鼻毛と自己肯定感のランデブー
いつからか聞くようになった、自己肯定感という言葉。これの意味についてネットで調べたところ、
ありのままの自分を肯定する感覚
とのことらしい。
ふーむ。みなさんはこの感覚、強いだろうか。それとも弱いだろうか。
手前の話で恐縮だが、おそらく私はこの感覚がわりと強いほうだと思う。ダメな自分自身だとしても、甘やかし肯定する能力を持っている気がする。ミスしてもそこまで落ち込まないし、寝れば大抵の悩みは解決だ。すごく嫌いなひとに出会ったとしても、次から会わないと決めるだけだから人間関係のストレスも少ない。
よって、上で示した辞書的な意味の自己肯定感が、自分にはある程度備わっていると思っていた。しかし、である。特定の状態において、その限りではないことに気がついてしまった。
鼻毛が気になるときである。
自分の鼻からニョロッと毛が出ているか不安なとき。私は自己肯定感が著しく低下する。これについて、駄文でもしたためたいと思う。ちなみにこの記事は、区の広報誌の俳句コーナーよりも得られるものが少ないので、よほどヒマなひと以外は読むことをオススメしない。
ただ、29歳の男が、鼻毛が気になって仕方ないことについてダラダラと書くだけだ。それでもお付き合いいただける方は、目を通してもらえれば幸いである。
ちなみに、鼻毛については以前こんな記事を書いた。
ヒマで死にそうなひとは、併せて読んでもらえればうれしい。では、「鼻毛あるある」でも書いていくことにする。どうぞごゆっくり。
①「いまから飲もうよ」に対応できない
先日、ちょっとした用事で渋谷を訪れた。たしか時刻は20時ごろ。お目当てのモノを買い用事を済ませた私は、そのへんでコーヒーでも飲んで帰ろうかと思った。適当にドトールに入る。今日は家に帰ったらなにをしようかな。本でも読むか、ユーチューブでも観るか。通り沿いのドトールのテラス席でそんなことを考えていると、ラインの通知が来た。
「今日空いてたら飲みでもどうですか」
送り主は仕事の知り合いからだった。ちょくちょく飲みに行く仲ではあるが、最近は久しく会っていなかったので、うれしい連絡だった。
早速、ラインで返事をしようとする。「いいですね、いま渋谷ですけ……」そこまで打って手が止まる。待てよ…。なんだか鼻のあたりが、ファサファサする。そういえばここ1週間くらい自宅で仕事をしていたので、鼻毛の処理をしていなかった。鏡を見ていないのでわからないが、いま自分は鼻毛がフィーバーしている可能性がある。
あわててトイレに駆け込んだ。鏡を見る。やはり、バカボンのパパ状態だった。ロングからミディアム、そしてショートまで。長短さまざまな鼻毛が上唇のうえで踊っている。
これは……困った。いまから鼻毛処理グッズを買い、ドトールのちっさいトイレでいそいそと処理に勤しむことを考えると、ひどく面倒な気分になった。せっかくお誘いしてもらったけど、今日は断ろう。なぜなら鼻毛が出ているから。こうして私は、楽しいはずの飲み会を1件断るハメになったのである。
おそらくこのときの私は、とても自己肯定感が低かった。鼻毛が出ている自己など、肯定できるわけがない。世の中にはたまに、自信満々で話をしながら、鼻毛も満々のひとがいるが、きっと私はあのひとたちと脳のシナプスが異なるのだ。そんなことを考えながら、私は家路に着いた…。
②盛り上がったのに2軒目へ行けない
①で取り上げたシーンは、まだマシなほうだ。なぜなら鼻毛が出ていたとしても、誰かに見られることはないから。それよりもツラいのは、誰かとの食事や飲み会の最中に、とつぜんファサファサ感が襲ってきたときである。
たとえば昔、こんなことがあった。
