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一番記憶に残った、教頭先生の授業

小学1年生の時、担任の先生が盲腸で入院してしまい、
色々な先生が授業を代行するという特別な数日間があった。

その時の教頭先生の授業が、私にとって、最も記憶に残る授業になった。

教頭先生は
「今日は、面白いお話をします」
と言って、本を手に、読み聞かせするとかではなく、
さながら、噺家のような語り口調で、私たちを一気に、話の世界に引きずり込んだのだ。私たちはドキドキしながら夢中でその話を聴いた。

その教頭先生の話がたいへん奇妙な話で、33年も前のことなのに、いまだに頭にこびりついていた。

大人になってから記憶に残った言葉をネット検索してみたら、
教頭先生の話は、小川未明の童話『(※)油石(あぶらいし)』と『牛女(うしおんな)』だったことが分かった。
(※実際には「てかてか頭の話」という表題だった)

普段授業を行っていない教頭先生にとっては、授業の代行は急なことだったはず。その状況で、確かに普段の国語の授業とは違うスタイルではあったけれど、まるで教室がちょっとした寄席になるほどの、レベルの高い国語の授業をしてくれたのだ。

当時の同級生に聞いてみたら、やはり何名かその授業のこと、奇妙な話の内容をしっかり覚えていた。

教頭先生がチョイスした話は、ただただ奇妙であり、道徳的な教訓もなければ、感動的なハートフルストーリーなどではない。

教頭先生はたぶん、純粋に自分が面白いと思った話を、授業の代行だとか、自分が教頭であるとか全部忘れるほど夢中になって、何より自分が一番楽しんで、私たちに話してくれたのだと感じる。

大人の本気は、子供に伝わるんですね。

教頭先生に、伝えたい。
あの日の授業が、一番記憶に残っています。
そんな授業をしてくださった、教頭先生を尊敬しています。


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