「変わる組織」はどこが違うのか? 32
リーダーを輩出する企業、育つのを待つ企業
リーダーシップは天性のもので育成できない。日本では、そう考えている人がまだまだ多いようです。しかし、リーダーシップは学習可能なものというのが、世界の常識です。
優れたリーダーへのインタビューから、彼(女)らがリーダーシップを誰から学んだと語ることができるということが、その根拠となっています。
リーダーシップは「教える」ことはできないが、「学ぶ」ことはできる。ということで、欧米の企業では半世紀も前からリーダーシップ育成の研修を工夫してきました。その結果、リーダーを輩排出し続ける企業が出てきています。有名どころはGEやP&Gといった会社ですが、GAFAMなどもそうなりつつあります。
その一方で、優秀な人材をたくさん採用しているのにリーダーが出てこない組織もあります。何が違うのでしょうか?
まず、リーダー輩出企業では、リーダーシップを「学ぶ」場を提供することに莫大なエネルギーと時間・お金をかけています。つまり、リーダーシップ育成に真剣だということですね。
たとえば、私がいたファンドでは、リーダーシップ研修のたった2~3週間前に起こった事件の当事者を、予定を変更してゲストスピーカーとして招きました。その事件とは、9.11の首謀者とされたウサーマ・ビン・ラーディン殺害です。これを実行したのは米海軍特殊部隊(SEALs)。その実行チームの指揮官をサプライズゲストとして招いて、彼のリーダーシップ論を聴かせたのです。これ、アレンジ大変だったと思いますが、触発効果でリーダーシップに目覚めることを狙った企画でした。
もう少し一般的なものとしては、たとえば、CEO自ら研修の場に出てきて自分が感じている経営課題を語り、それについて30代の受講生がフィールドスタディして、チームとしてCEOに提案するというものです。CEOの目線で自社の課題を考え、資料ではなく現場に赴いて観察し、分析し、チームでしっかり議論する。CEOはそれを聴いて、率直にYES、NOを語る。受講生だけでなくCEOにとっても学びの多い研修です。これはウェルチ時代のGEで行われていたものですが、今では、いろいろな企業で取り入れられるようになっています。
リーダーシップは実践を通じてしか身につかないと思いますが、スポーツと同じで、こういう優れたリーダーから話を聴いたり、模擬演習をすることで、リーダーシップについて考え、自分に合ったリーダーシップスタイルに気づかせる仕掛けは、とても効果的です。
一方、優秀な人材をたくさん採用しながらリーダーが生まれない企業はどうしているのでしょうか。彼(女)らも人を大切にするというのですが、たいていが、マネジメントとリーダーシップを混同しています。良いマネージャーを育てることには熱心なので「良い管理者」は育つのですが、前回書いたような意味でのリーダーを育てようとはしていません。結果的に、資質のある人がリーダーとして頭角を現すのを待つことになっているように思います。
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