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網走3日目②:深淵をのぞく時深淵もまた……のそれ。

網走旅行の記録は本稿で最後。最後に、最終目的地の網走監獄から女満別空港への道のりを書き残しておきたい。

朝からバスを乗り逃した私はすっかり疑心暗鬼になって、無事に空港まで行けるか、心許ない気持ちでいた。

さっぽろ雪まつりへ訪れた際も、そういえば無事予定どおりに帰れるのかと不安な帰路だった。

雪まつりは2月。その週は大雪の影響で新千歳空港発から欠航した便も多く、道路が通行止めになって空港連絡バスの運行も不安定だった。しかもその日は東京も珍しく積雪して都内の交通機関が麻痺。運良く当日中に成田へは戻ってこられたものの、深夜近くになってようやく帰宅したという記憶がある。

4月下旬の女満別空港はといえば雪もない。
離着陸が多く混乱しやすい新千歳と違って欠航運休もしにくいと聞く。それじゃあ帰り道は安心だろうと思っていたところだった。

朝から博物館をじっくり見て回り、念願だった網走監獄には結局4時間近くいた。展示の隅々まで見終った頃にはそわそわと落ち着かない気持ちになり始めた。

そろそろバス停に向かった方がいいのではないか。
万が一の改定があったとしても早く行った分だけ挽回のチャンスがあるのではないか。

網走監獄の中に掲出されていた時刻表が最新であることを確認し、網走バスサイトの公式サイトでも時刻表も確認した。
間違いないであろうことには疑っていないが、網走監獄の目の前から空港行きのバスが出ている訳ではない。例えば本当に降りていった国道のそこにバス停があるのか目視で確認していなかった。こんなことなら初日の行きのバスで、窓の外を見て確認しておけばよかった。そう悔やんでも遅い。

早めに行こう、と決めた。

店名が表記揺れ

土産の買い物は、博物館敷地内の売店と出口正面の場外売店の二箇所ある。場外売店の方は入場前にも覗けるので品ぞろえを先に見ておいても良いと思う。
場外売店の方が圧倒的品揃えだが、ベテランスタッフ達(おばさま)による猛攻もまた圧倒的なので注意が必要だ。

本当に美味しいよ〜!スタッフもみんな美味しいって言って試食したの〜嘘じゃないよ〜!嘘ついたら捕まって目の前の監獄に入れられちゃうからね〜!

という恐らく1日に30回くらいは繰り出されているであろう網走監獄ジョークに感化され、おすすめのお菓子を買い漁らせてもらった。

ちなみに本当に美味しかった。
北海道というお土産菓子激戦区域で堂々と目立つところに置いてあるという時点で当然美味しいに決まっているので当然美味しい。コタン(アイヌ語で集落)というネーミングも好き。ありがとうベテランスタッフ……


バス停まで徒歩15分とGoogleMapは提示していたが、余裕を見て30分前に網走監獄を後にした。
旅の始まりからあれだけ頼りにしていたくせに、このエリアでのGoogleMapに対する信頼は朝の一件から半分程度まで落ちていた。

自動車が主な来場方法であることが分かるゲート

ゲートを出て左、国道39号方面、網走川沿いに向かう。


バス停はこちら☜とかは書かれていない

天都山を降りていくので下り坂だ。

下山
ちょっとだけ民家と商業施設


10分ほど歩いて行くと大きな踏切が見え、超えると国道だった。

立派な踏切。向こうに町が見える
左手に見えるのは網走川


横断歩道もないので自動車が速いスピードで通り過ぎていく。道の向こう側には渡って行くには勇気が要りそうだ。
運良く空港は左手方向(山側から手前)なのでその必要は無いのだが、空港からやってきて行きのバスで網走監獄へ行く人は信号も無い道を国道を走って横切ることになるのだろうか。

そんな他人の心配をする暇もないくらい、歩道は狭い。

歩道とは何か?

