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事業再構築補助金 攻略の研究<第4回>

※ 初めての方は<第1回>からお読みください。

§4 事業計画策定の前に、構想を練る

 事業再構築補助金を活用しようとするならば、前回みたように、事業再構築指針の要件を満たしていることを精緻に検討する必要があった。しかし要件をすべて満たしたとしても、それは、業態転換や新分野展開などが順調にいくことを保証しているわけではない。もちろん未来のことは誰にもわからないが、「順調にいくであろうと現時点で合理的に判断できる材料」を用意しておかねばならないのだ。それは補助金に採択される目的もあるけれど、何よりリスクを負って挑戦していく自分のためだということを理解しておこう。

 最初にすべきことは情報収集だ。第3回【例2】(自動販売機による餃子販売)の場合だったら、シフォンケーキであったり、納豆であったりするけれど、自分と同じようなことを既に開始している店舗に出かけて、いろいろな話を聞いてくるのがいい。設備投資にどのくらいかかったのか、アイデアを実現するまでどのようなステップだったのか、時間はどのくらいかかったのか、どのような点に苦労したのか、予期せぬ事態はどのようなことだったのか・・・など、どんなことであれ聞いておいて損はない。自分にとって初めてのことをやろうとするのだから、少しでも情報は多い方がいいのだ。この手間を惜しんではいけない。

 次に『どのような顧客がどのような理由で自動販売機で餃子を買うのか』を考えよう。仕事帰りの主婦が、家族の夕食にもう一品欲しくて買うのかもしれない。仕事帰りの独身男性が、ビールを飲みながらの夕食に買うのかもしれない。若者が仲間を自室に招いて、宴会をするために買うのかもしれない。残業帰りの人が、すでに店は閉まっていて夕食を求めて買うのかもしれない。。。
 このステップはきわめて重要だ。なぜなら、これによりターゲット顧客が決まり、商品ラインナップ(生餃子か焼餃子か、一人前だけか等)が決まり、プロモーション方法が決まるからだ。つまりマーケティングの出発点がここにある、

 それから収益性を押さえておかなければならない。一日にどのくらい売れるのかは、市場規模や通行量などから推測する必要がある。これは知識とスキルとが必要だから、一緒に事業計画策定をおこなう認定支援機関に相談することをお勧めする。
 また従来の店内での対面販売は受注生産(注文を受けてから焼く)だったとしても、自動販売機による販売は見込生産(焼いた餃子を自動販売機にストックしておく)である。そのため廃棄ロスが発生することも想定される。それは原価を押し上げてしまう要素だ。つまり、この例の場合なら
  販売原価=材料費+包装代+破棄ロス分
である。これにプロモーション費用や電気代などを加えて、できれば損益分岐売上は(概算でもいいので)押さえておきたい。さらに投資回収にどのくらいの時間がかかるかも概算しておく必要がある。このあたりも認定支援機関に相談するといいだろう。

 さて、補助金は精算払いがふつうである。採択され交付決定されてから設備投資等をおこなうが、事業再構築が完了(最長1年)してすぐに実施報告書を提出し、会計監査が済んでから、補助金額が振り込まれる仕組みだ。つまり振り込まれるまでは自腹なのだ。したがって補助金が入金されるまでの資金調達や資金繰りを考えておかなければならない。

 このように、事業計画策定に着手する前に、再構築アイデアの詳細を詰め、ある程度の算段を付けておくことが必要なのだ。この構想段階がしっかりとできていれば、それは事業計画のしっかりとした骨格になる。

 次回は、ちょっと癖のある「補助金申請における事業計画」について説明しよう。

⇒ <第5回

2021/03/31 初稿



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