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冬のイビサ島

イビサは世界一のパーティーアイランドとして有名な地中海に浮かぶ小さなスペインの島。

ぱーてぃーぴーぽー達がバカ騒ぎしているイメージ映像を見るたび、自分とは無関係の一生行くことのない島だと思い込んでいた。
しかし、友だち夫婦がイビサへ引越したと聞いて突然興味が沸き、とある冬の週末にプチ旅行に出かけた。
 
友だちにはこの時期のイビサに来てもクラブとか開いてないよと言われたが、イビサのクラブに興味がない私には
「クラブが開いていない=ぱーてぃーぴーぽー達がいない=安全」
と逆に魅力的に見えた。しかもシーズンオフなのでマドリードからの飛行機代も宿代もかなり安い。いいことずくめである。
 
シーズンオフだろうと海は海だ。しかもイビサは島全体が世界遺産。世界遺産に夏も冬もない!
ホテルの部屋のバルコニーからの海の眺めは最高だし、ビーチも散歩している人がまばらにいるくらいで丁度いい。
 
友だち夫婦に案内してもらってイビサの旧市街地やイビサ城を散策し、地元の人で賑わうレストランでお昼を食べる。
もうこの段階で私はすっかり冬のイビサに魅了されている。

旧市街地の町並みはアンダルシア地方を思い出させる白い町並みで、イビサ城から眺める海はどこまでも果てしない。観光客がほぼいないとはいえそこには生活があり、人々の人生がある。
パーティーアイランドなんて肩書きがなくてもとても魅力的な島だ。
 
夕方は日没を見るため島の西まで移動し、チルアウトで有名なカフェデマールまで足を伸ばすものの残念ながらシーズンオフのため閉まっていた。
しかし店は閉まっているものの、日没を眺める店の前のベンチは空いている。
チルアウトの音楽はないが、貸切状態で夕日を独占しなんとも贅沢な時間を過ごす。
 
すっかりご機嫌な私は次の日、突然イビサの隣にある小さな島フォルメンテーラ島に行くことにした。
フォルメンテーラを満喫したいなら朝一番にフェリーに乗るべきだろうが、優雅に朝食を食べている時に思い立ったのでしょうがない。
結局フォルメンテーラ島に着いたのは12時を過ぎていた。
案の定、観光シーズンには稼動しているバスも運行していないし、タクシーもいない。車や自転車のレンタル店は何軒か開いているだろうと思っていたが、開いていたのはしょぼくれた自転車のレンタル店一軒だけだった。
電動自転車はなく、日本のママチャリのような自転車のみ。
それでもレンタルできただけましだ。
 
この島にはとても綺麗なビーチがあるらしいが、せっかく自転車を借りたので島の端にある灯台まで行くことにした。
大人三人でひたすら自転車を漕ぐ。
道路が狭いので一列になり、ただただひたすら自転車を漕ぐ。
おしゃべりも出来ず、音楽を聴く道具も持ち合わせていないため、のどかな観光というより部活動のようだ。
無駄にアップダウンの激しい道のりに加え、海岸沿いの道ではないので景色もまるで変わらない。
ただただひたすら続く地獄の一本道。
目指す灯台は確実に見えているのに、たどり着くまでが長い。
来たことを深く後悔しかけた頃、やっと灯台にたどり着く。
灯台自体はシンプルで至って普通だが、そこからの眺めは最高だった。
そして友だちが地元の人から教えてもらったという洞窟に繋がるほら穴を降りると
「なんということでしょう!」さらに絶景が待っていました。
気持ちよく降り注ぐ太陽の光と、どこまでも真っ青な海。誰もいない秘密基地。
必死に自転車を漕いできた甲斐があります。
あの同じ一本道をまた漕いで帰らなければ行けないことをしばし忘れ絶景を楽しむ。
脚は限界だが仕方ない。こんな景色を見たからには文句が言えない。
 
翌日といわず、その日の夜には既に筋肉痛になり遊びに行ったボーリングのスコアは散々だったが、冬のイビサ旅行は当初の予想を遥かに超えた大大大満足な旅行となった。
 
シーズンオフだったからこそ味わえた秘密基地感。
シーズンオフだったから車も電動自転車も借りれず苦労して味わえた達成感。
空港が閑散としていようと、クラブが全て閉まっていようと、交通機関さえ運休していようと冬のイビサにはとてつもない魅力があった。
 
その後何度も冬のイビサを訪れることになり、とうとう夏のイビサにも挑戦するほどイビサ大好き人間と化したが、やっぱりイビサは冬がいい。
満天の星空、ヒッピーだらけの村、不思議なパワーを発しているエスベドラ島など、まだまだたくさん書きたいことはあるが、またの機会に取っておくことにする。

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