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視覚障碍者の日常に関する色々な疑問に答えてみた #2 スマホは使えるの?

パラアスリート 兼 広告代理店 株式会社トーコンで広報を担当する日向賢です。

視覚障碍の私が、普段どのようなことに困りどんな工夫をしながら生活しているか、ということを様々なテーマで紹介する「生活編」第2段です。

前回の投稿で視覚障碍者のパソコン利用について紹介しました。

今回は、視覚障碍者の人たちがどのようにスマートフォンを利用しているか紹介します。前回同様画面を見ることのできない私が、普段どのようにスマートフォンを利用しているかの紹介になります。
※ロービジョンの人たちは画面を拡大するなどしてスマートフォンを利用している人もいますが、今回はこちらについては割愛させてください。

全盲の僕のスマホの使い方

パソコン同様スマートフォンにも最初から画面を読み上げる機能が実装されています。

設定方法はスマートフォンの種類によって若干異なりますが、基本的にはアクセシビリティの設定の中で画面読み上げの機能をONにすることで画面を読ませることができます。

この機能はiPhone(iPad含む)、Androidどちらにも実装されています。
iOSではVoiceOver、AndroidではTalkBack(Voice Assistantなどと呼ばれることもあります)という名称になります。

iOSとAndroidでできることは基本的には変わらないのですが、読み上げの癖のようなものであったり、操作方法が異なります。
パソコンの時同様iOSについては文字変換などを含めたすべての操作がVoiceOverの機能で完結しますが、Androidについては文字変換の読み上げ能力があまり優れていないこと、文字入力を行うソフトウェアキーボードの読み上げが完全でないことなどの理由でTalkBack環境で文字入力を行うことを補助してくれるアプリを別途インストールして利用している人が多いです。

iOSの特徴である統一した操作性の部分がスクリーンリーダー環境であっても強く反映されています。
逆にAndroidの特徴である様々なカスタマイズができたりアプリケーションを別途インストールすることで自分好みのアプリをより柔軟に使えるという点がスクリーンリーダー環境であっても強く表れています。

実際、使い勝手はどうなのか?

どちらが使いやすいと感じるかは人それぞれなのでどちらがすぐれているという話ではありません。

シェアについてはやはりiPhoneを利用している人のほうが多い印象です。
単純にiPhone人気が高いということもあるとは思いますが、VoiceOverはiphone3Gsから実装され、世の中にスマートフォンが普及し始めたころから利用することができました。
TalkBackについても実装されたのは比較的前になるのですが、当初は安定性に難がありメインのスマートフォンとして利用するのは厳しい印象がありました。
またTalkBackについてはその機能をONにすればいいだけでなく、別途IMEをインストールしたり場合によってはサードパーティ製の合成音声をインストールする必要があり、スマートフォンを利用するのにある程度の知識が必要です。
様々なメーカーから端末が発売されており、端末ごとに操作方法が若干異なるのでどの端末を買えばいいかわかりにくいというのもあるかもしれません。

Androidについては少し特殊なものとして、ドコモから発売されているらくらくスマートフォンという端末があり、この端末については最初から合成音声やソフトウェアキーボードといったものがすべて設定された状態で発売されています。そのため画面読み上げ機能をONにするだけで利用することができます。
通常のAndroidスマートフォンよりもこちらのらくらくスマートフォンを利用しているユーザーのほうが数としては多いかもしれません。
ただ私は使ったことがなく操作感などがわからないので詳細は割愛させてください。

さて、実際の使い方は?

さて、少し概要が長くなってしまいましたが、実際にどのように利用しているか簡単に解説します。
タッチパネルのスマートフォンを画面を読み上げるとはいえ、どのように使うかイメージがつかないと思います。

私もiPhoneに画面読み上げ機能が実装されるというニュースを昔聞いたときはどうやって使うんだよ?と思いました。

なぜなら画面のどこに何が表示されているかわからないのにタッチパネルで操作するものに触ったら意図せずアプリが軌道してしまったり、変な文字が大量に入力されてしまうと思ったからです。
そもそも画面が見えないとキーボードのどこをタップしているかわからないわけですから、仮にタッチした瞬間に読み上げられたとしても読み上げられた時にはすでに触ってしまった文字が入力されてしまった後です。

では実際どうなっているかというと、最初に画面に触った時には触った場所にあるアイコンであったりキーボードの文字であったり、Webページやメールの文章が読み上げられます。
この時点ではそこにマウスカーソルがあるような状態でアプリは起動しません。
そこからスワイプ動作などを行うと一つずつヨコにカーソルが移動します。(隣のアイコンや文字などが読み上げられます)