これガードレールと車道の偶発的な隙間では?というくらいの幅である。

落ち葉に埋もれ砂利を蹴散らし、伸びきった山裾の草に脚を撫でられながら、綱渡りのようにして歩いた。
横並びになって歩くのも自転車で走るのも無理だろう。スーツケースを引いていたり雪が積もっていたなら尚更厳しいだろう。余程このバス停の利用者は少ないのだろう。当然のように自分以外に人影は無かった。
本当にこっちであってるんだろうな?!とGoogleMapを睨みながら歩いていくと、ちゃんとピンが指し示すところにそれはあった。


あった!

バス停だ。

きっかり15分で到着した。
つまり、早く出発したもう15分を長く待つことになる。

しばらく「本当に来るんだろうな?」と疑い、バス停とバス公式サイトの時刻表を見比べたりした。合っていた。そうそうにやることも無くなり、ただバス停があるだけでベンチもないので座ることも出来ない。例えベンチがあったとしても周囲のこの管理放置っぷりでは座れる状態では無いかもしれない。
一度路肩に脚を出して腰掛けてみたが、少し避けて目の前を走り抜けていく自動車に申し訳なくなって、結局は突っ立ってぼんやりすることにした。スマホをいじっていてもよかったが、思い出を咀嚼するのに程良い時間だった。

良い旅だった。

ごはんは美味しかったし、博物館もいっぱい見学できたし、綺麗な景色も見られたからいい旅だった(無事に帰れるかはまだ分からないけど)。

いま目の前に広がっている網走川も、昨日能取岬から見えた美しいオホーツク海や、自転車で周りを走った網走湖に繋がっていると思うと壮大な気持ちになる。
朱色に染まり始めた夕焼けも美しいな、と写真を撮った。

葉がまだついていない木も美しい

そんな時、画面の中で何か動いた気がした。

ん?と思って川の向こうに目をこらすと、そこに誰かいた。
遠くにいてよくは見えなかった。一瞬子供が遊んでいるのかなと思ったが、どうも動きがおかしい。あまりにも走るのが速かった。

すぐ見えなくなってしまったので確信は持てなかった。
いやいや。まさか……こんな車も多くて町が向こうに見えてるのにそんなはずは……

ふと横を見ると、「動物注意」の看板

山ですから

もう姿が見えないから確かめようもないし。また「何か」が通り過ぎるのを待ちながら諦めているうちに、そういえば写真撮ったことを思い出した。

なんかいる
こっち見てる


「あんなところに人間が立ってるなんて珍しいな」とでも思われたのかもしれないし、昨日パンでサンドにして「美味しー!」とか言っていたので逃げられてしまったのかもしれない。怖がらせてごめん。


バスは、定刻の時間から2分だけ遅れてちゃんとやって来た。
その2分間の間、バス公式サイトを見直し「飛行機の時間に合わせて運行」という文字に少し焦った。空港で夕飯を食べるため一本早いバスを待っていたから、もし自分が乗る飛行機の一本前が欠航でもしていたら来ないのか?と疑ったのだった。

バスの中ではずっと窓の外を眺め、また彼らが通り過ぎやしないかな、と願ったが二度とその姿を見ることは無かった。

これで網走の旅は終わりなのだけど、最後に女満別空港情報を書き残したい。


土産物屋はコンパクトではあるものの、しっかり売店があるので菓子類などは不足ない。網走監獄売店や道の駅売店と同等かそれ以上の規模を有していた。一階のセブンイレブンの品ぞろえも良いので併せて利用するといいと思う。

レストランは三つ。お寿司屋、ファミレスっぽい総合レストラン、スープカレー屋から選べる。

ハンバーグスープカレー

懐かしい味がするな……と思って写真を遡ったら、2021年の札幌でもお世話になったハンバーグスープカレーだった。旅の気分を味わえるのに野菜も採れるのが有難い。調べたら東京駅にも出店しているらしい。すぐに北海道へ行けなくて困る仕事帰りにでも立ち寄ろうと思う。

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