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視覚障碍者の日常に関する色々な疑問に答えてみた #1 パソコンってどう使うの?

パラアスリート 兼 広告代理店 株式会社トーコンで広報を担当する日向賢です。

前回までは私の自己紹介をさせてもらいました。今回からは「生活編」。視覚障碍の私が、普段どのようなことに困りどんな工夫をしながら生活しているか、ということを様々なテーマで紹介していきたいと思います。

まずは「パソコンとスマホ」。前回の投稿で私が社会人としてどのような仕事をしてきたかを紹介しましたが、今回はそのつながりで、普段どのように私がパソコンを使って仕事をしているのかといったことと、今や生活にも欠かせなくなったスマートフォンをどのように使っているかについて紹介します!

そもそも視覚障碍といっても・・

私は全盲で画面に表示されている文字などが全く見えませんので、今回は全盲の私がどのようにパソコンやスマートフォンを使っているかという紹介になります。
視覚障碍者の中にはロービジョンといって目が見えにくい人たちもいて、その人たちは画面を拡大したりして普段パソコンやスマートフォンを使っていますが、今回はそこには触れません。
(ロービジョンの人たちにも私と同じ方法でパソコンやスマートフォンを使っている人たちもいます)
また今回紹介する方法のほかに点字を表示してくれる機械をパソコンに接続してパソコン操作を行う方法もありますが今回は割愛します。

全盲の僕のパソコンの使い方

私のように全盲だったり画面に表示されている文字を自力で読むことが難しい人は、パソコンに画面読み上げソフト(スクリーンリーダー)というソフトをインストールしてパソコンを使っています。
またマウスはマウスポインターが見えないので使いません。
基本的にはすべての操作をキーボードのみで利用します。
パソコンにはキーボードで利用できるショートカットが実はたくさんあり、それらのショートカットを駆使するとかなりの操作をキーボードのみで利用することができます。
文字入力はブラインドタッチで行うのでキーボードに表示されている印字が見えなくても問題ありません。
言葉通りのブラインドタッチでパソコンを使っています(笑)

パソコンにスクリーンリーダーを入れることで画面に表示されている文字を合成音声が読み上げてくれます。
このソフトはアプリケーションの選択や、アプリケーションの操作画面に表示されている文字も読み上げてくれます。
また自分で文字を入力した際には入力した文字のフィードバックがあるのでそのフィードバックを頼りに文字の入力も行えます。
今もその機能を使ってこの文章を書いています。

日本語にはひらがなや漢字、カタカナなどいろいろな文字の種類がありますが、その文字を識別することもできます。
漢字についてはその漢字がどのような漢字であるか説明をしてくれます。

スクリーンリーダーとは?

例えば私の名前(日向賢)を入力した際は、

日向(にちようびのにち、むくのこう)賢(かしこいのけん)

といったように読み上げられます。
この漢字の説明の部分はスクリーンリーダーの種類によっても異なるので、上記は一例です。

スクリーンリーダーの種類についてですが、まずWindowsにもMacにもOSの標準機能としてスクリーンリーダーの機能が実装されています。Windowsではナレーター、MacではVoiceOverと呼ばれています。
MacのVoiceOverではほとんどの操作をVoiceOverのみで行うことができますが、日本語の場合Windowsに実装されているナレーターという機能は最低限の読み上げ機能しかなく、普段パソコンを使うことに利用することは現時点では難しいです。
MacのVoiceOverは日本ではまだ利用者も少なく少しマニアックなので今回は割愛します。

Windowsで利用できるスクリーンリーダーには、私が現在利用しているJAWS for Windows※注1というものや、NVDA(Non Visual Desktop Access)※注2という無料(オープンソース GPLv2)のもの、PC-Talker※注3などがあります。
この中ではPC-Talkerのみ日本で開発されたもので、JAWSとNVDAは世界的に利用されているものが日本語版としてリリースされています。

これらのスクリーンリーダで何が違うかというと、読み上げに対応しているアプリケーションの種類、画面の読み上げる範囲、アプリケーションを操作したときの読み方、画面を読ませている合成音声の種類が異なります。
上記以外にも様々な部分が異なりますし、各スクリーンリーダーごとに強みも違います。
各スクリーンリーダーのHPを最後の脚注に記載しておきますので興味を持たれた方はご参照ください。各スクリーンリーダーの特徴などをより詳しく知ることができると思います。

