復縁は難しいというけれどわたしは小説とよりを戻した。

(もう小説は卒業したな…)と思っていたのにも関わらずまた書き始めて、新しいサイトを立ち上げたりnoteに文章を書き出したりした。

 なので、この再スタートに当たって、昔の菊池とおこをご存知の方にも、初めて知るわ、という方にも、そこらへんの経緯をお伝えしたいなと思う。

 20代の半ばに小説家になりたいと思ってしまい、それから十数年、格闘した。

 書いたり、サイトを作ったり、個人誌を出したり、文学賞に応募したり。

 小説を書くのが楽しい、すき!というだけならまだしも、小説家になりたい、という欲が芽生えてしまったので、とにかく若いわたしの自意識はめんどくさかった。

 小説を書くことと、まだ何者にもなれていない若い女子の自己実現欲や他者承認欲が複雑に絡み合い、かといってリアルな人生経験もたいして積んでいないので書くものはどんどん痩せ細り薄くなっていって、しまいには、付き合っていても楽しくないし苦しいのにどうしても別れられない男のように、泥沼の関係性に陥っていた。

 そんなわたしと小説が別れるきっかけとなったのが、結婚だった。

 結婚したら人生と生活が一変してしまって、2年間の間、小説を書くことはおろか読むことも一切しなかった。別のことで、忙しかった。

 わたしは結婚する時、段ボール箱に数十個におよぶ本を持って元夫の家に引っ越していったのだが、その段ボール箱は彼の家のガレージに積んだまま一度も開けることなく、さて2年後にわたしは離婚したのだが、その一度も開封することのなかった段ボール箱は、そのままわたしの実家に戻ってきた。

 そこで気づいたことは、「小説を書かなくても読まなくても、人生なんともなかったな!」ということだった。

 小説は、別にわたしの自己実現になんの影響も与えなかったのだった。

 多分わたしは、小説を書くことに忙しかったのではなくて、小説を書くことによって自分が何者かになったり称賛されるに値する存在になったりするという夢をみることに忙しかったのだと思う。

 依存を断ち切るには、依存源から距離を置くに限る訳なのだった。

 わたしはほんとに清々しい気分になって、本を図書館に差し上げたり、バカみたいにファイルしてあった草稿を全部ゴミに出したりした。ものすごくさっぱりした。

 わたしの実感としては「結婚は人生最大の断捨離!」なので、捨てるに捨てられないものがたくさんある方には、結婚をお勧めしたい。ちなみに、「離婚は人生最大の厄払い!」です。

 そしてわたしは心も軽く新しい生活をスタートさせ(もちろん離婚してもごたごたはあったしそれはものすごく消耗する厄介ごとだったしいまだに全部解決はしていないのだが)、「フィクションより実生活の方が面白いわ」と新しい発見をし、もう小説は卒業したな!と思った。

 でも、ブログは始めた。

 自分の昔書いた本を読みだした。

 ちょっとむずむずしてきた。

 ちょっと書いてみた。

 あんまり面白いものにならなくて、放置してみた。

 まあ、別に書けたら書けたでいいし、書けなくても世界が終わる訳でもなかった。

 ある日、書き出しの一文を突然思いついた。

 そうしたら、あっという間にひとつの小説が出来上がった。

 これが、自分にとっては復帰第一作となる(別にプロでもないので引退とか復帰とか言い出すのも恥ずかしい話だけど、まあ、感覚としてはこれをきっかけにまた小説始めよう、という気になったので、一応自分の中では復帰作)「ピュアでハッピーな恋愛小説だけど抜けてど助平」な小説だった。

 驚いたことに、「付き合っていても楽しくないし苦しいのにどうしても別れられない男」のようだった小説は、いったん依存関係を脱してみると、「ものすごくフェアに付き合える面白い男」に変化していたのだった。

 こういう感じで、わたしは小説とよりを戻したのです。

 小説との付き合い方は書く人の数だけ様々あると思うが、わたしはこれからは小説に対しては、「自分の存在意義を全体重かけて載せてくる重い女」のようなふるまいはやめようと思う。win-winで、楽しく付き合いたい。

 そしてこうして小説を再開するにあたり、結局3年間くらいしか離れていなかったんだ、ということに気づいて、少し驚いたのだった。

 

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