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詩|秋空の月

夜空に浮かぶ
真っ白な満月

寂静で限りなく平静なもの
空虚なくらいに
雑多な活動を停止した空
けれども空虚とは対極にある
暖かな優しさに満ちている虚空

今宵九月の月は
いつもより静かに
塵芥や騒音の鎖から脱して
綺麗で冷たい澄んだ光を届けてくれる

月の周りを流れ去るうす雲が
あの空間にある理性の色を
より深めていく

秋の始まり
静かな鈴虫の声
そらには何にも揺るがない
泰然とした天のかたち

そのあいだを埋める
涼やかな
理性の不純物を廃する力のような
清々しく広々とした虚空

生きている体のように
緻密に行き届いた
天の血が通った
秋の空

世の中に、座ってわかる静けさと
教わってわかる静けさとあり
教わってから知る静けさは
この月の顔から伝わることだ

その一年で最初の秋
空はひとり瞑想をするみたいに
己の大きな懐のなかに、
静かな夜を宿す

もしかして寝ているのか
(或いはなんにもないのか)
と訝ってみて、また見つめれば
必ず覚めたまま
まわりに溶け込むように
数多に通じている

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