「おじさん構文」の効用について
最近なにかと話題の「おじさん構文」。知らない人もいると思うので、いちおう例文を貼っておく。
見てもらえば「ああ、この感じね」となると思うが、ザッとこんなテイストである。ちなみに宇佐見りん氏の小説『推し、燃ゆ』の中にもこの構文が登場する。
この構文について言葉で説明するのはけっこうムズいのだが、パッと見て思いつく特徴としては、
などが挙げられるだろう。
基本的に、おじさん構文については、否定的な文脈で語られることが多いように思う。「キモい」「サムい」「ウザい」などである。
確かにそのフシはある。とくに先日ネット上で話題になったフードジャーナリスト氏のブログなどは「むむっ…!」と眉をひそめるようなパーフェクトおじさん構文で、さらにその内容もネットリとしたセクハラMAXだったので、各方面から叩かれてしまったのだろう。
☝これが完全無欠のおじさん構文ブログ
しかし私個人としては、上記のブログは内容こそアレなものの、文章自体はとても読みやすかった。
芸術的とも言えるひとりツッコミ、他の追随を許さないカッコの乱発、ほどよい文字数での改行、死亡したと思われていた m(__)m ☜こいつの登場……。そのどれもがオリジナリティにあふれた文章に思えて、スイスイと読み進めてしまった。おじさん構文のフォーマットは、書く側も読む側も、一定の層には心地よく感じるのだろうか。だからと言って、自分がおじさん構文を使いたいとは思わないのだが…。
そんな先入観がひっくりかえったできごと
これ以上前置きが長くなるとマジでおじさん構文になってしまうので、本題に入りたいと思う。
先日、久しぶりに祖母と旅行をした。メンバーは私、姉、母、祖母の4人。行先は群馬県の伊香保温泉。1泊2日の行程で、泊まったのは温泉街によくある古めのホテルだった。
旅行はなかなか楽しく、86歳になる祖母と一緒に石畳を歩きながら、「この先も彼女が元気でいてくれればいいな」などと月並みな感想を抱いた。
そして旅行後、数か月前にスマホデビューした祖母をふくめて、LINEのグループが設けられた。グループ名は「Go! To! 伊香保温泉♨」。命名者は母。旅行を終えたあとにGO!とはいかなる了見かと詰め寄ろうと思ったが、この楽しい旅行を主催してくれたのは母だったのでそこには触れずにおいた。
グループ内では盛んに写真の交換が行われた。4人でホテルの前で撮った写真、祖母と姉、祖母と母、祖母と私など、さまざまな組み合わせで撮影した写真がLINE上でせわしなく行き来する。
そして、ひととおり写真の交換が終わると、母がメッセージを投稿した。内容はややボカすが、おおむね以下のような感じである。
私は、久しぶりに母が書いた長めのLINEを見たので、「こいつフードジャーナリストの弟子になったのか…?」と勘ぐったのだが、もちろんそんなワケはない。おそらく母はカラフルで楽しげな文章を書きたかっただけだ。その結果が絵文字の多用であり、好意から書いたものなのはわかっているので、微笑ましい気持ちになった。
そして次に、祖母からの返事がきた。
おおむねこんな感じである。
私は「おお、さすがに不慣れなスマホで絵文字を多用するのは大変なのか?」と、祖母がスマホと格闘している様子を思い浮かべ、これまた微笑ましい気持ちになった。
そして、ここからが今回の“気づき”である。それは、「祖母に対してのLINEでは、おじさん構文を使うことが優しさになる」というものだ。どういうことか説明したいと思う。
楽しさを文面でアピールできる
上記の母のメッセージの後、しばらく経って姉からのメッセージがグループに投稿された。
ちょっと盛っているが、だいたいこんな感じのメッセージだった。
私はこれを読み、「姉、いつもより絵文字多くないか?」と思った。べつに姉は無味乾燥なLINEをするタイプではないが、それでも、明らかに通常より絵文字の量が多かった。
なぜ…。なぜ姉は、こんなにもおじさん構文チックな文章を書いたのだ…。しばらく顎に手を当てて考えてみる。そして理解した。姉はおそらく、祖母に楽しんでもらえる文面を考案した結果、カラフルな絵文字を多用したのだと。
そうとわかったら、姉に対してにわかに尊敬の念が湧いてきた。さすが私より2年長く生きているだけある。中1のときの中3。姉は知らぬ間に、TPOをわきまえる大人の女になっていたのだ…。
いっぽう私は、どんなメッセージを送ればいいのか悩んだ。私は普段、あまりLINEで絵文字を使う人間ではない。たとえば友達とのやり取りなどは、
のような感じである。
このテンションは友人とのやり取りではまったく問題ないのだが、相手が祖母となるとそうもいかない。再掲するが、
☝このノリで活発に動いているLINEグループに、
などとメッセージを送ろうものなら、祖母が不安になってしまう可能性だってある。グループ内でのトーン&マナーは統一しなければならない。絵文字を多用することはおじさん構文みたいで気恥ずかしかったが、祖母が楽しんでくれることを優先し、私は全力でメッセージを書いた。それが以下だ。
これは嘘である。ギャル文字変換サービスを使ってみたかっただけ。本当に送ったのは以下のような文面。
だいたいこんな感じである。
ただ単におじさん構文的に絵文字を使うのはちょっとアレだったので、「旅行」のあとに🛴キックボードの絵文字を差し込むというオフザケをしてみたのだが、祖母が気づくとは思っていない。
そして私がメッセージを送ってから数日後、祖母が「Go! To! 伊香保温泉♨️」に再びメッセージを投稿した。その内容は、「みんなメッセージありがとう。楽しみにしているよ🥺」というものだった。我々のおじさん構文アタックに感化されたのか、ひとつだけ絵文字がついていた。それも🥺←この、ややマイナーなタイプである。
とにかく私は、今回の祖母とのやり取りでひとつのことを学んだ。おじさん構文自体には、悪気はないのである。
それが引用される場面がたいてい、客がキャバクラ嬢に送るメッセージだったり、ティンダーでマッチした変なヤツのメッセージだったりと、構文そのものではなく内容が「キモい」場面が多いから、おじさん構文そのものが嫌われてしまうのだ。
だからみなさん、私の祖母くらいの世代とメッセージをやり取りするときは、躊躇することなくおじさん構文を使ってみていいと思います。カラフルな文面で相手を喜ばせることは、なにも悪いことではないので。
私👽も今後はどんどん💨絵文字を駆使🔩してnoteを書きたい🖋と思うので、激烈🔥な痛いコメント🎤お待ちしています💦
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