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夜空の待合室をオープンする。

ラジオは孤独に寄り添える唯一のメディアだと思う。
テレビが陽キャならラジオは陰キャだと、陰キャの私は考える。
テレビが「あなたたち」に向かって話しかけるのだとすれば、
ラジオは「あなた」だけに語りかける。
テレビは複数人で見ることがあるけれど、
ラジオを聴くときは大体一人だ。

ラジオは孤独な個人に話しかける。
音楽の話、食べ物の話、友達の話。
話している本人とは会ったこともないのに、
不思議と親近感を覚える話ばかりだ。
テレビだとイケメンなアイドルや俳優が
ラジオだと少しエッチな話をしてくれるのもまた親近感があっていい。
あのイケメンにもちゃんと性欲があったのかと安心する。

お母さんがダイエットしてるのにクッキー食べてるとか、
知り合いから高級なチョコレートをもらったとか、
好きなおっぱいがどんなおっぱいかとか、
そんなしょーもない話でいい。
日常はビッグイベントばかりが起こるわけではないから。
誰かの個人的ななんてことない話が一番ホッとする。

高校生の頃からラジオを聴いている。
おたよりメールを読んでもらったこともある。
生放送中にラジオ局から電話がかかってきたこともある。
こういうとき、ラジオは一方向じゃなくて双方向にもなるんだと思い知る。
不思議なメディアだ。
ただラジオを聴いて一方向のコミュニケーションとして楽しむこともできるし、
おたよりメールを送って双方向のコミュニケーションを楽しむこともできる。
色々な人の孤独や退屈にその人に合った形で寄り添ってくれる。

昼のラジオもいいけれど、夜のラジオはなおさらいい。
テレビほどうるさすぎず、音楽ほどオートマチックすぎず、
適度に静かで生ものであたたかい。
人とつながりたいような、つながりたくないような、
そんな曖昧な孤独にぴったりとフィットする。

ラジオには人を救う力がある。
「救う」と言ってもスーパーヒーローのような大げさな救い方ではなくて、
「今日はあんまりついてなかったなぁ」という一日をしめくくるお手伝いをしてくれたり、
「なんとなく寂しいなぁ」という気分を紛らわしてくれたり、
そういうささやかな救いだ。
でも、日常生活を送っていく上で必要なのは、
スーパーヒーローの救出ではなく、こういうささやかな救いだったりする。

だから、私もいつかラジオを通して誰かの孤独に寄り添ってみたいと思う。
夜空の待合室のような居場所をラジオの中に作りたいと思う。
世の中にはもう既にいくつもすばらしい待合室があるけれど、
私なりの待合室を作ってみたい。
陰キャも陽キャも出入り自由で、
最近あった嬉しかったことをシェアしたり、
キュンキュンする恋バナを聞いたり、
悲しかったことを吐き出したり、
放送倫理に触れない程度の多少の下ネタが許されたり、
昔なつかしい青春時代の音楽を聴いたりできる、
そういう場所を作ってみたい。
私の世界にいる愛すべき人たちの話をいっぱいしたいし、
誰かの世界にいる素敵な人たちの話もいっぱい聞きたい。
シェアできる感情や音楽もあれば、
シェアできない感情や音楽もあるだろうけれどそれでいい。
強制はなーんにもなくてゆるゆるでいい。
遅刻してこようが、途中で寝落ちしようが、オールOK。
だってそこはその夜限りの待合室なのだから。
明日ちょっぴり元気に家を出られればそれでよいのです。

ラジオのパーソナリティーになるのが、私の密かな夢です。

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