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希少な存在になりきれない

自分の輪郭を確認することがすきなので、占いや診断はついやってしまう。

数年前、「これ当てはまると思う!」と友達から送られたサイトには「HSP診断」と書かれてあった。調べると、HSPとはひとつの概念的なもので、簡単に言うとHSP=繊細な人らしい。
長い付き合いの友達が言うならきっと当てはまるんだろうなと、寝転びながら質問事項に答えていく。


「強い光や音、においにストレスを感じますか?」
あー、感じる。舞台やライブの光は大丈夫だけど電気付けたままは眠れないし、大きい物音苦手だし、甘すぎたり強すぎる香りは鼻について気持ち悪くなる。

「映画やドラマ内の暴力的シーンは見れますか?」
苦手なんだよなあ。グロテスクも同様に。作品内で殴られているのを見ると私もお腹の奥がズンとして苦しくなる。


など答えた結果。どうやらHSPの可能性が非常に高いことが分かった。
「あなたはこういうタイプです」という診断結果は、私に名前をくれたようでなんだか安心した。
でもその後に書かれていた「人口の2%の割合です」という一文を目にした途端、一気に自己嫌悪してしまった。


並べられた特徴は私の中に共感の嵐を起こした。「わかるわかる。そうなんだよね〜!」とヘドバンもした。
誰かが怒られているのを見ると私も泣きそうになるし、友達が嫌ってわけじゃないのに帰るとぐったりする。そのくせ、なにもなく家でじっとするのは苦手だ。それに仕事中視線を感じると見張られているようになり、集中力も切れてしまう。ひとりは好きだけど寂しがり屋。
箇条書きで書かれた特徴は私そのものだった。

でも「あなたは希少な存在です」なんて言われると一気に申し訳なさで溺れる。さっきまで私を見つけてくれた喜びでいっぱいだったのに、今度は恥ずかしくなって家に引き籠りたくなった。


自己肯定感が低く普通コンプレックスをこじらせまくってる私は、「希少な存在」なんて言われたらそりゃあ「他とは違うタイプ」であることに陶酔する。普通じゃないんだと浮かれる。
でも根強い自意識によって酔いは冷めて、一瞬でも自惚れた自分に嫌悪するのだ。あんなに普通じゃないなにかに憧れているのに。 いつも自分で自分に冷水をぶっかけている。

いっそ「そう!私は希少な存在!」って酔い続けられたら楽なのになと思う。
でもアルコール弱いし、たとえ強くても100%酔っぱらうことなんてきっと出来ない。私から切り離された別の私が住み着いていて、内側からじっと見ているから。「希少と言われるような特殊なものなんてない」と囁きながら。


それと「繊細さん」「希少な存在」だからといってガラスのように扱われると、相手に気を遣わせているようでとても申し訳なくなる。「繊細だから傷つけないようにしなきゃ」と悩ませてしまう時間に申し訳なくなる。
私が繊細だからってそっちまで繊細さんにならなくていいんだよ。傷つかない言葉でも傷つく場合もあるから気負わないでほしいと肩を揺らしたくなる。



まあ結局、こう考えてしまう私は繊細というか面倒だなと、心の中で「希少な存在」にマーカーをこっそり引いておいた。

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