見出し画像

【お宝は盗むもの】ファンタスティック Mr.FOX/ウェス・アンダーソン

 面白い映画を見つけたので紹介します。
 ファンタスティック Mr. Fox / ウェス・アンダーソン監督 / 2009年公開
 ※微ネタバレありです。

映画『ファンタスティック Mr. Fox』より

 主人公はキツネ、他の登場人物も動物たちが可愛らしく擬人化されています。人形をコマ撮りして制作されたアニメーションです。ポップな画面構成、コミカルかつシニカルなストーリーと、ウェス・アンダーソン節に溢れた作品です。大人のための童話という印象を受ける作品でした。

 本作では「理性か野生か?」が一つのテーマになっています。
 主人公のフォックス氏は妻子持ちのサラリーマン、しかし元は名うての鶏泥棒でした。子どもが生まれたことをきっかけに、やりがいはないが安定した今の職に就いたのです。しかし、引越し先にある大農場を目にしたことで、生まれついての泥棒(キツネですからね)としての血が滾り、、、というあらすじです。 

 農場主たちがフォックス氏らを捕まえようとするも次々と裏をかいていく様はトムとジェリーのようで痛快です。
  地下に潜ってでも、盗みを働いてでも生き抜こうとする野生のバイタリティが伝わり、退屈な日々を抜け出そうと元気をもらえるいい映画でした。

 
 本作のテーマは、「安定をとるか、やりたいことの為にリスクをとるか?」とも言い換えられます。
 家族はいるけど実力を試すために独立しようかどうか、まだ収入の安定していない夢追い人と結婚するべきかどうか、などなど選択が試されることは人生でままあると思います。
 迷った時は、挽回できる範囲のリスクをとったほうが満足できる人生になるのは確かでしょう。

 一方で、積極的にリスクをとることが正義とされている風潮には私は懐疑的です。転職や投資など、いたるところで安定を捨ててリスクをとることが推奨されています。ですが、必ずしも安定を放棄する必要はないと思うのです。
 (そもそも、世間に合わせてリスクを取ろうというスタンスは、「リスクをとる」という意味と対極にあるのではないでしょうか。)
 
 安定を選択するというのも素晴らしいことです。例えば、サラリーマンより独立の時代だ、とい言われることがありますが、毎月決まったお金が口座に振り込まれるというのはありがたいことです。日々の金策のストレスから解放され、残った思考リソースを人生設計などに振り向けることができます。
 安定志向は揶揄されがちですが、自分の選択に自信を持って堂々としていましょう。

 既存の仕組みはダメなように見えて実はお宝にあふれています。みすみす捨ててしまうのは勿体無いです。もちろん、あえてリスクを取りに行くのもまた良しです。
 大事なのは、どんな選択をしたとしても、その先の環境で盗める物を盗むことだと思います。何が自分の利益になりそうか?探せば得られるものはきっとあります。それを自分のものにしちゃいましょう。地下に追いやられようが人間から食糧を盗んでいくフォックス氏のように。

 そんな悪党にはなれない?大丈夫です。私たちも、キツネたちも、恐竜の卵を盗んでいたネズミの子孫なのですから。


この記事が参加している募集

#note感想文

10,622件

#映画感想文

66,723件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?