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【敷かれたレールに乗るか?降りるか?】あのこは貴族①

 正月近くになると見たくなる映画があります。原作山内マリコさん、監督岨手由貴子さんの『あのこは貴族』です。
 映画の内容は正月に関係ないのですが笑、地方出身者が帰省してガラガラな東京のシーンから始まる映画です。
 ※既にあらすじをご存知の方は次の記事からお読みください。

 高度経済成長期には日本は一億総中流と言われました。しかし、東大生の親の平均年収が1,000万と言われるように、生まれによる階級の分断が進んできています。
 異なる階級を象徴するように、二人の主人公が対比的に描かれます。

  • 美紀:田舎の生活に嫌気がさし、猛勉強の末に慶應義塾大学に合格し上京。しかし、実家の経済状況から仕送りが止まり、働くために大学を中退してしまう。

  • 華子:東京のお金持ち。アラサーになり、そろそろ結婚しないかと家族から次々と縁談を持ち込まれるが、どれもしっくりこない。

 階級の違う二人。ですが、それぞれに生きづらさがあることが描かれます。

個人の努力の限界

 美紀は自らの努力の結果、名門大学のチケットを勝ち取りました。しかし、そこで目の当たりにしたのはエスカレーター式で進学してきた内部生の存在。生まれながらにシード権を持つ者たちがいるのです。
 家庭の経済的状況が原因で大学をドロップアウトした美紀を尻目に、要領よく要職に就くだろう内部生たち。個人の努力では超えられない壁を感じずにいられません。

敷かれたレールに縛られること

 一方で、華子の側にも悩みがあります。それは、自分の理想を描けないこと。
 恵まれた環境で、敷かれたレールを順調に進んできた華子。年頃となり、早く結婚しないのかと周囲からプレッシャーをかけられます。
 今まで周囲がお膳立てしてくれていたので、どんな相手がいいのか、そもそも結婚することが幸せなのか自分でもわかりません。
 しっくりくる答えが見つからないまま周囲に流されていきます。

 敷かれたレールから降りられない華子、レールに乗ることができなかった美紀。それぞれが生きづらさを抱えています。
 この生きづらさを解消するキーはあるのでしょうか?次回の記事で考察してみます。

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