この動作を繰り返して自分が実行したいアプリのところまでカーソルをスワイプ操作で動かして、そこでダブルタップするとアプリが起動します。
通常左から順に右にカーソルが移動します。
ただ順番に辿っていると時間がかかるので、この辺りに起動したいアプリがあったなと思う場所をタップしてその周辺を探ったり、画面をなでるようにタッチすることで触った順に触った部分が読み上げられるので自分が探しているアイコンをより素早く探すことができます。
Webページについてはスクロールをすることもできるので、ある程度場所を推測して文章を読み上げさせることもあります。
文字入力についてはソフトウェアキーボードの上をタッチ操作で移動し、入力したい文字のところでダブルタップすることで文字を入力します。
上の説明だとQWERTY配列による入力が一番イメージしやすいかと思いますが、フリップ入力で文字を入力することもできます。
漢字の変換や予測変換の変換候補についてもスワイプ動作とダブルタップの操作で行うことができます。
漢字変換時の漢字の説明についてはパソコンの利用方法についての記事で書いたものとあまり変わりません。

Webページの閲覧など文章の読み上げの際などについてはジェスチャー操作を行うことで読み上げ方を変えることもできます。

例えばWebページについては見出しごとにとばしたりリンクのみ読み上げたりすることができるのである程度は効率的にWebページの閲覧を行うことができます。
文章ファイルの閲覧の際もスワイプ動作をした際に文字単位で読み上げるのか、行ごとによみあげるのかといったことを変更することができます。
同様にコピーや切り取り、ペーストといった処理も行えます。
その他にも様々なショートカットが存在します。

ちなみに先にも書いた通り上記の説明は操作方法であったり読み上げられ方に違いはありますが、基本的にiOSとAndroidで共通したものになります。

視覚障碍者が、スマホで何ができるか?

最後にスマートフォンでどのようなことができるのかについて解説します。

電話やメールの送受信、Webページの閲覧、LINEなどが利用できるのはもちろん、画面読み上げに対応しているアプリであれば自分でインストールしたアプリであっても利用することができます。
FacebookやTwitterなどのSNS系はもちろん、Amazonや楽天市場などのショッピングアプリ、PayPayなどの決済アプリ、カメラも利用可能です。
zoomやMicrosoft Teamsなどのオンラインコミュニケーション系のアプリについては個人的にはパソコンで使うよりスマートフォンで利用するほうが利用しやすいです。
なので最近はあえてスマートフォンやiPadで作業をするといったこともあります。このあたりの使い分けは健常者の方と変わらないと思います。
カメラについてはアプリにもよりますが被写体がどのあたりに写っているか音声で説明してくれる場合もあります。
またGoogleレンズなどを使うとカメラで写した文字を読み上げることもできます。
すべてではありませんがFacebookに投稿された画像がAI機能で何の画像化読み上げてくれたりもします。(注1)
Googleレンズのように生活補助として利用できるアプリは結構あって、カメラで撮影したものがなんであるか説明してくれるアプリやカメラに移しているものの色を教えてくれるアプリ、部屋が明るいかくらいか教えてくれるアプリなどいろいろあります。

通常のアプリのほかにこのような生活を補助してくれるアプリをインストールして利用している人もたくさんいます。

一人暮らしであったりふとしたときに何かを見てもらいたいというシーンは実際たくさんあり、すべてを解決できないまでもアプリでなんとかなったというケースは結構あります。

(注1)夜遅い時間にどれがしょうゆのビンかわからなくなったり福野色を確認したいだけで人を家に読んだりビデオカメラで誰かに見てもらうのはちょっと気が引けるということは多いのでこれだけでもできるようになると助かります・・

生活を便利にするアプリなどについては後日別投稿で詳細に解説してみようと思います。

ただパソコンの操作方法の記事でも書いたように、スマートフォンのアプリにも画面読み上げの機能と相性の悪いアプリであったり利用できないアプリもたくさんあります。

今回は視覚障碍者のスマートフォン利用について簡単に解説させていただきましたが、実際どんな感じなの?という疑問はのこったままかもしれません。

iPhoneをお使いの方はsiriにVoiceOverオンとはなしかけてみると私たちが普段利用している感じを実際に体験していただけます。
どうやって操作していいかわからなくなったらSiriにVoiceOverをOFFにしてと話しかければ普段通りに戻ります。
興味のある方は試してみてください。

前回と今回で視覚障碍者のパソコンとスマートフォンの利用方法を解説しました。
ここに書いたことは一例で、細かなことを説明しだすときりがありません。
パソコンやスマートフォンをうまく活用できると仕事の幅を広げるだけでなく、生活をより便利にすることができます。

また、最後に宣伝も。私がコンテンツ開発にも携わった、オンライン社員研修<autonomy>もよろしくお願いいたします。

今回は概要的な説明が長くなってしまったので、実際の仕事や生活でどのように活用しているかについては引き続き別の記事で紹介していきたいと思います。

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