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あらゆる言葉に”お”をつけ丁寧語にする実験

あらゆる言葉、主に名詞の頭に『お』をつけて丁寧語に変え、新たな可能性を開拓する。

なお、表記は全てひらがなとし、その元の言葉はカッコ書きで後に表すこととする。


【 検証に協力していただいた言葉たち 】

おたおる (タオル)

おきゃっぷ (キャップ)

おおおおおかみ (大狼)

おおちんちん (おちんちん)

おゆんぱみん (ユンパミン)

おへそのお (へその緒)

おがんじん (鑑真)

おか (蚊)

おととろ (トトロ)

おぼんご (ボンゴ)

おちぇす (チェス)

おぴっころ (ピッコロ)

おべじいた (ベジータ]

おちょうさへいだん (調査兵団)

おばびろん (バビロン)

おぴいえすぴい (PSP)

おじぇだい (ジェダイ)



「笑える」かどうかは、正直言って人次第だ。なにせ私はコメディアンではない。ギャグのセンスも高い方だとはお世辞でも言えない。

だが「面白い」かどうかであれば話は別だ。「面白い」とは、価値がある、もしくは、価値があることに繋がり得ることだからだ。


上のものからいくつかピックアップして考えてみる。


『おおおおおかみ』

「大狼」に”お”をつけて『おおおおおかみ』とした場合、何を持って”お”が5つあるとするのかを決める必要がある。
単に長さで決めると、人によって感覚が違いすぎる。言う側、聞く側の双方の感覚が違うので、
「おい。お大狼様のこと呼び捨てするな。」というイザコザになりかねない。

そうなると、次はイントネーションの変化をつけることに行き着くだろうが、これは時間の流れや地方などに行くに従って、その上がり下がりが大幅に変わっていくことが容易に想像できる。面倒くさいことになりそうだ。

そして次第に「長いから省略しよう」という流れになる。人間は省略が大好きだ。イニシャル化したり、言葉を捻じ曲げたり、終いには相撲の場所中で行われる祈りの意味もある土俵入りまで。「大狼」の気持ちを考えてみろ。


『おちぇす』

「チェス」に”お”をつけ『おちぇす』にしたら、途端に江戸の下町の団子屋の看板娘が顔を出す。頭に”お”をつけ、それを含め読み数が3つであると、看板娘フレーバーが出てくるらしい。かといって読み音が2つのものに”お”をつければいい、というものでもなさそうだ。何とかあらゆる言葉にお団子を持ってこさせる「看板娘の法則」を見出したいが、私にはそれをきちと理論付ける技量がない。


濁音のあるカタカナ名詞達

『おぼんご』『おべじいた』『おばびろん』『おじぇだい』に至ってはただただダサい。濁音が関わっている気がするが、元の単語がカタカナであり、響き自体はゴツいのも共通している。惑星ベジータの王も、宇宙の騎士も、丁寧に扱われたらその名は地に落ちるらしい。

『おへそのお』

唯一興味深いのは「へその緒」だ。接続としての”の”が入ってはいるが、これは名詞である。少なからず今の日本語にはそう定着している。説明しているようで名詞の役割も果たす。”お”を付ける前からポテンシャルの高い語だったのかと気付かされる。

さらにそこへ”お”をつけると面白いことが起きる。”おへそのお”になると、同時に2つの意味を持つのだ。①「へその緒」を丁寧に表したものと、②あいうえお作文のように「『おへそ』という言葉の頭についている『お』」という、純粋な平仮名としての『お』を指し強調した一文になる。

読み方は同じだけど意味が違う言葉、というのではない。①の場合は、名詞を丁寧な形に表しているため、”お”をつけても名詞としての性格が色濃く残る。だが、②の場合は、名詞から文章へと形態そのものが変わってしまう。これは昆虫・甲虫類にみられる”変体”に匹敵する大改革である。まさにへんたいだ。

『おおちんちん』

最後を締めくくるのは『おおちんちん』だ。

「いや、既にちんちんに”お”つけてるじゃないか」とツッコミたくなるのはわからないでもない。

だが、私と同じ体験をした人も少なからずいるはずだ。

「”お”が既についていると気づかなかった」、と。

日本人の総人口の約半分ほどについている「おちんちん」。彼らが母親の腹の中で、もう既に股下からぶらさげていた「おちんちん」。大人から子どもまで扱う言葉「おちんちん」。

そう。これは「ちんちん」に”お”がついたのではない。日本人の頭の中に、既に”お”がついた状態である『おちんちん』として、完成され刻み込まれた新世代の”語”なのだ。

新世代といってもギャル語やネット用語などとは次元が違う。本来全く別物であった名詞としての「ちんちん」と、丁寧語としての”お”がくっつき、新たな言葉として生まれ変わったのだから。これは新たな”語”である。丁寧語と名詞の融合は他に例を見ない。「名詞と化した」なんて短絡的なことは口が裂けても言えない。”単語”という言い表し方も正しいと言い切ることができない。故に現代の国語では、『おちんちん』を”語”としか言い表せない。

これは新たな文明の兆しですらある。

よって、新たな”語”である『おちんちん』を丁重に扱う意味で、丁寧語の”お”をつけた形が『おおちんちん』である。間違えても「”お”をつけたことで『大ちんちん』に、でっかい一物、という意になったのだ」と解釈してはならない。そんな下世話なことが頭を過ぎっているようでは、この国の語学は廃れる。

これは世紀の大発見になり得るものだ。その様は、まるでコロンブスが新大陸を発見したかのように、緊張と驚きと期待に満ちた、まさに言い表せない感動である。




本実験において、可能性を拡げた功績として、大賞を『おおちんちん』に、副賞を『おへそのお』へ贈ることとする。

なお、大賞を獲得した『おおちんちん』には、今回の検証に携わった者から、通称としての異名を与える。

『おおちんちん』に授与する異名は、


「コロンブスのイチモツ」である。


この闇夜に一筋の光を照らす双刃が、世界に名を轟かすことを切に願う。

本記事の締めくくりとして、最後に一言添えるならば、


日本語はかくも面白い。

そんな日本語をぞんざいに扱ってごめんなさい。

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