読書メモ #5(『日本人と日本文化』)

司馬遼太郎とドナルド・キーンの対談集。日本文化に関する気品高いやり取りが、読んでいて気持ち良い。深堀すると面白そうなトピックスを何点かメモしたい。

日本人の対外意識

日本でできた初めての寺は四天王寺だったが、これは外国人(当時は中国人)向けに接待するためにつくられた。その心は、日本にも立派な文化があると対外的に発信する狙いもあったのではないかと説かれている。この日本の文化は、長期的に学んでいきたいテーマの一つである。

外国文化の受け入れ方

中国文学が流行った時代の中でも『土佐日記』に代表される日本文学が残った理由を日本の宮廷にあると考察している。当時の宮廷は女性の地位が高く、その女性は原則として中国語を勉強しなかったという。男性から女性に物事を伝えたいときは漢文ではない手段でものを伝えなければならず、大和ことばでやり取りされていた。

文学のなかでも日本人の繊細な感情を表現するのに漢文よりも大和ことばのほうが適していたことから、日本人を「たおやめぶり」の民族と説く。一方の「ますらおぶり」は中国から学んだと考察されている。

ところで、「ますらおぶり」の代表格として、芭蕉が紹介されているので心に残った部分をメモに残す。以下は有名な「おくのほそ道」の一節である。

むかしよりよみ置る歌枕、おほく語伝ふといへども、山崩れ川流て道あらたまり、石は埋て土にかくれ、木は老て若木にかはれば、時移り、代変じて、その跡たしかならぬ事のみを、ここに至りて疑なき千歳の記念、今眼前に古人の心を閲す。行脚の一徳、存命の悦び、羈旅の労を忘れて、泪も落つるばかりなり。
出典:芭蕉『おくのほそ道』壺の碑

山は崩れることがあり、川も埋もれることがある。草木も枯れていく。しかし唯一人間の詞は残る――。美しい一説である。

ここは、今後深堀したいという意をこめて、メモにとどめる。

東山文化

ここも、今後深堀したいという意をこめて、メモにとどめる。


その他数多くの対談から日本文化や日本人らしさが考察されているが、日本国民が残る限り、何らかのかたちで日本らしい特徴は現れていくと結ばれている。合わせて、意識して特徴を出そうと思ったらかえって不自然なものになるだろうとも言っている。歴史に学ぶことは大切だが、日本人らしさを意識するのではなく、引き出しを持ちつつも自らの判断尺度をもって行動していきたいものである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?