スキンシップと愛情表現は過剰すぎるほどにして欲しい。

 彼氏が外国人である。離婚後、わりとすぐに付き合い始めた。

 彼氏のスキンシップと愛情表現は、おそろしく潤沢である。だいたい、付き合い始める前、初めて会った時すでに、別れ際にハグしてキスしようとした、そんな人であった。

 付き合いだしてからもやっぱり、ハグとキスは普通に挨拶だし、会話中に腕に触ったり脚に触ったりハイタッチしたりするし、しょっちゅう missing you だのハートマークだの送ってくるし、ご飯何食べたい?と訊くと you、と答えるし、彼氏の家に泊まれば、ベッドがダブルベッドなので一緒に寝ることになるのだが、顔を合わせて寝ても背中を向けて寝ても、これでもかと言わんばかりに密着してくる。

 それに違和感が、とか、ちょっと苦手、とかは全くなく、というかむしろ大好きだ。あらためて思い返してみれば昔から好きだったので、ちゃんとそういう相手と巡り合うんだなあと、感心している。

 元夫も多分それほどスキンシップが嫌いだったとは思わないしそれなりに助平だったと思うが、「与え、与え合う」感に欠けていた。

 わたしが無理矢理習慣にしたものに「朝、仕事に出かける前のチューと、夜、寝る前のチュー」(どうせ同じ場所に仕事にでかけて、どうせ同じ場所で寝るのに!)というものがあって、元夫もまんざらでもない感じに「ほら、チューするんだべ」くらいの態度を取るようになったが、なんというか、「妻がしたがってしょうがないからしてやってる俺」みたいな悦に入り方が、満たされなかったんだと思う。してもしても、し足りなかった。

 彼氏と付き合うようになってからは、本当に空気のようにキスする。あの「わざわざあらためてしてやる」感じって、なんだったんだろうと思う。

 愛情は、ケチるから飢えるのだと思う。あの、求めても求めても足りない感じ。飲み干すそばから乾く感じ。彼氏に潤沢に与えられて、初めて貪る必要がないことを知った。

 彼氏に「前の旦那さんてどんな人?」と訊かれた時、ちょっと考えて「……loveにケチ」と英語と日本語のちゃんぽんで答えた。通じるかなあと思ったらちゃんと通じて、彼氏は爆笑してた。

 ただしこれは、わたしも彼氏も溢れるスキンシップと愛情表現が好きでお互い需要と供給がマッチしているから問題がない訳で、独身男子や女子の中には、そういうコミュニケーションが苦手な人も少なからずいる(わたし調べ)。そういう人は、無理をしない方がいい。

 飲んでいる時に、若い女子の友人に「なんかとおこさんたちのそういう関係もいいなあって思えてきた」と言われたので、「でもそれって、こういうコミュニケーションだよ」とやおら彼女の腰を抱き寄せてみたら、悲鳴を上げて「無理無理」ということになったので(これはどうも女同士だから、という訳でもなさそうだった)、ご自身の方向性を見極めてからトライすることをお勧めする。

 あと、わたしもちゃんと、「あなたって可愛い」とか「あなたのお尻好き」とか、しょっちゅう言います。


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