やさしすぎて、甘すぎる。多分。

 最近どうなのかは聞かないが、ちょっと前、彼氏の娘さんがイヌを飼いたがっていた。でも、ママが駄目だと言うのだそうだ。同居家族は皆、反対らしい。

 娘さんはなかなかしぶとく、「彼女、もうイヌは諦めた?」と訊いても「Noooo」という返事が返ってくることが、半年くらい続いた。

 ところが今年の初め、彼氏が「彼女のために僕が家でイヌを飼おうかと思ってる」と言い出したので驚いた。どう考えてもお嬢ちゃんが諦める一択だろ、と思ったが、「彼女が飼いたいなら、彼女が世話をすべきだと思うわ」と言うに留めた。

 それ以来、彼氏がイヌを飼い出す気配はないが、もうひとつ驚きの事実が判明した。彼氏、そういった類のことを、既にやってた。

 彼氏は自分のお店でネコを一匹飼っている。息子さんの友達の家で生まれたコネコを引き取ったと言っていたので、貰い手として頼まれたのかと思っていた。ところがそれはもともと息子さんが貰い受けた子で、アパートで飼えなかったために、「パパ、飼ってちょうだい」という経緯で、彼氏の元に来たのだというのだ。

 その話を聞いたら、彼氏が娘さんのためにイヌを飼おうかと思いだすのもむべなるかな、と思った。もういっそのこと彼氏が可愛くなってしまって、「あなたって、子どもにスウィートなのね」と言うと(spoil まで言っちゃうとひどいかなと思ったので)、「知ってる。みんなそう言う」との返事。そうか。みんなそう言うか。

 おそらく彼氏は、子どもにだけじゃなくて誰に対してもスウィートなのだと思う。彼氏が怒ったところを見たことがないし、いつも穏やかだ。日本人みたいに他人の考えを忖度して言いたいことを腹の中にしまう、ようなことはしないけど、人は傷つけない。いつもファニーなジョークばかり言っているけど、「ジョークでみんなにリラックスしてもらいたいから」と言っていた。

 第一、最初の奥さんに乞われて、仕事も辞めて家も手放して、アメリカから日本くんだりまで来てしまうあたりで既に、おそろしくスウィートではないだろうか。とはいえ、彼氏も、日本に来るといったって考えてたのはせいぜい東京くらいで、まさかこんな田舎に来るとは思ってなかった、と言ってたけど(それでも彼氏の住んでいる街はわたしの町に比べれば全然大都市で、うちの町に来たら多分頭を抱える)。

 そうすると今度は、そうやって奥さんの希望を叶えて日本くんだりまで来たのに、なんで離婚しちゃったの?という疑問が生じるが、おそらく推測するに、その、やさしすぎて甘すぎるところが原因なのだと思う。多分、受け入れて、受け入れて、受け入れて、受け入れて、とうとう最後に、全部ひっくり返してしまうんだろう。

 実を申せば、わたしにもそういうところは、ある。自分の男には甘いたちで、大抵のことは許せてしまう。自分の男割引と呼んでいる。許せなくなった時、その時はきっぱり、切り捨てる。

 できることなら彼氏とは、末永くお付き合いしていきたいので、なるべくならその100か0かみたいな極論を行かないで、80と90を推移するような高め安定の愛情関係を築けるように、お勉強していきたいと思っている。あと、彼氏から最後に放り投げられないように、モニタリングとメンテナンスもしっかりと。

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