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ライカで撮影システムを組む時に考えること

別にライカじゃなくても良いんだけど、と思いながらも一度使い始めたら、全然ライカから離れられない。その撮る質感を知ってしまって、あらゆるプラスティックな質感のデジタルカメラをカメラとは思えなくなったような人たち。実際にそういう人たちが多くいる。そしてそういうブランディングの狂気がライカにはある。「ものづくり」よりも、ブランディングが先立ってはいけないが、両者をバランスよく両立出来ているメーカーは少ない。ファッションブランドならまだしも、カメラメーカーには正直皆無といっていいだろう。そんなライカ狂の人へ送る今回の企画。

ライカカメラの選び方パーフェクトマニュアル

というタイトルにしたかったけれど、パーフェクトではないので辞めました。結構偏っています。

フィルムからデジタルの変遷の間にちょうど写真で生きてきた世代としては、最近のカメラ市場は、選択肢が無限大すぎて、何を選べばよいか迷う。フィルムの時は、ライカと言えばM型。M型だけをもって、ただ真摯に写真と向き合って撮っていればよかった。コダックの業務用フィルムを100箱単位(15000円くらい)で買って、とりあえず冷蔵庫を全てフィルムと缶ビールで満たして、毎日写真を撮って、現像して、上がったフィルムや写真集を見ながらビールを飲む。それでよかった。

デジタルになって、ライカのラインナップもまるで迷走と言わんばかりに、増えた。

そらで言えるのは

・M
・Q
・SL
・R
・TL

あとは何があったか。ここでオフィシャルサイトを確認してみる。

おっと、全然間違えている。Rはフィルムカメラだ。S。そしてCL。ほうほう。

正しいライナップは

・S
・SL
・M
・Q
・CL/TL2
・コンパクトデジタルカメラ(V-LUX5, D-LUX7, C-LUX)
・ライカゾフォート

久しぶりに全てのラインナップを改めて確認した。フラッグシップとしてのミドルフォーマットSがあるを完全に失念していたし、V-LUX5には「探検家にぴったり」という文字があり、妙にそそられる。CLに関しては出た時は知っていたが「まだあったの?」という感じだ。

これだけのラインナップを残しているのは、ライカらしくないとすら思える。しかし昨今の厳しいカメラ市場では致し方ないことなのだろう。

幅広いレンジ、客層に向けてアプローチしながらも、企業戦略としてはラグジュアリーブランドと同じ手法をとっている。主力の機種に関しては、昨今のサプライチェーンや材料費高騰により、相場80万といったところ。全てのラインナップにおいて、セットレンズなどの抱きかかえ戦略をもって、客単価80~100万あたりを目指しているようだ。

数年前まではもっとシンプルだった。そして客単価、標準価格も現在より20万ほど安かった。LeicaQやMの単価を見ても、ここ5年ほどで20万ほどの値上げがされているのがわかる。60万なら躊躇しないが、80万だとやや購入に躊躇する。このあたりはすでに感覚がバグっているのだが、ライカユーザーならこの感じに思い当たるところがあるのではないか。

ライカのみならず、ソニーを含めた他のメーカーもフラッグシップにおいては100万近い価格帯になっている現在、単純にカメラ自体が高いものとなった。もちろんカメラだけではない。これは同時に、日本が、私達の生活が全く向上していないことを意味する。むしろ円の力は世界的に弱まって、ユーザーの購買力は落ちている。それがカメラの価格感に現れているのだ。

前置きが長くなった。本題に入ろう。

ライカでシステムを組む時に考えること。

これだけ多くのラインナップの中で、どのような機材で撮影のシステムを組むか。条件定義としては、写真を仕事としている人、フォトグラファー、写真家として活動している人に向けての話しである。趣味ならば、好きなものを買って好きに使えばいい。M型1台と1本のレンズのミニマルスタイルでも、お金持ちの人は全部の機種を買って場所や撮影内容に合わせて好きなものを持ち出せばいい。

これは私の感覚なのだが、おそらく仕事で写真を撮っている人ほど、最終的には必要な機材は少なくなる。絞られてくると言ってもいい。経費として計上できるのでなんでもござれと思うが、メンテナンスの手間、保管場所、数があることにより持ち運びの制限(荷物重くなって疲れる)、現場での取り回しと、これら多くがコストとしてかかってきて、利益やパフォーマンスが下がるからだ。

知人・友人のフォトグラファーの機材のラインナップを見ても、多くの人がボディ2台に、レンズ数本、ストロボ、三脚といった具合で、意外に少なく洗練されている。中には同じボディ2台と24-105mmのズームレンズ一本で仕事をしている人もいる。

あぶない、また脱線している。話を戻そう。

ライカのラインナップの中で撮影システムを組む際、どのように考えるか。

やや極端に、まず仕事で使えるものを絞ってみる。そうするとコンパクトとゾフォートを除いて下記となる。もちろんコンパクトやゾフォートでも仕事はできるが、ここではオールマイティに、一般的な撮影仕事で考えてみる。

・S
・SL
・M
・Q
・CL/TL2

ここで、APS-CセンサーであるCL/TL2を除きたいところだが、APS-Cセンサーにも仕事での優位性はある。もちろん被写界深度と解像度が保持できるという理由でフルサイズセンサーを使う人が大半だが、フルサイズでなくとも仕事はできる。なのでここではまだ外さないでおく。

次に、選択のポイントとして持ってきたいのは、カメラの構造である。光学的な分類を考える時、ライカカメラは以下に分類できるのだ。

グループ1
・S
・M

グループ2
・SL
・Q
・CL/TL2

この分類の意味がわかるだろうか。

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