その日、私はマッチングアプリで知り合ったひとと飲んでいた。会話はなかなか盛り上がり、雰囲気はいい感じである。これは、2軒目に行ってもっと話をしたい。喋っていて楽しい相手とは、何時間でも喋りたくなるのが人間の性質だろう。
というわけで1軒目の会計を終えた私は、店を出て、そのひとを2軒目に誘おうとした。「どうしよっか。もう1軒くら……」。そう言いかけたときだった。まるで雷に打たれたように、とつじょファサファサ感が鼻のあたりを襲撃したのだ。
「なに? もう1軒どっか行く?」
そのひとも1軒目を楽しんでくれたらしく、どうやらハシゴ酒に乗り気の様子である。しかし私ときたら、もはや2軒目なんかよりも、鼻毛が気になって仕方がない。
(待てよ……。まさかだけど、1軒目の時点で鼻毛が出てたのか? このひとはそれがわかっていて、鼻毛が出てるのに楽しそうに喋ってる私のことを見て、内心バカにしていたんじゃないだろうか……)
ここでもメーターを振り切るほど、私の自己肯定感は低下していた。もう、こうなってはどうしようもない。私は確信した。きっといま、私は鼻毛が出ている。仮にこれからコンビニで鼻毛処理セットを買い、居酒屋のちっさいトイレで鼻毛を処理したところで、
「こいつwいま処理したんじゃんwwさっきまでwwバカボンのパパだったのにww」
と思われるのがオチだ。
はあ…。消えてなくなりたい。一刻も早く、この場を去りたい。目の前のこのひとは、きっと私のことをバカにしているのだ。そういえばさっき、誰かにラインをしていた。あれもきっと、
「ちょwwティンダーでマッチしたやつww鼻毛www死ぬww」
みたいなメッセージを友人に送っていたのだ。
「どうしたの? 気分悪い?」
やさしいそのひとは、私の体調が悪いと思ったのか、気づかいを見せてくれた。しかし、このときの私は自己肯定感が底打ちしている状態だったので、
(どうせ顔を覗き込むフリして、鼻毛を見てくるんだろうな…)
と、ひねくれた考えを持ってしまった。
結局、そのひととはビルの入り口で別れた。私は急いで、近くのコンビニに駆け込んで鏡を見た。そして拳を固く握った。鼻毛など、まったく出ていなかったのだ。こうなってくるともう、強迫観念のような様相を呈していると思った。潔癖症のひとがいつまでも手を洗っているように、私はいつまでも鼻毛が気になる。とても解決策など思いつく気がしなくて、ただ背中を丸めて家路に着いた…。
③YOU氏みたいになる
最後のあるある。これはきっと、多くのひとがやったことあるのではないだろうか。
①と②の場合は、まだ逃げ場があるからいい。本当に困るのが、この③だ。席に着いた瞬間、ファサファサ感が襲ってくるときである。
この場合は逃げられない。となると対策はひとつ。タレントのYOU氏みたいに喋るしかないのだ。
つまり、自分の人差し指をフック状にし、それを鼻にあてながら喋る。こうすることで、仮に鼻毛が出ていたとしても隠せるし、心理学とかでよく聞く「物質的な障壁」を作ることが可能だ。鼻毛が出ているかどうか不安な心を、この人差し指で落ち着かせる。苦肉の策ではあるが、みなさんも鼻毛が気になるときはぜひ使ってみてほしい。
ノー鼻毛ノー不安
③だけお役立ち情報みたいになってしまったが、以上で鼻毛あるあるを終わりにする。
私から言いたいことはひとつ。「鼻毛なければ憂いなし」だ。せっかくの大切なデート場面などで、鼻毛が気になったらとても嫌なものである。だからみなさん。普段から小まめに鼻毛を切るなり抜くなり焼くなりして、処理に勤しんでいこうじゃありませんか。鼻毛の不安から解放され、自己肯定感を高めにキープできる人生を、ともに歩んでいきましょう。
最後に私のおすすめ鼻毛処理サービスを共有するので、気になる方はぜひ試してみてくだされ。
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