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《旅する薬膳ごはん vol.1》冬のホリデーシーズンこそ疲れた胃腸を労いたい。韓国に学ぶ、ハレの日の参鶏湯。

おいしくごはんを食べて、元気に暮らすこと。国や文化の違いを越えて、世界中の人とわかちあえる共通の思いではないでしょうか。そこで、まだまだ気楽に海外旅行ができない今だからこそ、世界の国々に伝わる食の知恵を借りながら、 “薬膳ごはんで世界を食べ歩き“ するようなレシピを考えました。旅するような気分で食事を楽しみ、心と体にじわっと元気が湧くことを願って。

冬の薬膳は、推し活の源・韓国に思いを寄せる

昨年の緊急事態宣言期間中ではご多分にもれず、韓流カルチャー・フリークの仲間入りをしたわたし(と、親しい友人たち!)。LINEやSNSのDMでは、観たばかりのドラマや、推し俳優・アーティストの話題が飛び交う日々。おかげさまで閉塞感のある時期を心豊かに過ごせていました。

韓流映画やドラマで印象的だったのは、老若男女みんなモリモリおいしそうにごはんを食べること! 愛情表現のひとつとして家族や友人のごはんの上に、おかずをのせてあげる仕草とか、ほほえましい文化だなって。そして食を重要視する韓国では、中医学を韓国独自に発展させた「韓方(韓医学)」が暮らしの中に根付いていることも魅力的でした。そのひとつに参鶏湯があるのだとか。

韓国の土用「伏日」の参鶏湯
韓国の「伏日(ポンナル)」は、日本の「土用の丑の日」のようなもの。夏バテの予防として参鶏湯を食べて、滋養をつける習慣があるそうです。(日本でも温かい甘酒は夏の季語だったりしますもんね。)さて、本来は暑気払いに食べられてきた参鶏湯ですが…..。湯気が立ちのぼる温かい汁物は、寒い冬に食べるのもまた格別なはず! というわけで《旅する薬膳ごはん》第1回目の提案は、冬のホリデーシーズンに疲れた胃腸を労う参鶏湯です。

二種の鶏手羽の参鶏湯。おにぎりとナムルを添えて。

例えば。クリスマスのディナーはローストチキンの代りに、胃腸に優しく、滋味深い参鶏湯はいかがでしょうか。丸鶏を使うとハードルが高くなるので、わたしは手軽な鶏手羽元と鶏手羽先を二種類使いました。丸鶏を使う場合は、お腹にもち米などの具材を詰めますが、鶏手羽だとそれができないので、ころんと握ったおにぎりを添えて。

参鶏湯の〆は、おにぎりを入れて鶏粥に!

後半戦。参鶏湯のスープを少し残したら、ホロホロになった鶏肉を骨から外して、別鍋でおにぎりを入れて少し煮込めば鶏粥の完成です。ニラを刻んでしょうゆと混ぜたジャンと一緒に食べれば、センセーショナルな味変を楽しめます。

薬膳の視点からみた参鶏湯のポイント
参鶏湯の主役になる鶏肉は気を補うので、胃腸の虚弱や疲労回復、産後の体を労うメニューとしておすすめです。調理法として、温かいスープ仕立てにすることで消化に優しくなり、鶏肉の骨から出るエキス、ボーンブロスはエイジングケアにも効果的。同じく気を補う生薬「なつめ」や、細く切った「みかんの皮」も入れました。柑橘系の香りは滞った気を巡らせて、リフレッシュをさせるのが得意。最近では、ウインターブルーなんて言葉も聞こえるように、日照時間が短い冬は、気持ちが沈みやすいですからね。そして、散らしたクコの実は体の潤いの元をつくります。

▼参鶏湯のレシピはNadiaに投稿しています。

続いて、参鶏湯に彩りと効果のサポートを加えるにはナムルがおすすめです。茹でてあえる、切って炒めるだけのナムルは、困った時の常備菜にもなるのであると便利です。日本でも、新大久保界隈の韓国料理屋さんに行くと、小皿に色々な種類のナムルを盛って出してくれるので、テンションあがりますよね。韓国料理って、ナムルやお漬物、お肉にサンチュやえごまの葉を巻いたり。野菜をたくさん食べる工夫があるのも魅力だなと。

三種のナムルは冬の不調を回避する食材をチョイス。

肌の乾燥や便秘、食べ過ぎの傾向がある人に
中医学・薬膳の養生では、肌や粘膜の潤いをつくるために、水ではなく、血を増やすケアをします。にんじんは胃腸を元気にしながら血を補う食材。ほうれん草も同じく血を補い、トッピングに加えたクルミは「腎」の養生に加えて、ナッツの油分が腸に届き、乾燥からくる便秘の改善に役立ちます。ごぼうは体にこもった余計な熱を取るのが上手な食材。ここで「冬なのに熱を取るの?」と疑問がわくかもしれませんね。実は、むやみに温活すると体に余計な熱がこもることも。さらに、精神的なストレスが重なると胃に熱がこもる「胃熱」の症状が起こります。胃熱は胃の働きを亢進させて、食べ過ぎの傾向に走るんです。そして口臭の原因になるので、気をつけたいところ。

▼ほうれん草のナムルはNadiaに掲載しています。

体をしっかり充電して、次の季節の準備を!
人間も自然の一部と考える中医学・薬膳の理論で、冬は他の動植物と同じように冬眠するように体力・気力を温存する暮らしをおすすめします。寒く過酷な時期は、“根っこに養分を蓄えてじっとやり過ごす” というイメージ。そして、やってくる春にパーッと咲くための心と体の準備をします。でも、私たち人間って年末年始は、忘年会やら新年会で忙しくしていますね。そこで、もしつかれを感じたら胃腸を労う(軽め・夕方早めの)食事を取り、夜は11時までに寝る。これが明日への活力をリカバリーする方法です。薬食同源の精神がいきる「韓方」のエッセンスを感じながら、寒い冬を元気にのり切っていきましょう!

<余談です>
韓国の時代劇『宮廷女官チャングムの誓い』は、王様に仕える女官・食事係りであるチャングムが主人公のお話。怒涛の復讐劇が超絶面白いです。そして中医学(韓医学)の理論が山のように登場します。王様に出す食事は薬膳の知恵をいかした料理で、レントゲンも手術もしない時代なので、病気になったら漢方薬や鍼灸が施術の中心。私が薬膳の学校で学んだ中医学の教科書に書いてあった古典書の名前から、食材、中薬、弁証の数々もたくさん登場します。昔はこんな風に体を診ていたんだ~と、毎回勉強になる。そして、主人公チャングムの心意気というか、どんな苦難があろうとも、逃げずに向かう真っ直ぐなハート。誠意を持って仕事に従事する姿にも感動…..。気になって調べてみたら、チャングムって歴史上に実在した人物らしいですね。全54話あるので気が遠くなるほど長い物語ですが、かなり見ごたえありますよ。お好きなひとはぜひ!

**Thank You**
Photo & Styling:みやはらさなえ
https://www.instagram.com/sanae_miyahara/
私の思いを素敵に表現してくれてありがとう!さなえちゃんの旅写真も気持ちがいいから、ぜひ見てくださいね。

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