神妙な顔で「これお腹のなかからニョロニョロ生えてくるのかな」と言った。突拍子もないそのセリフのおかげでわたしは危うく鼻からニョロニョロのたねを飛ばしそうになった。

その、小さな子がすいかの種を飲み込んで「お腹から芽が出るよ」と脅かされているような彼の表情がとても新鮮でかわいくて、よく覚えている。画像フォルダを漁っていたときにこの写真を見つけ、なつかしさで思わず表紙のようにしてしまった。

ひとりひとつ、ストローについていたニョロニョロ。

彼はまだ、持っているのだろうか。


・・・


見てほしい、とか、ただ吐き出したい、などと言うよりは、自分で自分の状況が面白くなってしまってそれを書き留めるために始めたこのノートだけれど、いいねやコメントをいただく度に、紙の日記帳に綴るならば必ず鍵付きのものを選ぶであろうこの「じぶんのかけら」をネットの海にぽんと投げていることを実感し、不思議な気持ちになる。


ひとはいつも、共感を求めているのだ。


「せつないですね」「胸が苦しくなりました」

と言われて初めて「ああ、これは切ないことなんだ」「この苦しさは自己愛だけではなかったんだ」と思えた。それがとても、有難かった。

エッセイであり日記であるこのわたしの最近のことが、どうか、小説のように形を変えて誰かに届いていてくれたらいいと思う。親友に相談するような、いや、親友にも言えないようなこと。逆に言えば親友に相談されたらちょっと反応に困ってしまって、話を聞くしかできないようなこと。

わたしは今まで、わたしに話しかけるように文章を書いていた。けれど、あなたの知り合いではないわたしは、わたしの知り合いではないあなたに向けて書いているのかもしれない。あなたに向けてだから、書けるのかもしれない。

広い海にぶん投げられて、ぷかぷかと浮いていたわたしのかけらがあなたに届き、そしてそれをそっと拾って読んでいただけたことを、とても嬉しく思います。



やっぱり彼のことを好きだと実感してしまって

わたしは今の状況を「戦い」だと思っているけれど

もしこの戦いに負けたとしても

ここで長ったらしく文章を書いて報告できると思えると

ちょっと、頑張れます。






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