基本的には読み上げに対応しているアプリケーションが多かったり、読み上げる範囲がより細かなところまで対応しているほうが使い勝手はよいのですが、もとめている画面読み上げのレベルであったり、操作性、価格の違いなどでそれぞれのユーザが使い分けています。
基本的なWebページの閲覧やメールの送受信、文章ファイルの作成などができれば十分であるのに価格の高いスクリーンリーダーをわざわざ利用する必要はありません。
逆にプログラミングやサーバー関連の管理ツールを使う、複雑な表計算を行う必要があるなどの要件を満たすには価格が高くても読み上げ能力の高いスクリーンリーダーを使う必要があります。

私のように複数のスクリーンリーダーをパソコンにインストールしておいて、用途に応じて使い分けている人もいます。
私は上記3種類のうちJAWSとNVDAを利用しています。

ちなみに価格についてですが、NVDAはオープンソースであるため無料(無料ですが読み上げ機能にはすぐれています、、、なぜ?となりそうですがちょっと特殊なソフトなので詳細についてはHPをご参照ください)、PC-Talkerは60000円、JAWSは156,200円と大きな違いがあります。

それから何度か書いている合成音声とは何か?ですが、わかりやすくいえばカーナビで道順を読み上げているもの、駅で電車が遅延した際などにホームで放送されている駅員さんではない機械っぽい声と同じようなものと思ってください。
スクリーンリーダーによっては合成音声の種類を選ぶこともできるのですが、文字を入力したときのレスポンスや文章を早く読み上げるには音質がよくないロボットのような声質のほうが優れていたりします。(駅で電車遅延の放送をしているほうに近い声質です)
これは好みなので音質の良い合成音声を選ぶ人ももちろんいますが、私は効率重視で音質はいまいちでもレスポンスのよい合成音声を利用しています。

できること、できないこと

ここまでスクリーンリーダについて簡単に紹介してきましたが、実はスクリーンリーダを入れればすべてのパソコン操作が行えるわけではありませんし、アプリケーションが使えるわけでもありません。

Windowsの操作やWordやExcelといったOffice関連のアプリケーションを使った文章作成や表計算、プレゼンテーション資料の作成、WebブラウザによるWebページの閲覧、PDFファイルの閲覧、ZOOMやMicrosoft Teamsでのオンライン会議といった基本的なことはできます。
それに加えてプログラミングを行う際に使用する統合開発環境の利用や、サーバー関連アプリケーションの操作といったことも読み上げ機能にすぐれたスクリーンリーダーを利用すれば行うことができます。

ただアクセシビリティに問題のあるWebページなどはうまく読み上げることができず内容を把握することができませんし、画像や図といったものを解釈することはできません(画像に説明がついていればなんの画像であるかはわかりますがどんな画像かは結局わかりません)
また私の社会人としての歩みについて書いた前の記事で書いたようにスクリーンリーダーと相性の良くないアプリケーションであったり、読み上げに対応していないアプリケーションなども多くあります。
なのでアクセシビリティに考慮したWebページを作ってもらう、画像や図を挿入する際はその画像の注釈であったり図ではなく票の形で数値としても参照できるようにしてもらう、などの配慮をしてもらう必要があります。

スクリーンリーダーによるパソコン操作を覚えたり工夫することで基本的なパソコン操作は問題なくできるが、「なんでもできるわけではない」と思っていただければよいと思います。

最後に宣伝も。私がコンテンツ開発にも携わった、オンライン社員研修<autonomy>もよろしくお願いいたします。

書いてみたら思った以上にボリュームがある記事になってしまったので・・・スマートフォンの利用については次回にしたいと思います!

※注1 http://www.extra.co.jp/jaws/
※注2 https://www.nvda.jp/
※注3 https://aok-net.com/screenreader/
スクリーンリーダーを使ってパソコンを利用するデモをYoutubeに挙げている方がいたので参照いただくとよりイメージしやすいと思います。
https://youtu.be/yxXG8ovyvJ8

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