「障害者として生きている中でがまんならないこと」は何か。

肢体不自由で車いすを利用している女子高生が児童館に遊びに来てくれる。
私は最近彼女と一緒に過ごす時間が長く、よく話をする。
話をするといっても、彼女は体の特性上、声による会話はむずかしい。
NOや、うん、といった短いセンテンスで聞き取れるものもあるが、
それ以外は文字盤を使って会話をしている。
手も足も不自由、という言い方が正しいのかはわからないが、
思い通りには動かせない。
ただ知的障害はなくて、会話の内容は至って一般的な女子高生と差異はない。もちろん経験していることや生活が違うので話題や感性は、一般的な……というわけにはいかないが。好きな人の話をしたり、好きな音楽の話をしたり、昨日の晩御飯、GWの旅行、妹の話やテストの話……そんな他愛もない話を、毎回楽しんでいる。

最初は緊張感があったが、回を重ねるごとに話しやすくなり、
彼女も心を開いてくれるようになった様子があった。
だんだんと話す内容もディープになり、
ここのところは話題が、進路や障害者雇用について、
少子高齢化と自殺の問題についてや障害者として生きることについてなど、
ぐっと重たい方向にも向く。
正直センシティブな内容なので気楽には話せない。
一日の仕事を終えて帰ってくると、
吸収の多さと神経を使ったことによる疲れがどっとでる。
だけどとても刺激的で、彼女との時間は私にとって大変貴重だ。
障害を持つ方から、障害者としての自分が語られるという経験を、
私はこれまでしたことがなかったから。

彼女は大変前向きで、
自分の可能性を信じている。
その姿には見習うべきところが多く、
障害を持っていてもこれだけの自己肯定感を保てているのは
ご両親の育て方のたまものだろうと感心する。
大学進学を希望していて、進学したらアルバイトもしたい気持ちがあると話してくれた。

生きているといろいろと辛くなることもあるし、
死にたくなってしまうこともあるよね、っていう話題になった時には
「どうして障害があるんだろうと思ってすごくつらいこともある」
「だけど好きな人にも出会えたし、あなたとも出会えたから」と言ってくれ、最後に、
「ゆるす」と指でしめした。

この一言は、私にはぐっときた。

ゆるす。
これが彼女が感じている障害の受け止め方。
あってもいいよ、と、思えるようになった……そんな感覚だろうか。
彼女らしい、強さのある言葉のチョイスに感動した。

私は、少し聞きにくいと思いつつも好奇心から、
「じゃあ逆に、ゆるせないことってどんなこと?」と聞いてみた。
すると「知的障害があると誤解した接し方をされること」という回答。
なるほど、と理解する。
彼女は自分で弁明することも難しいので、
「話せない=知的障害がある」と決めつけて、猫なで声で話しかけられたりすることを非常に嫌う。
確かに、声でのコミュニケーションがムズカシイというだけで、
鮮明に物事をとらえ勉強もしているのに、
先入観からわかっていないという扱いを受けるのは腹立たしいだろう。

先日彼女と過ごしていたら、小学生女子に囲まれ、
質問攻めにあうという出来事があった。
「しゃべれないの?」「なんで手がこうなってるの?」と、知的障害があると思っているのか私に聞いてくる。
しゃべれなくても歩けなくても、手も足も思い通り動かせなかったとしても、耳で聞いて頭に届ききちんと理解できているのに、まるで聞こえてすらいないような扱い。。。
聞こえていてもそれを伝えることもできない。くやしい。。。
そんな感じだろうか。わからなくはなかった。
もちろんその場は、できる限り本人に文字盤で答えてもらい、コミュニケーションがとれることを、周囲に示すチャンスと変えた。
ただ、「どうせ何を話していても理解してないだろう」というような子供たちの話しぶり、反論ができないので、悔しかったと思う。

「知的障害があると思われたくない」という彼女の主張は、
すごく理解できるのだがそこだけ切り取ると、
知的障害を差別した発言にもとられるので注意が必要だ。
実際その話を聞いた人から、悲しい顔をして
「障害があるのに、別の傷害のことを理解せずさげすんでいるなんて。。。」と言われた。
正しく理解されたいという希望があるだけなのだ、と思うが、
やはりアウトプットの仕方によってうまくいかず誤解につながることもある。

彼女の周りにいると、そんなことも含め、
学ぶことや考えさせられることが非常に多い。
楽しい。私こそ、出会いに感謝だよ。
障害があっても許すと言ってくれた彼女に、
障害があるからこそ出会えたと、もっと喜んでもらえるように、
自分の価値をあげようとも思った。
いつも学びの時間をありがとう。


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