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こんな私の髪を切ってくれる店

肩が凝った。美容院に行ったからだ。髪を切ってもらっている間、ずっと緊張している。鏡を見られない。美容師の方に話しかけられるのが怖い。もう、自分の髪型がどうなっていてもいいと思う。

話しかけられたくないと思う。だから絶対に本を持っていく。本の内容が面白かろうが、つまらなかろうが、とにかく、本を読んでいる体で施術を受ける。

本を読んでいれば、話しかけてはこない方が多い。そこで「普段なにされているんですか?」など話しかけられれば、その時点で次は来店しない。

分かっている。美容師の方だって、こんな客は嫌だろう。顧客を得るために話しかけて、勝手に拒絶されることに、腹が立つに違いない。しかし、彼らはプロだ。心は怒りに燃えている可能性があれど、素敵な髪型に仕上げてくれる。

もう3年ほど、同じ美容院に通っている。値段以外に理由は無い。特に指名をしていないのに、ほぼ毎回同じ方が担当してくれる。

私は毎回同じ画像を見せて、こうしてくださいと言う。私の頑なな態度を前に、美容師の方はもう話しかけてこなくなった。

帰路は頭が軽い。嬉しい。やはり、定期的に髪を切るに越したことはない。次こそ、伸びきって不愉快な思いをする前に髪を切りに行こうと思う。これを数ヶ月前にも思った事だろう。

過ちを繰り返す。納得がいかずに先送る。それでもいい。今日スッキリできたのだから、何も不満は無い。いずれは私も、美容師の方との会話を楽しめる心の余裕を得たいと、少しだけ、思う。いや、やっぱり思わない。




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