ミュージカル『この世界の片隅に』感想
色々忙しく1年ぶりの観劇となった。今回は地元・水戸で公演があるという情報を手に入れたので、ミュージカル『この世界の片隅に』をチョイスした。普段は大都市で楽しんでいる演劇を地元で観れるのは貴重で、もっと機会があると良いなと思いながら市民会館へと足を運んだ。
原作はこうの史代の同名漫画。過去にはアニメ映画やテレビドラマとして映像化されていて、作品としての知名度は高い。ぼくは2018年にテレビドラマ版を視聴していたが、6年前の記憶はおぼろげなので逆に新鮮な気持ちで臨むことができそう。
さて、舞台の感想へ。
冒頭にいきなりクライマックスのようなナンバーがあり、ここだけで一気にテンションが上がっていく。序盤は少し時系列が複雑で、初見だと混乱するかもしれない。これは原作の著名度が高い(観劇者の多くは作品を知っていることへの自信)がゆえにできる技だなと思う。でも序盤を過ぎると展開も時系列に落ち着いてきて、安心して身をゆだねることができる。そして中盤・終盤と作品が進み、最後で一気に観客を感動へと誘う。両隣のひとが泣いているなんて初めての経験___!
今まで観てきた演目は、演技×音楽×舞台装置の3つが折り重なって成り立っているものがほとんどだった。だがこの作品は、かなり音楽に比重が置かれているなと感じる。舞台の生演奏、アンジェラ・アキの音楽、そして何よりすず(大原櫻子)など演者の歌唱力、これによって観客を一気にミュージカル作品の世界へぐいぐいと引き込んでいく。
演出の中で特に注目したのは、大人のすずの世界に時々幼少期のすずが複数回現れたことだ。3つのナンバーにおいて階段の縁に座り大人の自分を見つめ、時折歌声を奏でる。自分の中に子どもの頃の自分がいて、彼女が歌という形で想いを表現している。これは舞台ならではの演出で、アニメやドラマにはない良さだと思った。
そのほか、
斜めの舞台と回転装置によって、小さな空間に大きな可能性と奥行きを生み出す。
最後のシーン、偶然だろうけど孤児を晴美が演じていることで、すずの「過去とともに未来を生きる姿」に深みをもたせているように捉えた。
今回は舞台ならではの演出を存分に楽しめて、満足度もかなり高かった。今度改めてドラマやアニメを観て、より物語に浸りたいなと思った。
ちなみに会場では当日券も発売していて、学生はなんと2500円で手に入るようだ。このクオリティの舞台をこの価格で観れる機会は早々ないので、茨城・水戸にお住まいの学生さんは明日よかったらぜひ!(もう遅いね)
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