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「ハマりやすい」タイプの子供は、ここに注意!

先日、薬物依存症から回復したK子さんから定期報告がありました。弊社は長く彼女の回復と自立をサポートしてきましたが、すでに違法薬物を断って10年以上が経ちます。現在は某外食産業で管理職に就いており、その目覚ましい活躍ぶりに、かつての面影は一切ありません。

彼女は夏冬の節目ごとに、近況を報告してくれます。今の仕事は、アルバイトも含め十数回もの転職の上にたどり着きましたが、半期ごとに示される本社からの評価は高く、コロナ禍でさすがに売り上げは落ちたものの、それでも高い利益率を出しているそうで、複数ある他店舗の研修を任される立場になったと話していました。

そのコツを聞くと、「うちは本社が作ったマニュアルがあるんで、まずはその通りにきっちりやることです。利益が上がらない店は、やっぱり手を抜いているんですよ」と言います。彼女自身、効率よく仕事ができるようになるまでは、まさに寝る間も惜しんで働いていたので、その言葉には説得力があります。

「でも」「どうせ」を言わないで、やってみる

弊社が見てきたケースでは、女性で薬物依存に陥る方には、「ハマりやすい」という共通項がありました。それも一般的な「ハマる」ではなく、「コレと決めたら、寝食を忘れてやる」とか「この人!と決めたら、命がけで尽くす」というレベルです。任侠みたいな話ですが、本当に、そういう女性が多いです。

K子さんも、マニュアル通りにきっちり仕事をこなすことはもちろん、手作りのノートを作ってボロボロになるまで読み込む、少ない休日も飲食系コンサルタントの動画を見て勉強するなど、とにかく、わき目もふらず猪突猛進。「いい」と言われたことは即実践。ダメなら何がダメだったのかとことん追求する。そこに、「でも……」や「どうせ……」という言い訳はありません。

もちろん、彼女が薬物を断つまで、また、断ってから自立に至るまで、そして今の職場で能力を発揮するまでには、さまざまな変遷がありました。その過程については、(とっても長くなりそうなので)別の機会に書きたいと思います。

さて、K子さんを見ていると、「成功事例をもとに、まずはとことんやってみる」ことの大切さを感じます。弊社も、このnoteや電話相談では、ごく基本的な“初動”のノウハウをお伝えしています。あえて有料でお伝えしているのは、これまで数千件にも及ぶ家族からの相談に乗ってきて、「こうするしかない」という方法論が編み出されているからです。

しかし、問題を長く抱えてきた家族ほど、「でも……」や「どうせ……」が口癖になっています。たとえば顕著なのが行政機関への相談で、まだ動いてもいないうちから、「どうせ行政は何もしてくれないでしょ?」とおっしゃいます。あるいは、どう見ても入院治療が必要なレベルなのに、「でも入院は本人がかわいそう」などとおっしゃいます。そして、基本のやるべき行動はすべてすっとばして、「おたくは何をしてくれるの?」となるのです。

民間企業にお金を払って丸投げする余裕があるならともかく、そうでない以上、まずは自分の「頭」と「足」を使って動いてみるしかありません。現在の精神科医療の仕組み上、一発解決は難しくなっていますが、現状を打破するチャンスが欲しいなら、「でも……」「どうせ……」と言わずに“初動”にチャレンジすることです。

困り果て、辛い日々をお過ごしであることは十分に理解していますが、経年の結果からくる「現在」です。早い結果を求めることはまず難しいことを念頭においてください。面倒臭いこと、気が進まないことから始めないことには、何も先に進まないのです。

コロナ禍の今だからこそ、保健所も精神科病院も、「明日どうなるか分かりません」。ゆえに「今日できることを、まずはやってみましょう!」

「ハマりやすい」タイプの子供には要注意!

K子さんの話に戻ります。彼女は10代の終わりに、違法行為を行う人物に出会い、違法薬物を勧められ、手を出しました。とはいえ本人は当時、誘ってきた相手を、悪い人だとは思っていませんし、違法薬物のことも、悪いものだという認識はありませんでした。もし、この頃の彼女に「別の良い出会い」があったならば、今とはまた違った人生があったと思います。

なぜ彼女は、10代とはいえ善悪の分別もつく年齢でありながら、犯罪者や違法薬物に対して、「悪い」と思わずに関わってしまったのでしょうか。この答えはやはり、育ってきた家庭環境にあったと思います。K子の家庭は一見すると「ごく普通」でしたが、両親は、表面や体裁を取り繕っておけばよし、子供が嘘をつこうが万引きをしようが「バレなきゃいい」という考えの持ち主でした。「金」に最大の価値観をおき、K子さんも「お金のある男性と結婚するために短大くらい出ておきなさい」などと言われて育ちました。

K子さんはよく、「親は自分のことを本気で心配したり、関心をもったりしてはくれなかった」と話していました。親子の間に心の交流はなく、当然のことながら「自分を大事にする」ことも教えてもらえませんでした

こういった家庭環境は、K子さん以外の薬物依存症者の家庭でも言えることです。法律をはじめ倫理道徳を教わる機会もなく、家庭の中にもルールがありません。中にはそれを「自由」とはき違えて子育てをしている親もいました。ルール違反でさえ、「あなたの人生なんだから、なんでも好きにやればいい」と、あたかも理解ある親のような振る舞いをしているのです。ところがそこで困ったことが起これば、「自分で判断してやったことだから、私(親)は関係ない。自分で何とかしなさい」という具合です。

K子さんのように「ハマりやすい」という性質は、幼少期からある程度の片鱗がみられるはずです。そして「ハマりやすい」タイプの子供にはとくに、早い段階から社会のルールやものの善悪について、本人の理解度に合わせた言葉で教えてあげてほしいと思います。これは性教育にも言えることです。

「コレ」と決めたら突っ走ってしまう子だからこそ、それが悪い方向に向かわないよう、これでもかというくらいに言葉を尽くして、自分の体と心を守る術を教えてあげてください。

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