見出し画像

ひとにゆだねることの安心感とおちつかなさ。

 鍼に通い始めて1か月くらい経つ。鍼は今までにない興味深い体験だった。体に鍼を打って置いておくと、体の内部にぐんぐんと変化が起こる。

 初めに、体のどちらかに痛みが集まる。沈殿して、重たくなっていく感じ。別の経穴に鍼を移すと、沈殿した痛みが体の一方向に向かって寄せられて行く。そして最終的に寄せられた一点から、つるんと抜けて行く。体の表面薄皮いちまい、徐々に剥がして引いていって、脱皮するみたいだと思った。ほんとに、蛇が脱皮するみたいに、体が自然に捩れて動く。

 大きな変化が起こったのは、亡くなった友人のお通夜から戻ったときのことだった。長時間移動でさすがに体がガタガタだから鍼に寄ったら、大変なことになった。リラックスしたら涙が流れてくるし、いつもは鍼を打つと痛みの塊が腕から手の先へ向けてとかそういう経路に抜けていくのだけど、今回は歯みがきのチューブを下から上に絞るみたいに頭に向かって絞り寄せられてそして抜けていかない、頭に押し込められて押し込められて息ができなくて悶えて汗がびっしょり出て、先生が急変患者の処置にありとあらゆる手を打つみたいに矢継ぎ早にいろんなことして、お陰で数十分後しまいに痛みの塊は右腕に行ったけどでも肩関節の辺りで引っ掛かかってどうしても抜けていかなくて、じたばたしてあんまり痛いので可笑しくなって笑っちゃった。先生も「右腕に行った、って言うまで、もうどうしようかと思いました」と笑った。

ここから先は

1,865字

個人誌『離婚した時、もうセックスは終わりだなと思っていた。』に続く、傷つきと回復の約2年間の記録。わたしたちの未来に、つつましやかだけれど…

アマゾンギフト券を使わないので、どうぞサポートはおやめいただくか、或いは1,000円以上で応援くださいませ。我が儘恐縮です。