自分を大型犬だと勘違いした小型犬のような、車の話。

 今回は、ちょっと力の抜けた話を。

 昨夜若い女子の友人と蛍を見に行った。その友人が、わたしとは初対面の若い男子を連れてきたのであるが、帰り道に、ふと車の話となった。その若い女子の友人は車のトラブルが多発するタイプなのであるが、ある時通りすがりの若い整備士に助けられたばっかりに、今度はストーカーじみたトラブルに巻き込まれる羽目になったのである。その整備士の車に乗せられた時に話題が車の話ばっかりで辛かった、と彼女は述懐したのであるが、それを聞いていた若い男子は、「でも、俺もあんまり車語りするタイプの男子は苦手っすよ」と言った。へえ、今時の若い男子もそういう風に思うんだ、と面白く感じたのだが、女子の友人がわたしに話を振ったために、車屋の夫を持った経験を多少語る羽目になった。わたしは「車の話をされるのは構わないが、披露される知識が半端だと、あー、でも、自分でいじれない人なんでしょ?という目で見てしまう」と述べたのである。女子の友人は、「車の知識の基準レベルが、いじれるかいじれないかってところにあるのもなー」と笑い出したが、そこで彼女の車がわたしの家の前に着いたので、さよならすることとなった。

 話が尻切れトンボになってしまった感があるので、本当はもう少し補足したかった。勿論わたしは自分で車をいじれないので、他人をバカにする権利はないのである。ただですな、元夫が面白い車を仕入れてきては、自分でエンジンをいじったり足回りをいじったりホイールを塗装してみたりリップスポイラーをつけてみたり、そしてしばらく乗った後、それらすべてを付加価値として転売したりするのを見ていると、(あー、車で遊べるのは、自分でいじれる人だけなんだな)ということが、実感として分かるのである。自分でいじれない人がヘンに車にこだわっていい車とか速い車とか面白い車とかを所有すると何が起こるかというと、結局車屋に金が落ちるだけなのである。勿論、そういうところに金を注ぎ込めるのがステータス、という意見も分からないではないが、どのくらいを利益として上乗せさせられているかも分からないのに嬉々として搾取されている金持ちに、尊敬の目は向けられない。特に、実用重視の軽自動車とかより、高級車とか外車とかのケースで、多々そういうことは、起こる。

 だから、車は自分の身の丈に合ったものに乗った方がいいと思うし、自分でサスペンションの交換もできないのに、「車高がどうこう」とか「足回りが固いの柔らかいの」とか語り出す人については、(ちょっとな……)と思う。

 あと、車をいじるのいじらないのじゃなくて、走りとかドライビングテクニック的な文脈で、「あの車がさぁ……」みたいな語りをする人もいますよね。そういうのを聞く時も、若干(その車、乗ったことあんのかよ)とは内心思っている。

 トヨタのセリカという車をご存知だろうか。簡単に言うと、公道を走るスポーツカー、みたいな感じなのだが、じゃあ走り屋が乗る車か、といえばそうでもない。なんか、そういうヤンキー臭みたいなのは抜いた車だと思う。ただ、速いし、ちょっと走ることにこだわりがある系。この理解に間違いがあったら、ご指摘ください。そのセリカをですね、わたしがまだペーパードライバーから脱しようとしてペーパー教習に自動車学校に通っていた頃に、元夫が持ってきたことがある。わたしの、MT車の練習用に。

 その頃はセリカがなんであるかとか全く知らないから、やたら運転席が地べたに近くて乗りにくい車だな、くらいにしか思っていなかったのだが、今になって思い返すと、元夫、バカじゃなかろうか、と思う。MT車の運転が覚束ないペーパードライバーの練習用に乗せる車じゃないですよ。一体何を考えていたんだろう。それを、郊外のキャンプ場の無人の駐車場で、15km/hくらいの速度で、エンストしながら端から端まで行ったり来たりした挙句に、ミッションの調整の具合がおかしくなる、と言われて取り上げられたのだが、だってあれ、大型バイクの加速に負けない速度を出す車ですよ。そんなのを預けられても、ねえ。

 と、そのようなエピソードを、職場の若い男の子に話したことがあるのだが、彼は「セリカ!?いいなあ、俺、あれに憧れてて、欲しかったんですよ!」と目を輝かせて語った。その彼が、高速道路も走ったことがなかった、と知った時の衝撃。ごめん、高速で100km/hくらいは出してから、セリカに憧れようよ!

 とまあ、ここまで偉そうなことを語ってきたが、わたしはいまだにMT車は半クラッチでしか動かせないし、ミニバンクラスの大きい車は運転できないし、6回くらいは自損事故起こしたし、ボンネットは開けられるけどもセルフでガソリンは入れられなくて、オイル交換もタイヤ交換もお店任せだ。わたしは身長が155cmしかないのだが、以前好きだった相手が背が高かったので、一緒にいると、ついついその背の高さが自分の基準になってしまったりした。具体的に言うと、自分くらいの背の高さの女の子を見ると、「ちっちゃいなー!」みたいな感想が出てくるのだ。そこでその人には、「小型犬が大型犬と一緒にいると、自分も大型犬だと勘違いしちゃうような、そんなアレ」と言われたのだが、多分、車についても、「そんなアレ」が起きているのだと思う。よくない。やはり自分が自信を持って語れるのは自分ができることだけだと思うので、まあ、自戒も込めたお話として、この稿を終わろうと思う。

 そう、車関係の書類仕事については、そこそこ自信があるのだが、それでも、自分で陸運局や軽自動車協会に行って手続きをしたことはなかった。書類を揃えて、元夫なりスタッフなり代行組合に渡すまでで。でも今度、彼氏と一緒に陸運局に行くので、そのことについては、自力でコンプリートできるようになるかな。やったね、スキルアップ!

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